緑と光あふれるアーバン・ライブラリー「杉並区立中央図書館」-第5回 進化する東京の図書館を訪ねて
荻窪駅の南口を出て閑静な住宅街を10分ほど歩くと、緑に囲まれたガラス張りのスタイリッシュな建物が現れます。こちらの杉並区立中央図書館は区内13ヶ所の図書館の中核的な役割を担う施設です。
緑豊かな公園の中にあるため、木陰の下のテラスでも読書を楽しめます。アルミパネルとガラス窓を多用した近代的な建物は、世界的建築家・黒川紀章氏が手がけた外観をそのままに2020(令和2)年にリニューアルオープン。館内も洗練された居心地の良い雰囲気で区民から高い人気を集めているのです。
読書や勉強に集中する人、赤ちゃんを連れたお母さんなど、多くの人々が集いくつろいだ時を過ごす杉並区立中央図書館の魅力を、同館の管理係主査である鈴木高志さんに伺いました。
杉並区立中央図書館の基本情報
杉並区立中央図書館の概要
所在地:東京都杉並区荻窪3丁目40番23号
アクセス:JR中央線、東京メトロ丸ノ内線「荻窪駅」南口から徒歩10分
階数:地上2階・地下1階
敷地面積:5,097.85m2
施設面積:4,397.14m2
座席数:一般349(うちソファーなど椅子のみ97)、 児童52(うちソファーなど椅子のみ10)
開館時間:月~土曜日 9:00~20:00
日曜日・祝日 9:00~17:00
12月29・30日 9:00~17:00
休館日:毎月第1・第3木曜日、年末年始(12月31日~翌年1月4日)
利用方法:館内での閲覧はどなたでも利用可。図書の貸し出しには利用登録が必要。杉並区在住・在勤・在学か、隣接地域(練馬区・中野区・渋谷区・世田谷区・三鷹市・武蔵野市)在住の方に限る。登録の際には氏名・生年月日・現住所、在学・在勤先が記載された有効期限内の証明書が必要
世界的建築家・黒川紀章氏が手がけた緑と共生する図書館
杉並区立中央図書館の歴史
杉並区立中央図書館は、1982(昭和57)年10月に杉並区制50周年の記念施設として現在の地に開館しました。設計は日本を代表する建築家・黒川紀章氏によるもので、「緑との調和と共生」を理念として造られました。
2006(平成18)年3月、隣接する敷地に「杉並区立読書の森公園」が開園します。「読書の森公園」は図書館と一体となった公園というコンセプトで造られたもので、テラス席や、東屋、ケヤキの木陰などが設けられ緑豊かな環境で読書ができます。
2009(平成21)年5月には、図書館敷地内の本の広場に杉並区と交流のあるインドの慈善団体から寄付された「マハトマ・ガンジー像」が設置。
2014(平成26)年6月、アンネ・フランクが願った世界平和を祈念して、読書の森公園の一角に「アンネのバラ」が植樹され式典が開かれます。
大規模改修を経て居心地の良さをアップ
2017(平成29)年、杉並区立中央図書館に改修計画が持ち上がります。改修工事に関するコンセプトや方向性、工事概要が策定されました。開館から37年を経た2019(令和元)年4月、全面改修工事のために休業に入ります。
カフェの新設や閲覧席の増設など、大規模な改修工事が行われ、翌2020(令和2)年9月にリニューアルオープンを果たしました。
敷地内に豊かな緑を抱え、屋内外で居心地の良い閲覧席を有する杉並区立中央図書館は多くの区民に愛されているのです。
杉並区立中央図書館の6つの魅力を紹介
70万超の蔵書と、建物やテラスに約400席の閲覧席を有する杉並区立中央図書館の魅力を6つのポイントに分けて見ていきましょう。
【魅力1】図書館と一体化した緑豊かな「読書の森公園」
睡蓮の池のある静かな園内。落ち着いた時間を過ごせます
「読書の森公園」は杉並区立中央図書館と一体という新しい考えで造られた広さ1,841m2ほどの公園です。開園時間は6:00から20:00まで。遊具はありませんが、青々とした芝の広場や睡蓮の咲く池があり、東屋や小川のほとりでは読書を楽しめます。
公園内にトイレはないため、すぐ近くに図書館や荻窪体育館などの公共施設がありますので、開館中はそちらを利用できます。
洒落たウッドデッキが「本の広場」へと誘います
建物に隣接するデッキが設けられたエリアは「本の広場」と呼ばれています。本の広場へは館内からも読書の森公園からもアクセス可能で、公園内とはウッドデッキで結ばれています。本の広場への出入口となる扉の開閉時間は以下の通りです。
開扉時刻:8:50
閉扉時刻:平日・土曜日 19:55、 日曜・祝日 16:55
※図書館の休館日は終日施錠され、本の広場への立ち入りはできません
「本の広場」は森の中のオアシス。光と風を感じながら読書を満喫できます
「建物の目の前に広がるこちらの『本の広場』は2020年のリニューアルオープンの際に新設されたエリアのひとつです。もともと建物の西側に生い茂っていた樹木の一部を伐採して、地形の高低差を生かした浮床のデッキを造ったのです」
鈴木さんにご説明いただいたデッキを見ると、段差があるため縁は腰を下せるようになっています。デッキには様々なタイプの椅子があり、背もたれが傾斜したイージーチェアも用意されておりリラックスして読書に集中できそうです。
図書館の1階にあるカフェではテイクアウト用のドリンクやサンドイッチ、焼き菓子が販売されています。気持ちの良い季節はテラス席での優雅なお茶の時間やランチがおすすめです。
【魅力2】こだわりのサンドイッチと読書を楽しめるカフェ「サンドイッチとコーヒー ampere(アンペア)荻窪店」
こちらのカフェ「サンドイッチとコーヒーampere荻窪店」も新設された場所のひとつです。
「リニューアルオープンの前にとったアンケートで多かったのが、明るく開放的なカフェを作ってほしいという声でした」(鈴木さん)
コーヒーやお茶などドリンク類はもちろん、ボリュームたっぷりのホットサンドイッチやおしゃれなモーニングプレート、ハッシュドビーフ(土日限定)など本格的な料理も味わえます。
四方に窓がある店内は、アクアリウムのように透き通った明るい印象です。カウンター席をはじめ一人用の席が多く、ゆとりを持って設置されているため、店内は静かで落ち着いた雰囲気で満ちています。
まるで避暑地にいるかのような素晴らしい眺望のカウンター席は、特に人気の高い席です。
名称:サンドイッチとコーヒーampere(アンペア)荻窪店
営業時間:月~土曜日 9:00~20:00(ラストオーダー18:00)
日・祝日 9:00~17:00(ラスタオーダー15:30)
定休日:第1・3木曜日
【魅力3】開放感あふれる居心地の良いフロア
明るく、開放感のある館内は杉並区立中央図書館の大きな魅力のひとつです。
グランドフロアである1階は、正面玄関のほかにカフェからも屋外に出入りできるようになっています。読書の森公園やカフェを訪れた人が気軽に書架が並ぶ1階フロアにアプローチできるように、工夫されており仕切りが少ないことも特徴です。アーチ型の天井も圧迫感を感じさせない工夫のひとつです。
こちらは1階フロアの閲覧コーナーです。パーテーションで仕切られた長テーブルの閲覧席が並びますが、天井が吹き抜けになっているため圧迫感はありません。
1階の空調には省エネと快適性を備えた「床輻射冷暖房(ゆかふくしゃれいだんぼう)」が採用されています。床面からの放射熱を利用して適切な温度を保ち、エアコンの風が直接当たることもないため長時間いても快適に過ごせるそうです。
こちらは2階の閲覧コーナーです。光が差し込む天窓が明るく奥行きのある空間をもたらします。
最上段に照明がついているこちらの書架は、免振書架です。地震の際に揺れを吸収する免振書架は、書架の倒壊と図書の落下を防ぐことで避難経路を確保します。杉並区立中央図書館では、5段以上の書架に免振仕様が用いられているのです。
【魅力4】利用者からの要望に応えた充実の閲覧席
杉並区立中央図書館には一般・児童用と合わせて401席もの閲覧席を備えます。閲覧コーナーはもちろん、上記の写真のようにフロアの至るところに様々なタイプの椅子が置かれています。
「閲覧席を大幅に増やしたこともリニューアルオープンの際の大きな変化です。改修前から『閲覧席を増やしてほしい』という声が多かったため、蔵書数は変わりませんが開架式の書庫を減らしたのです」(鈴木さん)
できるだけ多くの人が居心地よく利用できるための工夫が、屋内外に置かれた閲覧席の数と種類の豊かさから伝わってまいります。
1階フロアには一般書の書架やカフェ、展示コーナーなどがあり、多くの人が気軽に立ち寄れます。対して、2階フロアには特定の属性や目的のある方が利用するコーナーが集まります。
48席の椅子とデスクが並ぶ写真の部屋は「調べもの室」。図書館利用カードをお持ちの方が使用でき、館内にある端末やパソコンやスマートフォンからの予約が必要です。
ちなみに館内には無料のWi-Fiが飛んでおり、どの閲覧席でもパソコンが使えることも大きな特色のひとつです。
上の写真は中高生を中心とした若い世代向けの図書が並んだヤングアダルトコーナーです。
まるで家庭のリビングのような大きなソファーセットが目に留まります。
「時代とともに図書館の機能も変化しています。従来の図書館は本を読むためだけの場所でしたが今は読書しない方の利用も増えました。勉強をしたり、リラックスしたり、利用者が思い思いの時間を過ごす居場所としての役割が大きくなっているのです」
来館者には「この場所で自分の時間を楽しく過ごしてほしい」との思いを鈴木さんが語ってくださいました。
【魅力5】子育て世帯が交流できる「こどもの本」コーナー
こちらは絵本や児童書が並ぶ「こどもの本」コーナーです。杉並区立中央図書館の児童書の蔵書数はおよそ16万8千冊。全体の蔵書数が約71万5千冊なので、児童書の数は約23%を誇ります。「こどもの本」コーナーのコンセプトを鈴木さんに伺います。
「杉並区では乳幼児期から本に親しめる環境をバックアップしています。たとえば毎週火曜日の午前中に開かれる『あかちゃんタイム』は、0歳から就学前までの乳幼児と保護者が交流できるイベント。職員とボランティアスタッフがサポートしますので、赤ちゃんと保護者の方がゆったり気兼ねなく図書館をご利用できます」
「こどもの本」コーナーの一角には「おはなしのへや」があります。カーテンで仕切ることのできるこちらのコーナーでは、毎週水曜日の15時30分から16時にかけて幼児から小学生とその保護者を対象としたおはなし会が開かれています。年に200回近くも開催されるおはなし会のほか、児童向けの映画会など杉並区立中央図書館が主催するイベントは盛りだくさんです。
児童向けのイベントの予定は杉並区立図書館のホームページで確認できるほか、室内のカレンダーでもチェックできます。
「あかちゃんタイムやおはなし会は子どもたちだけでなく、保護者同士の交流の場にもなっています。図書館の役割の多様化により、公民館的な一面も担っているのです」(鈴木さん)
【魅力6】キャッチーなサインプレート&アートギャラリー
おしゃれで目立つサインプレート
館内でぜひご注目いただきたいのが、各所に取り付けられているサインプレートです。館内にあるおしゃれで目を引くサインプレートの一部をご紹介していきましょう。
こちらは正面玄関を入ってすぐ真上に取り付けられているサインプレートです。シンプルでわかりやすいピクトグラムのプレートが、図書館の顔であるエントランスを洗練された雰囲気に演出しています。
1階の総合カウンターには、電飾のサインプレートが採用されています。おしゃれなカフェバーのようで目を引きます。
1階フロアの一角にある「地域資料・参考図書」コーナーにも電飾のサインプレートが輝いています。杉並区や東京都の地域資料をそろえたこちらのコーナーは、仕切られている空間のため調べものに没頭できます。また総合カウンターに近いため、分からないことは気軽に職員や調べもの・相談カウンターに尋ねることができて便利です。
「こどもの本」コーナーの入口では、元気いっぱいの黄色のサインプレートが子どもたちを出迎えてくれます。隣接するヤングアダルトコーナーのサインプレートはフレッシュな緑の電飾で、世代ごとの特徴を象徴しているような色づかいですね。
館内に点在するアート作品
杉並区立中央図書館の各所には、銅像や書など様々なアート作品が展示されています。その一部をご紹介していきます。
また、アートといえば世界的建築家・黒川紀章氏の設計による建物自体が芸術です。黒川紀章氏の建築デザインのテーマは「共生」。街との共生、緑との共生、屋外と室内のとの共生など、様々な視点で本館のテーマの「共生」を実感できるはずです。
「いなくなる」という詩をしたためたこちらの書は詩人・谷川俊太郎氏から寄贈されたもの。終生にわたって杉並区に暮らした谷川さんの純朴な詩と文字が心に響きます。
館内にはほかにも杉並区にアトリエをかまえていた彫刻家・佐藤忠良氏から寄贈された彫像も展示されています。間近で一流の芸術作品を堪能できます。
建物を背に「本の広場」に佇んでいる銅像はインド独立運動の父と言われる「マハトマ・ガンジー像」です。杉並区とインドの縁は深く、杉並区内のお寺にはインドの英雄として知られるスバス・チャンドラ・ボースの遺骨が安置されているほど。この像は、2009(平成21)年にインドの慈善団体から寄贈されました。平和と真理の探求のために人生を捧げたガンジーの像と知の宮殿である図書館が共生をする場所なのです。
杉並区立中央図書館のある荻窪で暮らそう
荻窪駅周辺はどんな街?
杉並区立中央図書館の最寄り駅である、荻窪駅の周辺についてご紹介します。
人口約58万人の杉並区の中央に位置する荻窪駅周辺は、大正から昭和初期に東京郊外の別荘地として発展してきたエリアです。そのため閑静な住宅街の中には、文化人や政財界の大物の邸宅跡が点在しています。角川書店創業者の邸宅であった「角川庭園」、文化功労者の屋敷跡「大田黒公園」、近衛文麿が暮らした「荻外荘公園」と、荻窪三庭園と呼ばれる3ヶ所の庭園が知られています。
荻窪駅周辺は南口、北口ともに賑やかで名物の荻窪ラーメンをはじめ、駅前にはバラエティ豊かな飲食店が集積。そのため、外食に困ることはありません。商店も発達していて「荻窪教会通り商店街」、「荻窪銀座商店街」など駅前から複数の商店街が伸びています。また、北口には「ルミネ荻窪」や「荻窪タウンセブン」などもあり、買い物スポットが充実していることもポイントです。
荻窪駅周辺は、公共施設にも恵まれています。杉並区立中央図書館と道を挟んで隣接する「杉並区荻窪体育館」のほか、「杉並公会堂」や「荻窪区民事務所」、「荻窪保健センター」など多岐にわたる公共施設が駅徒歩10分以内にありますので、生活に便利です。
荻窪駅がある杉並区の子育て支援の特徴は?
杉並区では、妊娠から出産、子育てまですべての子どもが健やかに育つように幅広いサービスを展開しています。妊娠した際に助産師や保健師などから支援プランの提案を受けられる「ゆりかご面接」や妊娠、出産時の5万円ずつの給付金の支給。児童手当や子ども医療費助成金など、子どもが成長するまできめ細かで切れ目のない子育て支援サービスを提供しているのです。
荻窪駅のアクセス・家賃相場・口コミ
荻窪駅のアクセス
荻窪駅は、JR東日本の中央線、東京メトロ丸ノ内線の2社2路線を利用できます。中央線を利用する場合は、中野駅まで約5分、新宿駅まで約10分、東京駅まで約24分でアクセスできます。また中央線で新宿駅まで移動してJR埼京線に乗り換えると、池袋駅までは約20分、渋谷駅までは約21分で移動できます。
荻窪駅の家賃相場
荻窪駅の家賃相場は以下の通りです。
ワンルーム:8.44万円
1K:9.58万円
1DK:12.67万円
1LDK:16.71万円
2DK:18.40万円
2LDK:22.74万円
3LDK:26.88万円
荻窪駅の口コミ
・通勤やプライベートの移動がしやすい。また、飲食店が豊富である。
・商店街や物価が安いお店がいくつもあるので、食に全く困らない。貯金ができる。
・お店がたくさんあり、交通の便が良い。
・どこに行くのにもアクセスが良い。美味しいお店がたくさんある。
交通の利便性、商店や飲食店の豊富さと物価の安さを荻窪の魅力と感じている方が多いです。
まとめ 杉並区立中央図書館の近くに住んで通ってみませんか
飲食店や商店が集まる駅の周りに閑静な住宅街が広がる荻窪駅周辺。街中には政財界人の邸宅跡地の公園や自然にも恵まれる一方で、都心のターミナル駅までのアクセスも良好です。荻窪駅周辺は若者やビジネスパーソンから子育て世帯、ご年配の方まで幅広い世代が暮らしやすい魅力溢れる街なのです。
そんな荻窪駅にほど近い杉並区立中央図書館は、居心地の良さに定評がある施設です。緑豊かな公園と一体化したスタイリッシュな建物に、存分に閲覧席が用意された開放感のある館内は、いつも多くの人々が集います。
杉並区に住んでいる方はもちろん、荻窪駅周辺で暮らすことを検討している方も、ぜひ一度、杉並区立中央図書館を訪ねてみてください。利用者の居心地の良さのために進化した通いたくなる図書館に出会えます。
情報提供:杉並区立中央図書館
この記事では画像に一部PIXTA提供画像を使用しています。