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ソフトボールからプロ野球に挑戦した大嶋匠さん、高崎市役所でソフトに復帰

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高崎市役所の大嶋匠さん,本人提供

日本ハムを退団後、再びソフトボールの世界へ

ソフトボールから異例とも言えるプロ野球挑戦、そして再びソフトボールの世界に戻ってきた。

32歳になった大嶋匠さんは現在、故郷である群馬県の高崎市役所に勤務し、ソフトボール部に在籍。サッカーでいう「天皇杯」に位置する「全日本総合男子選手権大会」優勝を最大の目標に、週3回、1日2時間ほどの活動日に密度の濃い練習をこなす。

「ソフトに『戻る』という表現だと僕しかいないと思います。(ベース間の)距離が近くなってうれしかったですね。人生1回きりなので、プロ野球に挑戦してみようかなという気持ちでやらせてもらって、そういう機会を(北海道日本ハム)ファイターズから与えていただいて凄く経験にはなったと思います。やれても2、3年だと思っていた。想像以上というか、よく7年間も契約してもらえたな、というのが印象ですかね」

早稲田大学ソフトボール部で公式戦13試合連続本塁打

群馬県前橋市生まれ。小3から軟式野球を始め、中高一貫校である新島学園中からソフトボールに転向した。新島学園高卒業後に早稲田大学へ進学すると、男子ソフトボール部の主軸として公式戦13試合連続本塁打を放つなど、強肩強打の捕手として怪物ぶりを発揮。その活躍が北海道日本ハムファイターズのスカウトの目に留まった。

2011年ドラフトで7位指名。準硬式でも軟式でもない、現役ソフトボール選手初のプロ野球界入りは多くの話題を呼んだ。

戸惑った「タイミングの取り方」とボールの「伸び」

ソフトボールと野球。投法やボールの大きさ、距離、バットの形状など違いは多くあれど、大嶋さんがバッティングで一番戸惑ったのは「タイミングの取り方」だったという。

「本当にそこに尽きます。野球って『間』がありますよね。その『間』をつくるのに苦労したなと思います。今はソフトボールに戻ってきて、逆にその『間』を省くというか、どこまで削れるかってっていうところは試行錯誤しながらやっている部分です」

投手の投げたボールが「伸びる」という経験も初めてだった。「ソフトは伸びとかないんですよね。そのまま来ちゃう、みたいな。大谷翔平選手をはじめ、プロの投手の真っ直ぐは途中で加速するイメージ。そのあたりもソフトと野球の違いでした」

プロ7年間で18打数3安打1打点0本塁打、打率.167。記録は残せなかったが、過去に類を見ない挑戦は、ファンの記憶に残った。

戦力外通告翌日から勉強を始め、倍率30.9倍の経験者採用試験突破

2018年10月5日、日本ハムから戦力外を受けたその日にプロ野球引退を決断。翌日から「高崎市役所を受けようと思って勉強を始めた」という。ソフトボールの強豪として名高い同市役所にはプロに入る以前から憧れを持っていた。

「(プロを戦力外になったのが)まだ30歳手前だったので、野球とソフトのギャップをもう一回感じてみようかな、と。そもそもが市役所希望だったので、挑戦しようと思って入った感じですね」

2019年4月から臨時職員として採用されると、仕事を覚えながら「中学受験以来」という試験勉強を継続。申込者247人、合格者8人、倍率30.9倍に及ぶ経験者採用試験を突破し、2020年4月から晴れて正規職員となった。

新島学園から早稲田大学と同じ経歴を辿る弟の翼さんも高崎市役所のソフトボール部に在籍しており、チームに打ち解けるまでさほど時間はかからなかった。

大学やプロでは捕手を務めたが、今は一塁を守る。「弟がキャッチャーをやっています。キャッチャーは疲れるんですよ」と笑い飛ばす大嶋さんだが、志は高い。

チームの最年長選手は47歳。生涯スポーツの側面もあるソフトボールにおいて、現役で活躍できる時間は十分残されているだけに「もっとよくなると思う。いろいろ試しながらやっていこうかな、と。気が済むまでやれたらいいですね」。仕事との両立を図りながら、息の長いプレーヤーになることが目標だ。

古巣の試合も逐一チェックしている。2011年ドラフトで日本ハムに入団した松本剛(2位)、近藤健介(4位)、上沢直之(6位)ら同期がチームの主軸に成長。「近藤選手や上沢選手はチームを引っ張るような存在になっていて、松本選手は今、首位打者ですよね。頑張っているので、そこはうれしく思いますね」と活躍を自分のことのように喜ぶ。

「自分の経験をいろんな若い選手に伝えられたらうれしい」

これまでに得た経験を伝えていく責務があることも感じている。

「相手チームでも、大嶋さんを見てソフトを始めました、という若い子がちらほらいる。そういう部分はうれしいなと思いますし、聞いてもらえればアドバイスなどはどんどんしていきたい。自分の経験をいろんな若い選手に伝えられたらうれしいですね」

ソフトボール界とプロ野球界の垣根を越えた「パイオニア」は、まだまだバットを振り続けながら、若手に手本を示していく。

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記事:内田勝治

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