「福祉 × 観光」で川越から広がる障害者アートの世界
今日は春の観光シーズン真っ盛りのこの時期に見つけた話題。インバウンドの人だけでなく、日本の観光客の皆さんにも人気なのが、風情ある街並みを散策する「街歩き」。最近では着物を着て散策するのが人気のようなんです。
障害者アート作品を着物に!
そんな中、「小江戸・川越」と言われる埼玉県の川越で注目され始めている着物がありました。
いったいどんな着物なのか?着物の作成を手掛けた、一般社団法人「リアート」代表理事のヴェソラウスキー・阿里耶さんにお話を伺いました。
一般社団法人「リアート」代表理事のヴェソラウスキー・阿里耶さん
カラフルな作品を見てまず、着物を作ったらめっちゃ可愛いんじゃないかと思ったんですけれども、呉服屋さんに「作って頂けますか、金額いくらぐらいになりますか?」 って聞いたら、やっぱり呉服屋さん価格だったので最初ちょっと尻込みしたんですけど、呉服屋さんが「悪いことは言わない、作ってみな、まず。絶対いいものが出来るから」って言われたんですよ。この着物のデザインの作家さんは、精神の障害がある方で、今回着物にした作品は、彼女が苦しんだ時に書いた作品で作った着物なんですが、ピンク色の、まさにカラフルなワクワクさせてくれるような着物に仕上がっています。
作者の野沢めぐみさんもご自身のデザインした着物に袖を通したそうです。色使いも可愛らしくて春の季節にピッタリですよね!
野沢さんご自身に気持ちの葛藤があった時期に制作されたアートなんですが、着る人、見る人にとっては逆に元気をもらえるポジティブな存在になってほしいという願いも。このドット柄も一つ一つの形が違って、よく見ると黒い筆走りのようなものもそのまま活かされているんです、見ているとパワーを貰える着物です。
川越ならではの着物へ
この着物を手掛けた阿里耶さんは、障害者の方のアート作品を企業とコラボして商品化する取り組みをされています。その取り組みに共感した川越の呉服屋さんからの助言もあり誕生したのが今回のリアート着物なんですが、普段から着物を着ている人はどんなイメージを持ったのか。ちょうどこの着物をレンタルするという人がいたので、川越でお話を伺ってきました。
このアート自体を以前から知っていまして、すごい良い絵だなとは思ってたんですね、それが着物の柄になったと聞いて、着てみたい!と思いました。ちょっと桜の花びらみたいで良いなと思っていて、ちょうど新河岸川の桜船に乗る予定だったので、この着物で桜船に乗りたいなと思ってリクエストしました。
普段から割と着物を着てるんですけども、可愛いっていうのをいつもは嫌厭してるんですけど、今日はちょっとですね、いつもの自分とは違う感じで可愛くしてみました。
普段から着物を着る方にも「いつもと違う自分にしてくれる」と好評のようで、さらにインバウンドの方からも、京都では王道の和柄の着物を着ていて、川越では少し違ったものを着たいという声も。また、川越には「大正ロマン夢通り」という風情ある通りもあって、その雰囲気にこのカラフルなリアート着物がマッチするんです!
このリアート着物は4月30日まで川越のレンタルショップ「ゆずや」で借りる事ができます。
障害者の自立支援にも繋がる仕組みを。
今回着物を制作した阿里耶さんは、障害者施設で作品を見て、着物にしたいアートがまだ100点以上あると話しています。展覧会などを開くのではなく、ひとつの商品にして世に出していく事が障害者の方の働き方の改善に繋がるのでは?と、最後にこんな話を聞かせてくれました。
一般社団法人「リアート」代表理事のヴェソラウスキー・阿里耶さん
その(障害者)施設の皆さんも、(アートの)展覧会とかやるにも、開催の経費の方がかかるし、それですごくお金が入るというわけでもないので、せっかく綺麗な絵を描けても、まだその絵をまだ活用できてないんですよね。なのでここで絵をどんどん活用できるような仕組みができたら、彼らの月収は軒並み変わると思うのでそれのゼロイチを私たちがやりたいなっていうことで始めました。川越って元々城下町で、川越城の一部も残っているので、そこでデジタルアート展とか、お酒のラベルにたくさん作品が起用されたり。ほんとに福祉と観光を繋げたいという想いもあってこの取り組みを始めたので、観光客の皆さんにも「面白いことやってるね、川越」って言ってもらえるような川越ブランドの一つになったら嬉しいなと思っています。
障害者のほとんどの方が「就労継続支援B型」という働き方で、平均月収が1万5千円程度であるそうです。これをどうにかできないか、という想いもあったそうで、今回の取り組みは売り上げの6割を作者に還元する仕組みになっています。つまりアート作品を活用することで、川越の観光発展、そして障害者の自立支援にも繋がるということです。
このリアートの活動は始まったばかりですが、調べてみると同じ埼玉県や、他の地域にも「福祉と観光」を繋げる活動があるようでした。こういった取り組みが全国的に広がり、継続されていくことがこれからの鍵となりそうです。
(TBSラジオ『森本毅郎スタンバイ』取材・レポート:糸山仁恵)