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『粛々と運針』開幕!加藤シゲアキの意外な役に須賀健太「ギャップがすごい」

エンタステージ

『粛々と運針』開幕!加藤シゲアキの意外な役に須賀健太「ギャップがすごい」

PARCO PRODUCE『粛々と運針』が、2022年3月8日(火)に東京・PARCO劇場にて開幕した。初日前に行われた会見には主演の加藤シゲアキ、須賀健太、ウォーリー木下が登壇した。

本作は、劇作家・横山拓也とウォーリー木下の初タッグによる「小さなドラマに隠れた大きな命の物語」。膵臓がんを告知された母親と一と紘兄弟の「築野家」、理想的な小さな一軒家を持ち、子どもをもたないと決めた共働き夫婦の「田熊家」という2つの家の葛藤を会話劇としてあぶり出す。

演出のウォーリー木下は「 横山くんの本自体が、物語性が強いけれども詩的な部分もあって、観る人がいろいろな解釈ができるような作品です。お客さん自身が考える余白もあるので、たくさん考えていただければと思います。今日的なコロナや戦争、僕たちの周りで起こっている分断、暴力などとリンクすることもできるし、もっと個人的なささやかな人生の中で起こる悲劇や喜劇もあるので、うつし鏡のような作品になっていると思います」と解説。

そして「今回、役者6名と音楽2名の計8名で最初から最後まで(舞台を)作っていますが、演劇って人間力だとつくづく思いました。素晴らしい8人が舞台上を駆け巡っています」と自信を覗かせた。

築野家の長男・一を演じる加藤は「春らしい舞台なので季節感を楽しんでもらえたらと思います。このひと月、舞台関係者みんなが公演を無事にできるのかという緊張感を抱えながら過ごし、気を遣ってやってきたので、今日を迎えられたことはホッとしています」と挨拶。自身の役柄について「41歳のフリーターの役で、だらしなく、家族に甘えている。すねをかじっている兄を演じています」と説明した。

これまで“しっかりもの”を演じることが多かったという加藤は「僕にこのお話が来た時に、『こっちの役(須賀が演じる紘役)じゃなくていいんですか?』って思いました。いつも、しっかりした真面目な役ばかりだったので、ふざけられるってこんなに楽しいんだって(思った)。ふざけすぎて本番どうなるか自分でも分からない」とにっこり。

また、加藤はウォーリーの演出作品は本作が初となるが「すごい楽しかったです」と笑顔を見せ、「台本を読んだ時、話自体はとても面白いですが、動きがない静かな台本だったので、動き的には楽かなと思って臨んだんですが、思っていたのと全然違いました。ウォーリーさんがすごい動かすんです。こんなことになるのかと驚きましたし、こういう解釈もあるんだって驚かされました」と語った。

一方、築野家の弟・紘役の須賀は「 今日を迎えられることそれ自体が一つの奇跡のようなことだと思っています。もちろん、どんな舞台でも初日を迎えるのはありがたいことですが、より一層その大切さやすごさを感じています。最後まで全員で何事もなく走り抜けられることが目標なので、今日からも頑張っていきたいと思います」と思いを寄せた。

今回演じる紘は、加藤演じる一とは対照的にしっかりものという設定。須賀は「お兄ちゃんとは真逆だからこそ、お兄ちゃんに対する色々な感情があったり、お互い会話の中でぶつけ合うところが見どころかなと思います」と話した。

加藤の印象について聞かれると、「一という役とシゲさん(加藤)のギャップがすごい。どうしようもないお兄ちゃんだけど、稽古場では(加藤が)引っ張っていってくれました。基本的に、僕たちは2人で芝居するので、方向性や細かいニュアンスも2人で相談しながら作ってきたのですが、そういう時には(普段の加藤は)頼れるのに、役では頼りないから、脳みそがおかしくなってしまった。10分前はしっかりしていたのに、めちゃくちゃダメな人になっていると、頭が忙しかった」と明かして笑わせた。

そんな2人を見ていたウォーリーは、「稽古場ではシゲさんはすごいしっかりしてて、全体のことも見ていて、的確な意見をくれる。健太は、今回はそれを(加藤が担ってくれるから)やらなくていいから、伸び伸びと演技をしていた。でも、舞台上では2人とも役のポジションになって、シゲさんが遊ぶという二重構造ができていたました。頼ってしまっているけど頼りきれない。そのジレンマを抱えながら、それが長年蓄積されている姿が兄弟だと思うので、関係性においてピッタリハマったのかなと思います」と言及した。

最後に、加藤は「昨年、PARCO PRODUCEの作品をやらせてもらった時に、大阪公演が中止になってしまってできなかったので、今回また、PARCOさんとやるとなって、『今年は大阪公演までやりましょう』という熱い想いを受け取ってこの場に臨んでいるので、最後まで走り切りたいという思いがすごく強いです」と意気込んでいた。

舞台には、一面細い「糸」のようなものが吊り下げられている。点在する舞台セット。それを、物語の中で登場人物たちが動かしまくり、くるくると舞台上の場面を変化させていく。時に「築野家」、時に「田熊家」、時に幻想的な空間に。

築野家では、兄の一(加藤)と弟・紘(須賀)が、入院する母を見舞ったあと、実家で会話している。病室では、母から「金沢さん」という初老の紳士を紹介されたという。どうやら、母と親しい仲らしい。二人は膵臓がんを告知された母に、「金沢さん」と相談した結果、穏やかに最期を迎えることを選んだと告げられたようだ。それについて、今と今後の話が続く。

一方、田熊家では應介(前野朋哉)と沙都子(徳永えり)が、去年購入したばかりの小さな一軒家で食卓を囲んでいる。どこかで子猫の鳴き声がするから早く助けてあげたいと沙都子は言うが、交通事故で頚椎を痛めている應介は怪我を理由に探してくれない。それとは別に、沙都子には應介に切り出せずにいる話題があった。

合間に、糸(河村花)と結(多岐川裕美)という、二人の縫い人が象徴的な話をしている。これが何を指しているのか――物語を最後まで見てから、彼女たちの会話を思い返すとまったく違った意味に聞こえてきそうだ。はたから見れば不毛とも思える会話も、当の本人たちにとっては互いの距離を縫い合わせ、近づけていく周到な手段だ。会話が紡ぐ人間関係。そこからあなたは何を読み取るだろうか。

舞台後方には、常にGOMA&粛々リズム隊が控え、独特のリズムを奏で、物語を刻んでいく。GOMAが操るオーストラリア先住民族の伝統楽器「ディジュリドゥ」と、パーカッション(田鹿健太・辻コースケが日替わり参加)の重低音が、耳から離れない。劇場を出てなお、粛々と私たちの日々は続いていくのだと思った。

PARCO PRODUCE『粛々と運針』は、3月8日(火)〜27日にPARCO劇場、4月8日(金)・9日(土)に大阪・森ノ宮ピロティホールで上演。上演時間は約2時間(休憩なし)を予定。

(会見取材・文・撮影/嶋田真己、ゲネプロ取材・撮影/エンタステージ編集部 1号)

PARCO PRODUCE『粛々と運針』公演情報

上演スケジュール

【東京公演】2022年3月8(日)~3月27日(日) PARCO劇場
【大阪公演】2022年4月8日(金)~4月10日(日) 森ノ宮ピロティホール

スタッフ・キャスト

【作】横山拓也
【演出】ウォーリー木下

【出演】
加藤シゲアキ
須賀健太 徳永えり/多岐川裕美 ほか

【パルコ公式サイト】https://stage.parco.jp/


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