水瀬いのり、アーティスト活動10周年記念ライブツアー「Inori Minase 10th ANNIVERSARY LIVE TOUR Travel Record」これまでの感謝とこれからもファンと共に歩む未来を約束した万感のツアーファイナル!
声優・アーティストの水瀬いのりによる音楽活動10周年を記念したライブツアー「Inori Minase 10th ANNIVERSARY LIVE TOUR Travel Record」の千秋楽公演が、11月30日、神奈川・横浜アリーナにて開催された。
【写真】ライブツアー「Inori Minase 10th ANNIVERSARY LIVE TOUR Travel Record」の千秋楽公演が、11月30日、神奈川・横浜アリーナにて開催された水瀬いのり(全5枚)
今年9月にリリースした初のベストアルバム『Travel Record』と、新曲で構成された2ndハーフアルバム『Turquoise』を携え、自身最大規模となる7都市8公演を巡った今回のツアー。そのフィナーレを飾った横浜アリーナ2DAYS公演では延べ20,000人を動員し、千秋楽ではWアンコールを含む全22曲(メドレー楽曲を合わせると全25曲)を披露。ライブタイトルでもあるTravel Record(=旅の記録)が象徴する通り、デビューから10年の旅路で出会ってきた数々の楽曲と万感の想いを届けると共に、この先もまだまだまだ広がっていく夢のつづきを提示するライブとなった。
開演時刻、会場の照明が暗転すると同時に客席中のペンライトが水瀬のイメージカラーであるブルー一色に染まるなか、オープニングムービーがスタート。真っ白な空間を一人で歩む彼女が、手にしていたフラッグを突き立てて振り返ると、自然あふれる景色が魔法のように広がっていく。そうして水瀬がこれまで歩んできた道のりの豊かさが示されると、2階建てステージの上段、風船のように浮かぶカラフルな円形パネル越しにシルエット姿の水瀬が登場。「ファイナル楽しんでいきましょー!」と元気よく声をかけると、自身のデビュー曲「夢のつぼみ」でライブの幕を開ける。
この選曲とシルエット演出、さらに彼女が着用していた白いワンピース衣装は、2017年12月に行われた初ワンマンライブ「水瀬いのり1st LIVE Ready Steady Go!」をオマージュしたもの。だが、ただ昔のままにそれを再現したわけではない。ステージの背面全体を覆った超大型LEDスクリーンによる映像演出、この10年で新たな仲間が合流して厚みを増した通称・いのりバンドのパワフルな演奏、それらの迫力に負けない程の頼もしさを獲得した水瀬の歌声は、10年の歩みを経た今だからこそ届けられるものだ。
はじける炭酸のようなビジュアル演出が爽快感と透明感をアップさせていた「まっすぐに、トウメイに。」、水瀬自らタオルを回しながらセンターステージで歌った「Ready Steady Go!」と、冒頭から勢いあるナンバーを連発すると、MCでは応援してくれるみんなへの感謝の気持ちを伝えつつ、「時にはセンチメンタルに、時にはかっこよくステージを届けるので、ついてきてくれたらと思います!」と本公演への意気込みを伝える。そして水瀬自身が歌詞に込めたメッセージと七色に光るライトの煌めきが町民(※水瀬のFC会員の呼称)との虹の架け橋を作った「Catch the Rainbow!」、躍動感あふれる演奏と共に新しい一歩を踏み出す「春空」を届けると、水瀬は一旦退場してバンドメンバーの紹介コーナーへ。この日のライブをサポートしたのは、みっちーさんこと島本道太郎(ベース/バンドマスター)、じっじーさんこと植田浩二(ギター)、どらちゃんこと沢頭たかし(ギター)、フッフーさんこと藤原佑介(ドラムス)、すまりこと須磨和声(バイオリン)、にゃんちーこと若森さちこ(パーカッション)、新メンバーのコタツことtatsuya(キーボード)の7名だ。
水瀬の楽曲「Happy Birthday」をベースに、水瀬たっての希望で「笑顔が似合う日」「あの日の空へ」「コイセヨオトメ」も織り込んだインスト演奏で会場を盛り上げると、最後にターコイズカラーの新衣装に着替えた水瀬が再びステージに登場して、君のそばで笑う未来を願う「アイマイモコ」を笑顔を浮かべながら溌溂と歌唱。さらに最新作『Turquoise』より高揚感と優しい視座を併せ持ったドラムンベース調の「まだ、言わないで。」で新たな表情も覗かせる。本ツアー恒例のバンドメンバーの行ってみたい旅行先をテーマにしたトークで和気あいあいとした時間を作りつつ、ここからは新曲のバラードを続けて披露。センターステージで全方位のファンを見渡しながら出会いの感謝を噛み締めるように歌った「アニバーサリー」、黄金の光が舞うような迫力の映像演出が楽曲のスケール感を強調した「My Orchestra」、どちらもツアー最終日ゆえの完成度と気持ちが伝わってくるパフォーマンスだった。
過去のライブ映像やMCの音声をインサートしながら、水瀬が10年の歩みをイラストなどで形にしていくブリッジムービーを挿み、ライブ後半戦は「Starry Wish」からスタート。パンツスタイルのスタイリッシュな衣装に着替えた水瀬が、リフターで2階ステージに颯爽と姿を現す。続く「スクラップアート」でのアグレッシブな表現、本ツアーで初披露のプログレッシブな新曲「NEXT DECADE」における激しく明滅する照明とカオティックな映像が合わさった圧倒的な世界観を含め、水瀬のアーティスティックでかっこいい一面を味わえるブロックだ。
その後のMCで、この10年、時に不安を抱くこともあったことを素直に告白しつつ、「好きだからずっと真剣に向き合ってきたアーティスト活動でした」と、ここまで続けてこれた感謝の気持ちを伝える水瀬。だが彼女の気持ちは過去ではなく、今と未来を向いている。「これからもずっと、何十年だって続くように、次の曲を歌いたいと思います」と告げると『Turquoise』収録の新曲「海踏みのスピカ」を披露。これまでのライブタイトルを彷彿させるフレーズが忍ばされた歌詞で10年の軌跡を辿りつつ、ラストのフレーズではファンも共に合唱しどこまでも君と一緒にという約束を確かめ合う。続く「TRUST IN ETERNITY」の乱雲に立ち向かうかの如き力強いステージングも心を震わせる。アウトロでのじっじーさん、どらちゃん、すまりの3人によるソロ演奏合戦も会場を熱狂させていた。
ここで嵐を越えて暁や月夜の中を風船が横切る幕間映像を挿み、ステージ前面に紗幕が降りると、ピアノのしとやかな調べに導かれて、紗幕の向こう側に黄色いドレス衣装に着替えた水瀬が浮かび上がる。まるで深海にいるかのような演出のなか歌われたのは「BLUE COMPASS」。楽曲の後半で紗幕が落ちると視界が一気に広がり、彼女は流れ星やコンパスの映像を背にしながらどこまでもいっしょにという願いを、会場のひとりひとりに想いを届けるように歌う。続いてセンターステージで歌われた5周年記念シングルの表題曲「Starlight Museum」では、途中で涙ぐんで声を詰まらす場面も。すかさず町民たちが歌い継ぐ絆の強さを含め、本公演でもとりわけエモーショナルで感動を誘う一幕だった。ちなみに「BLUE COMPASS」の紗幕演出は、2020年12月に横浜アリーナで行われた無観客オンラインライブ「Inori Minase 5th ANNIVERSARY LIVE Starry Wishes」を踏襲したもの。ようやくファンの前で直接届けることができて感無量の様子だった。
MCでも引き続き涙が止まらず、「次に歌う曲ももれなく泣いちゃうかもね」と告げた彼女が次に歌ったのは、ファンとの絆をテーマにした2ndシングル表題曲「harmony ribbon」。終盤、水瀬が「みんなの声を聴かせて!」と呼びかけると、アリーナ中がひとつになって「ラララ~♪」と歌う景色は壮観だ。そして「私たちだけのこの10年を、この曲に込めて咲かせたいと思います」と語ると、夢への純粋な想いを込めた心洗われるミディアムバラード「Innocent flower」を心から嬉しそうな表情と共に届け、かつての夢のつぼみを大きく咲かせてライブ本編を締め括った。
盛大ないのりんコールを受けてのアンコール。いのりバンドが演奏とクラップで盛り上げるなか、過去のライブ前の円陣の様子を全公演分繋いだ千秋楽だけの特別映像が流れ、水瀬は自身が考案したキャラクターくらりちゃんのトロッコに乗って登場。2ndハーフアルバムの表題曲でもある新曲「Turquoise」を歌いながらアリーナを周遊する。間近に水瀬が表れて色めき立つファンにたっぷりレスを返す交流も欠かさない。そしてアリーナを半分ほど回ったところで「Million Futures」を皮切りに自身初となるメドレーへと移行。引き続きトロッコに乗りながら「HELLO HORIZON」、メインステージに戻って「フラーグム」「glow」を連続で届ける。できる限りたくさんの楽曲と共に10周年ツアーを回りたい、という彼女自身の発案で実現したものだという。
その後、この10年の感謝の気持ちを改めて伝えつつ、「ここがゴールではありませんからね」と、未来の予定の新情報を告知。前日の公演で発表されたFCイベント「いのりまち町民集会2026」の開催決定に加えて、本公演の映像のオンライン配信が12月24日より行われることが決定。さらに水瀬の誕生日でありアーティストデビュー日である12月2日に「水瀬いのり10周年記念スタジオライブ」がYouTubeでプレミア公開されることが発表となった。詳細はオフィシャルサイトをチェックしてほしい。
そして彼女は「デビュー曲の「夢のつぼみ」を感じていただきながら、でも、今だからかける言葉をたくさん込めました」「自信をもってみんなに言える言葉を書きました。ぜひそんな気持ちを受け取ってほしいです!」と伝えると、自身が作詞した『Turquoise』収録の新曲「夢のつづき」をラストナンバーとして披露。バンドメンバー一人ずつの下に近づいて触れあいながら、楽しそうに幸せの歌を届ける。最初はひとつきりだった青い風船に、やがてたくさんの風船が寄り添って青空高く飛んでいく映像演出がクライマックスを盛り上げるなか、最後は銀テープが発射されて華やかにライブの幕は閉じた。
だが、この日は特別な千秋楽、会場からの「もう一回!」コールに応えてダブルアンコールが実現!水瀬が「もう1曲、みんなと一緒にひとつになりたいと思います」と語り、マイクスタンドを持ち出すと、次曲を察知した客席からどよめきと歓喜の声が上がる。「この言葉が、未来でこんなに私たちの希望になってくれるなんて、本当に幸せです。みんなで一緒に神話を作りましょう!」と勇ましく告げて彼女が歌ったのは「僕らは今」。中止になった2020年のツアーの横浜アリーナ公演で、みんなと一緒に歌う予定だった楽曲だ。その後、彼女はオンラインライブを含めて4度、横浜アリーナでライブを行ってきたが、有観客かつ声出しOKの環境でこの曲を披露するのはこの日が初めてとなる。冒頭の一節を歌い終えた後、水瀬は再び涙ぐむが気丈に持ち直し、拳を掲げて力強く、勇気と連帯の歌を届ける。2番ではハンドマイクを握ってセンターステージへ。アリーナ中からの大合唱の声を全身で受け止め、その歌で思いを繋ぎラリーしていく。最後は「これからも幸せな時間を重ねていきましょう、約束!」「10年の思いを込めて飛びましょう!」と呼びかけ、会場が一体となったジャンプでアニバーサリーライブは締め括られた。
横浜アリーナで「僕らは今」をみんなと一緒に歌う、5年越しの夢を叶えた水瀬いのり。だが、彼女が公演中に何度も語っていた通り、このライブはゴールではなく、彼女の夢はこの先もずっとファンと一緒に歩んでいくことだ。「僕らは今」の歌詞にも未来まで語り継がれる神話を作るよとある通り、これまでの10年だけでなく今と未来を見据えて活動する彼女が、12月2日から始まる10周年イヤーで、どんな夢のつづきを見せてくれるのか、今から楽しみにしておこう。