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SiMが“神盤”の完全再現ライブでみせた、渾身のパフォーマンスと不屈の闘志

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SiM Photo by Kohei Suzuki

SiM THE SHOW 『THANK GOD, THERE ARE HUNDREDS OF WAYS TO KiLL ENEMiES』 2020.10.24

メッセージの鋭さ、パフォーマンスの熱量、鳴らされる音楽の独創性に至るまで、すべてが紛れもなくSiMと言える配信だった。生粋のライブバンドである彼らが、この10月24日に初めて行った配信ワンマンライブ。それは、6月にリリースされた通算5作目のアルバム『THANK GOD THERE ARE HUNDREDS OF WAYS TO KiLL ENEMiES』、通称“神盤”を完全再現するという試みだ。先頃には盟友・HEY-SMITHやcoldrainらとの合同名義=TRIPLE AXEによるライブ配信も行われたが、『THANK GOD~』リリースに伴うツアースケジュール全国41公演はすべて延期となっていたため、今回の再現ライブには期待が高まる。

のっけからMAH(Vo)がスクリーム全開の煽り文句を投げかけ、激しいフラッシュライトの中から同期サウンドを交えた「No One Knows」が切り出される。SHOW-HATE(Gt)の手掛けた刺激的なイントロが導火線となり、SIN(Ba)、GODRi(Dr)のプレイもヘヴィでありながらすこぶる機動性の高いバンドサウンドを描き出していった。映像越しにも伝わる4人のアクションの激しさ、感情表現の緊迫感、楽曲に乗せられた不屈のスピリットがそれぞれ歯車となってピッタリ噛み合い、見事なスタートダッシュを見せる。全編にわたって、英語詞を日本語に翻訳して伝える歌詞テロップも、配信ライブならではのアイデアだろう。リアルライブの熱気や振動や言葉や視線が届かない代わりに、SiMは今回の配信で歌詞も含めたアルバムの世界観を、深く共有させようとしているのである。

SiM Photo by Kohei Suzuki

4人のコンビネーションがアグレッシブさを増し、開放的なコーラスのメロディへと突き抜けてゆく「SiCK」では、無観客ライブのはずの会場フロアに人影が映り込む。MAHはこの日最初のMCで、なんとたくさんのマネキンをフロアに配置するようリクエストしたと明かしたのだが、マネキンたちが一糸纏わぬ姿で佇んでいることに不平を漏らしたりしている。画面が切り替わった次の瞬間、マネキンたちはそれぞれにSiM のブラックTシャツ姿となり、「いつの帽子だよ、SiLENCEって」と笑いながらライブを続行するのだった。

SiM Photo by Kohei Suzuki

渦巻く後悔の念を、ストレンジなムードのスカパンクに乗せて放つ「Devil in Your Heart」では、弦をなぐりつけるようにプレイするSINの姿も熱い。ラガ風の節回しから重厚なコーラスへと持ち込まれる「HEADS UP」を経ると、MAHは野球のバットを肩に担ぎ、コロナ禍におけるライブ/エンターテインメントへの過剰な逆風について語る。「怒ってるし、苦しんでるんだけど、それをぶつける場所すら、俺たちには与えられていなくて」。配信越しに歌声を要求しながら、行き場のない怒りを思い切りパンキッシュに投げかけるのは「BASEBALL BAT」だ。いくつも並べられたTVモニターには、今夏ファンから募ったシンガロング動画の顔、顔、顔。負のエネルギーの捌け口を、チャーミングな音楽によってポジティブに転換する。そんな表現の自由が、そこには描き出されていた。

SiM Photo by Kohei Suzuki

シンセサウンドを交えた「Smoke in the Sky」には、孤独感に苛まれながらも気高く独創的な表現に挑み続けるSiMの精神性が横たわり、勢いに乗ったラウドなジャンプブルース「BLACK & WHITE」へと繋ぐ。ここでMAHは、ライブに明け暮れていた時期の蓄積した疲労と憂鬱さについて打ち明けながら「正直、見飽きてたんですよ。お前らの、汗でぐしゃぐしゃになった顔ってやつを。でも今は、お前らの汚い顔が見たくてしょうがねえよ!!」と叫んでいた。それはファンに向けた、渾身のラブコールと言えるだろう。

「Crying for the Moon」は、悩ましいグルーヴの中で人間の底無しの欲望を描くナンバーだが、ライブに満たされていた時期には見落としがちだった幸福と重なって聴こえ、胸が締め付けられる思いがする。爆走パンカビリーの「YO HO」では、それでも自分たちの手で舵を握り、威勢の良い掛け声のように4人でコーラスを担いながら航海に乗り出していった。

SiM Photo by Kohei Suzuki

発言を促されたSHOW-HATE、SIN、GODRiが、揃いも揃って「特にないです」と告げていたのは可笑しかったが、MAHの口からは今回のアルバム再現ライブを配信するに至ったいきさつが語られ、そして「CAPTAiN HOOK」の異様なまでの爆発力が導き出される。SHOW-HATEによるサンプラーのフレーズが踊り出し、メタリック&トロピカルなサウンドが育まれるラップチューン「SAND CASTLE feat. あっこゴリラ」では、呼び込まれたあっこゴリラがステージの淵にしゃがみ込んだ姿勢でグルーヴを乗りこなす。パッと出て来てSiMの4人のボルテージにしっかり付いていく瞬発力も、実に素晴らしかった。

SiM Photo by Kohei Suzuki

そして、自分たちが生きる場所を決死の思いで守り抜く「BULLY」をフィニッシュすると、MAHはコロナ禍の中でも、日々子どもの成長を目の当たりにすることができた経験について語り、最後には「FATHERS」が披露される。誰かの人生を一変させるほど、大切で重要な新しい命を授かること。この世に生きる誰もが、そんなふうに誰かの人生を一変させるように生まれて来たということ。MAHは温かく力強いバンドサウンドの中で、その最終ナンバーをまっすぐ、ひたむきに歌った。4人がステージから去り、映し出されるスタッフクレジットの後には、「To Fans YOU COMPLETE US.」(ファンのみんなが、俺たちを完成させる)のメッセージが記されていた。

猛り狂う反骨精神と、温かな命の営み。闘う人生そのもの丸ごと観ているような、ドラマティックなライブ配信であった。今回の模様は、10月27日(火)23:59までアーカイブ配信され、視聴チケットは同日19:00まで販売される。

取材・文=小池宏和 撮影=Kohei Suzuki

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