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歴史的対バンがついに実現──ZAZEN BOYS×NUMBER GIRL@THE MATSURI SESSIONとは何だったのか? 徹底考察レポ!

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ZAZEN BOYS

「異常空間Z!」……日比谷野外大音楽堂の舞台から幾度も響き渡る向井秀徳の声に対して、無人の客席からは歓声も拍手も巻き起こることはない。それでも、この日のライブは紛れもなく、『THE MATSURI SESSION』ならではの空気感――歓喜と殺気が異次元で斬り結ぶような、唯一無二の緊迫感と高揚感に満ちたものだった。

コロナ禍の影響によって昨年5月4日から開催が延期されていた、ZAZEN BOYS×NUMBER GIRL初の響演『THE MATSURI SESSION』。いよいよ開催目前、というところで発令された三度目の緊急事態宣言を受けて、ライブは急遽無観客での開催が決定。スペースシャワーがプロデュースするライブ配信サービス「LIVEWIRE」を通じて、この日を待ち侘びた全国のオーディエンスのもとへ生配信で届けられることとなった。

言うまでもなくZAZEN BOYSは、2002年のNUMBER GIRL解散後に向井が立ち上げたバンドであり、ふたつのバンドが時系列上で重なり合うことはあり得ないはずだった――2019年にNUMBER GIRLが再結成を発表するまでは。そして、自らの主催ライブ『MATSURI SESSION』を開催してきたZAZEN BOYSが、両バンドの邂逅に際して掲げたライブタイトルは『THE MATSURI SESSION』。定冠詞つきの名前に託された想いと気迫が、この日のステージでは各バンドごとにまったく異なる形で炸裂していたのが印象的だった。

この日「ゲストバンド」として先に舞台に登場したのはNUMBER GIRL。向井秀徳(Vo・G)/田渕ひさ子(G)/中尾憲太郎(B)/アヒト・イナザワ(Dr)の4人が気合い一閃「日常に生きる少女」を響かせると、まだ陽光の眩しい日比谷野音の夕景が灼熱の殺伐ロック空間へと塗り替わる。「福岡市博多区からやってまいりました、NUMBER GIRLです」の口上から流れ込んだ「鉄風 鋭くなって」で《にっこり笑って》と鬼気迫る形相で絶唱する向井の佇まいも、時折アイコンタクトを交わしながら凄絶な轟音を繰り広げていくメンバーの様子も含め、すべて手に取るように詳細に観ることができるのも、配信ライブゆえの醍醐味だろう。

NUMBER GIRL

「ZEGEN vs UNDERCOVER」「透明少女」「YOUNG GIRL SEVENTEEN SEXUALLY KNOWING」など、00年前後のオルタナシーンの象徴と言うべきキラーナンバーの数々に加え、向井が「排水管」と紹介していた未発表曲も披露。メランコリックな退廃感とミディアムテンポの強靭なビートが絡み合う、新たな扉を開く楽曲だ。曲前のMCで「私の映画の師匠と勝手に個人的に決めております塩田明彦監督が、新作を作りました」と話していたり、同じく塩田監督の作品『害虫』に提供されていた楽曲「I don't know」がライブの最後を飾っていたり……といった向井の世界観が、ロックシーン屈指の強者4人衆のアンサンブルと共鳴し合って、スリリングな狂騒空間を生み出していた。

再始動のお披露目の場として出演予定だった2019年『RISING SUN ROCK FESTIVAL』初日が台風の影響で開催中止、その後のツアー『NUMBER GIRL TOUR 2019-2020「逆噴射バンド」』最終追加公演がコロナ禍のため無観客開催に変更……と、再結成後の道程は必ずしも順風満帆とは言えないものだ。が、それぞれのキャリアを経て再び4人で音を鳴らすことを選び、こうして舞台に顔を揃えた向井・田渕・中尾・アヒトの表情から伝わってくるのは、今この一瞬にすべてを解き放つ「音の修験者」としての凄味と熱量そのものだった。

NUMBER GIRL

そして陽も暮れた頃になって、吉兼聡(G)/松下敦(Dr)/MIYA(B)とともに向井秀徳(Vo・G・Key)が、今度はホストバンド=ZAZEN BOYSとしてオンステージ。冒頭の「自問自答」の、ダブとレゲエとファンクがとぐろを巻く不穏な音像が、そして《冷凍都市のくらし アイツ姿くらまし》《くりかえされる諸行無常…》のフレーズが、無人の日比谷野音の客席を異形の緊迫感で埋め尽くしていく。

「Honnoji」の5拍子系のビートが織り成す、ニューウェーブ×プログレの鮮烈かつ痛快なカオス。7拍子系のリズムの隅々にまで切迫感を張り巡らせた「COLD BEAT」の中盤、《ずぶっとハマった泥沼》と「泥沼」をぶっ込み、さらにファンキーな軽快さに満ちたセッションパート“泥沼ファンク”へ……と次々に楽曲に魔改造を施していくような、そして4人がそれを死力を尽くして楽しんでいるような凄絶さ。同じく向井秀徳が曲を作り、同じテレキャスターを演奏しながら、NUMBER GIRLとはまるで異質な音楽世界。結成以降もメンバーチェンジを繰り返しながら、音のひとつひとつがキワキワの存在感を宿した熾烈な表現を追求してきたZAZEN BOYS――その音の切っ先が、配信ライブであることを忘れさせるほどに頭と心にリアルに迫ってくる。

ZAZEN BOYS

「Weekend」「ポテトサラダ」や未発表曲「杉並の少年」など、こちらも真っ向勝負のセットリストでこの日の舞台に挑んだZAZEN BOYS。ライブ終盤に眼光鋭く放った「破裂音の朝」の圧巻のスケールの音像、「Asobi」のクールでタフなビート感が、至上の一夜を妖しく美しく彩っていた。4人が一度舞台を去った後、アンコールではまず向井ひとり、つまり「向井秀徳アコースティック&エレクトリック」編成で登場、「フィッシュ&チップスってバンドの『やっぱくさ、忘れられんっちゃんね』という曲をやります」の曲紹介とともにサカナクション「忘れられないの」を演奏。さらに、ZAZENのメンバーが揃ったところで、向井のユニット・KIMONOSの相棒=LEO今井が舞台へ。今井&向井Wボーカルの5人で奏で歌う「KIMOCHI」の《貴様に伝えたい 俺のこのキモチを》のラインとともに、無観客という特殊なステージに張り詰めた感情が、強く深く胸に染み渡ってきた。

ZAZEN BOYS/LEO今井

「自我の王国」……2014年、NUMBER GIRLリイシュー盤発売タイミングで向井にインタビューした際、向井は自分自身をそんな言葉で表現したことがある。時にメンバーをも顧みないほどに探究心と闘争心が噴き上がり、ついには上昇気流真っ只中にあったNUMBER GIRLの解散という事態を招いた向井本人の生き様を表したものだ。それから長い年月を経て、実際にこうして今、NUMBER GIRLとZAZEN BOYSというふたつのバンドは同時に存在し、「これから」へ向けての萌芽さえ覗かせているという事実は、それ自体が感動に値するものだ。しかし、それは「自我の王国」の崩壊を意味するわけではまったくない。むしろ、自我を折ることも曲げることもせずに己の道を貫き続けた向井が、そんな獰猛な自我すらも己の表現とバンドの原動力として支配することに成功した、タフでしたたかな現在地を指し示すものだ――ということを、向井の音楽人生が惑星直列を果たしたようなこの日のライブは如実に物語っていた。

なお、『THE MATSURI SESSION』のアーカイブに関しては、映像の再編集およびサウンドのニューミックスを施した「ディレクターズカット版」が新たに公開されており、5月17日(月)まで視聴可能となっている。

NUMBER GIRL/ZAZEN BOYS

文=高橋智樹
撮影=菊池茂夫(DYNASTY)

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