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趣里(演劇『キネマの天地』)×米沢唯(バレエ『竜宮(りゅうぐう)~亀の姫と季(とき)の庭~』)~新国立劇場の舞台に出演する2人が交流を深める特別対談

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(左から)趣里 米沢唯 

俳優の趣里と、バレエダンサーの米沢唯(新国立劇場バレエ団プリンシパル)の対談が実現した。趣里は『キネマの天地』(2021年6月10日~27日<6月5日、6日プレビュー公演>/新国立劇場 小劇場)に、米沢は『竜宮(りゅうぐう)~亀の姫と季(とき)の庭~』(2021年7月24日~27日/新国立劇場 オペラパレス)に、それぞれ出演する。バレエ経験のある趣里と、父の職業の関係で演劇が身近にあった米沢。互いの印象や舞台へ思い、今後それぞれが出演する作品の見どころなどを聞いた。(文章中敬称略)


■出会いは自販機の前

<新国立劇場地下2階のリハーサル・エリアでは、オペラ、舞踊(バレエ・ダンス)、演劇の3部門の出演者がリハーサルや稽古を行っている。そこはオペラ・バレエ・演劇が交差する「幸せな場」だ。ある時、自販機のトラブルで困っていた趣里に米沢が声をかけたのが、2人の出会いのきっかけだったという>

趣里 本当にびっくりしました(笑)。私が昔バレエの勉強をしていた時に、唯さんがローザンヌ国際バレエコンクールに出演されていて、その頃から唯さんは憧れの存在でした。だから声をかけていただいた時にはびっくりしてガクガクして、嬉しくなってしまい、思わず「『コッペリア』の配信観ます!」って言っちゃったんです(笑)。

米沢 ちょうどその時、『コッペリア』のリハーサル中だったんです(笑)。私も趣里さんのことを存じ上げていたのですが、家にテレビがないのでドラマなど拝見する機会がなくて……。でも、今度の『キネマの天地』はとても楽しみにしています。

<二人はそれぞれ、新国立劇場の中で、お互いのジャンルをどのように眺めていたのだろうか>

趣里 私が初めて新国立劇場の作品に出演したのは、『オレステイア』(2019年6月)でした。劇場のリハーサル・エリアに入ると、ダンサーの皆さんが真面目に取り組んでいらっしゃって。自分も以前バレエをしていたことがあるので、気持ちが引き締まりました。クラシック音楽が聞こえてくるなど、自分にとっても良い環境だなと思いますし、背筋が伸びる思いです。

今、『キネマの天地』の稽古場ではウォーミングアップとしてシアターゲームをしているのですが、つい盛り上がってしまうので、外に聞こえていたらどうしようかと心配になってしまいます(笑)。

米沢 演劇の方々は大きな声で発声練習をされていたり、突然喧嘩のシーンが始まったりします(笑)。私たちダンサーも大きな音で音楽をかけていたりするので気にはなりません。

私は新国立劇場バレエ団に入団して11年になるのですが、最初の頃はオペラ歌手や演劇の方とすれ違うたびにドキドキしていました。今でも演劇の方々が中庭に集まって休憩されている姿を見ると、幸せな環境にいるなと思います。

ここ最近、コロナ感染防止対策としてどの部屋も扉や窓を開けてお稽古をしていることもあり、作品の空気感が伝わってきます。一体どんな作品なんだろうとどんどん想像が膨らんで、気が付くとチケットを買っています。

趣里 演劇のお稽古場にも、バレエのピアノの音が聞こえてきたりすると、「うわー! 見たい!」と思ってしまいます。中庭からバレエのリハーサルが見えることがあって、つい覗き込んでみたり……(笑)。

米沢 私も演劇の稽古場を一度でいいから見てみたいと思っているので、その気持ちはすごくわかります。

■バレエで学んだ舞台の喜び、演劇の言葉の海から得る表現の力

<趣里はバレエダンサーを目指し、15~16歳の頃に英国のバレエ学校に通っていたこともあった。一方、米沢は父が舞台演出家だったことから「生後三カ月で芝居小屋に行った」(『斬られの仙太』パンフレット「演劇と私」より)という。このように二人は舞台と隣り合わせの環境で育ってきたという共通点を持つ。今はそれぞれ俳優、バレエダンサーとして活躍する2人が「バレエ」「演劇」から得たものは何だったのだろうか>

趣里 全ての点において、バレエをしていてよかったなと思います。ひとつの舞台に立つためには、ものすごくエネルギーを使います。そこに向けて全てを集中させることは、自分との戦いのようなもので、そうした精神面を鍛えるうえでバレエは特にいいトレーニングになっていました。また、(バレエを通じて)スタッフや共演者の方々と一つの舞台を作り上げる喜びや、それをお客様に見ていただくことによって得られる喜びがありました。私はそれが忘れられなくて、(バレエから離れたあとも)もう一度表現の道を選びたいと思い、演劇の世界に入ったのです。

趣里

米沢 私は父が演劇の演出家だったことから、これまで、バレエよりも演劇を観た回数の方が多いと思います。言葉のないバレエに対し、演劇は溢れる言葉の中で物語が進んで行く。バレエは直接言葉を舞台に乗せることはありませんが、でも言葉がないからこそ、表現の内側には豊かな言葉が必要で、その溢れかえる言葉の海に身を置く体験は私にとって必要不可欠です。だからどうしても演劇を観ずにはいられない。私にとっては(演劇もバレエも)すべてが繋がっています。舞台芸術は人間が作り出す一番美しい世界だと思っています。

■小川・吉田、両芸術監督が教えてくれたこと

<演劇とバレエはそれぞれ、演者やダンサーの表現を通して登場人物に個性が生まれ、物語の進展とともに舞台空間の中に無限の可能性が広がっていく。趣里と米沢はそれぞれどのように役作りなどを行っているのだろうか>

趣里 自分は自分が演じるキャラクターの一番の理解者である、という思いで役に入っていきます。「この人ならこういうとき、こうするかな?」と想像し、また自分のこれまでの体験も交えながらその役に近づいていきます。今回の『キネマの天地』では、演出の小川絵梨子さんや出演者の方々がとてもたくさんのものをくださるので、その場で生まれたものに対して必死に反応して、導いていただいているという感じです。

実は小川さんと初めてご一緒した舞台の稽古で、私、台本を没収されたんです。「もう台詞は入っているから、台本は見ないで大丈夫」と言われました。それが結果的にとても良い経験になりました。台本を没収されることで相手に向き合い、演じることで感情が出てくる。舞台はその感情が生まれる瞬間をお客様に見ていただくものだということに、改めて気付けたのです。

「ああ、私ったらなんてことをしていたんだ」って思いました。たぶん小川さんは、私が台本にこだわりすぎて、台詞を覚えることで頭がいっぱいになっている状態を見て、台本を没収してくださったんだと思うんです。台本にとらわれすぎている自分を解放してくれた。小川さんに出会えてよかったです。

米沢 とてもよくわかります。私も吉田都舞踊芸術監督から同じようなことを言われます。「もう踊りはできているし、ステップもきちんとできているから、あとは遊んで」。バレエは美しくきれいに踊ることを極めていくのも一つの道なのでしょうが、でも「習ったことではなく自分の踊りがそこに現れなければならない、そんなプロフェッショナルな踊り方をしてほしい」と言われます。一生懸命踊ることは大事ですが、一生懸命はお客さまに見せるものではない。私たちはお客さまに、さらにその先をお見せしなければならない。

演技に関しては本当に毎回悩みます。あの大きなオペラパレスの舞台の4階席の一番奥まで伝わるような演技とはどういうものなのか、吉田芸術監督にご指導いただき、研究したりしています。手の使い方や首の付け方ひとつ、一呼吸置くだけで本当にガラッと変わったりします。

米沢唯



■殺人事件をめぐる井上ひさし流推理喜劇と、ポップでカラフルな御伽噺の世界

<趣里が出演する舞台『キネマの天地』は、小川絵梨子が演出を手掛ける井上ひさし作品。映画出演のために集められた4人の女優たちが巻き込まれる殺人事件をめぐる虚構と真実が交差するような推理喜劇だ。また米沢が出演するバレエ『竜宮 りゅうぐう』は、森山開次演出・振付による「浦島太郎」をベースとした作品で、2020年の初演に続く再演となる。それぞれの作品の見どころを聞いた

趣里 『キネマの天地』は4人の女優が登場するのですが、私が演じるのは一番若い女優です。映画館の売り子からスカウトされて女優になり、人気が出て調子に乗っているという役です。そのほかにも強烈なキャラクターが出てきます。舞台設定は昭和10年ですが、小川さんは、時代を越えて現代人の心にもアプローチにできる舞台にしようと考えていらっしゃいます。

『キネマの天地』稽古場より 撮影:冨田実布

米沢 井上ひさしさんのお芝居はすごくセリフが多い印象ですが、皆さんどのようにお稽古されているんですか。

趣里 出演者それぞれが「ハイ次、ハイ次!」という感じで、ひたすらしゃべり続けていくところをどう崩して間を取り、会話として再構築していくかというところにトライしています。本作は長台詞もたくさんあるのですが、長台詞と感じさせないため、周りの人がその台詞を聞いてどう心が動くかを、今お稽古で練り上げています。

米沢 バレエ『竜宮 りゅうぐう』は日本人がよく知っている「浦島太郎」の物語で、誰が見ても楽しいお話です。背景や床など、舞台全体にプロジェクション・マッピングが使われているのですが、これは私も初めての経験でした。床の映像でお魚がスーッと泳いで行ったりするので、舞台稽古の時はみんなではしゃいで、お魚を追いかけたりしました。

衣裳もポップで、バレエを初めて観る方や小さなお子様でも楽しんでいただけます。お話の軸に亀の姫の浦島太郎への愛があるので、時を超えるラブストーリーとして楽しんでいただけると思います。

こどものためのバレエ劇場 2020『竜宮 りゅうぐう』公演より 撮影:鹿摩隆司

趣里 夏っぽい作品でいいですよね。昨年観られなかったので今年はぜひ観たいです。バレエは言葉がない分、想像力が掻き立てられて、文章より伝わるものがあると私は思います。その意味でも、とても楽しみです。

米沢 『竜宮 りゅうぐう』には子供が真似したくなるような可愛らしい踊りがある一方、とてもかっこいい「鶴の舞」もあるんです。この鶴の踊りを最初に森山さんが踊ってみせてくださったのですが、その時の印象が強烈で素晴らしかったのを覚えています。男性3人が扮するイカがタンゴを踊ったりもするんですよ。

趣里 それは楽しみです。配信の『コッペリア』を観たときも、唯さんのスワニルダを通して自分の中にいろいろな感情が芽生えてきて、「最高峰の舞台を観た!」と思いました。配信後にまたお稽古場に行ったとき、あまりの感動で唯さんやすれ違うダンサーさん達に「配信観ました!」ってつい言ってしまったんです。変な人になってしまっていたかも(笑)。

米沢 すごくうれしかったです(笑)。この機会に仲良くさせていただけばとても嬉しいです。

趣里 こちらこそよろしくお願いします。質問したいことが山ほどあるんです。

取材・文=西原朋未

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