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伊藤健太郎が佐々木小次郎役で見せる「負ける美学」とは 舞台『巌流島』インタビュー

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伊藤健太郎

2019年、白井晃演出の舞台『春のめざめ』で14歳の少年という主人公のメルヒオール役を見事に演じた伊藤健太郎が、2020年7月から9月にかけて上演される舞台『巌流島』で佐々木小次郎役を演じることが決まった。宮本武蔵役は横浜流星で、人気と実力を兼ね備えた2人による「巌流島の戦い」は、マキノノゾミの脚本と山田和也の演出により、壮大なアクション時代劇になることが期待されている。

今回が3回目の舞台出演となる伊藤に、小次郎役に挑む今の気持ちを聞いた。

“負け方”を僕なりに丁寧にやりたい

ーー作品に出演が決まった今のお気持ちを教えていただけますか。

佐々木小次郎という、誰もが知っているようなキャラクターを演じさせてもらえるということで、素直にすごく嬉しいですし、新しい巌流島、そして「これが小次郎だぞ」というようなものを出せたらいいな、という思いでいます。

ーー「これが小次郎だぞ」というのは、伊藤さんの中ではどういうイメージなのでしょうか。

脚本がまだなので漠然としていますが、小次郎の人物像は諸説あって、明確にこういう人だ、というものがないので、僕自身もフットワーク軽く演じさせてもらえるなとは思っています。ひとつ明確なのは、小次郎は武蔵と戦って負けてしまう。その負け方は、本を読ませてもらった上でですが、最後の戦いに行きつくまでの間もそうですし、戦いの瞬間もそうですけど、僕なりにすごく丁寧にやりたいという思いはあります。僕の思う小次郎は「負ける美学」というものがあるのかなと感じているので、そこをカッコよく演じられたらいいかなと思っています。

伊藤健太郎

ーー今回、伊藤さんにとって舞台では初となる殺陣にも注目が集まっています。

映像だったら編集でうまく形にしてもらうことができたりもしますが、舞台だとアングルも寄り引きも全部お客さん自身が決める。しかもキャパ1000人超の劇場で、皆さんが各々自由に観ている。頭のてっぺんからつま先まで、どこから観られても違和感のないようにやらなきゃいけないというのはすごく難しいことだと思いますが、初めての挑戦でもあるので楽しみです。

ーードラマでは殺陣を経験されていますが、やってみていかがでしたか。

これまで何回かやらせてもらうことがあって、殺陣は好きなんですけど……簡単に言ってしまえば殺し合いなので。だから生半可な気持ちでやってはいけないことだと思うし、ましてや武蔵と小次郎は実際にあったお話でもあるので、そこに対する気合いは相当入れてやらないといけないなと思っています。決してチャンバラじゃない、その一太刀一太刀に責任を持って演じなければいけないし、でもこれはお芝居でもあるので、信頼関係を持ちながらそういう気持ちでやるということがすごく大事なのかな、と思います。

ライバルとは「その人がいると頑張れる」と思える相手

ーー宮本武蔵役が横浜流星さんです。

いい意味でライバルとして、お互い高め合いながら舞台上で戦っていけるかというのがすごく楽しみです。共演は今までしたことがなくて、でも共通の知り合いが「次一緒だから会っとけよ」みたいな感じで……それ田中圭なんですけど(笑)。圭くんが取り持ってくれて会って、よろしくお願いします、と話をしました。僕にとって小次郎役は、また新しい境地に行く役柄でもあると思っていて、もしかしたら流星くんにとっての武蔵役もそうなのかな、と想像しています。そこに立ち会えるのはすごく嬉しいですし、僕自身も頑張って一緒にいいものを作れたらと思います。

伊藤健太郎

ーー伊藤さんにとって「ライバル」とはどんな存在だと考えていますか。

僕の思うライバルは「その人がいると頑張れる」ということなのかなと思っていて、だからこそ相手が頑張っている姿が嬉しかったりもするんです。プロゴルファーのタイガー・ウッズは、ライバルがホールめがけてボールを打ったときに、心の中で「入れ!」と叫ぶ、という話を聞いて、それってすごく大事なことで、相手に対して「失敗しろ」って思うんじゃなくて、「成功しろ」と思っていた方が自分自身も高みに行けるのかなっていうのは思いました。僕にとってのライバルは地元の仲間たちで、それぞれがそれぞれの場所で頑張っていることが嬉しいし、自分ももっと頑張らなくてはいけないな、と思わせてくれる存在なんです。武蔵と小次郎の関係性でも、そういうものが出せたら嬉しいですね

毎回違う刺激をもらえるのが舞台の楽しいところ

ーー今回で3本目の舞台出演になりますが、初舞台はヨーロッパ企画の上田誠さん、昨年は白井晃さん、そして今回は山田和也さんとそれぞれ全く異なる演出家です。

そこがまた舞台の楽しいところなのかなと思っています。そこの刺激がなかったら、毎回同じで飽きちゃうと思うんです、僕の性格的に。だから毎回違う刺激をもらえるというのは、僕的にはすごく重要なポイントのひとつでもあります。あえて選んでいるわけではないですし、良し悪しだとは思いますけど、同じものばっかりというのは僕はあんまりやりたくないので、例えば好青年を演じたら、次は極悪人で、その次はヤンキーで、みたいにいろんなことをやれるのがこの仕事の面白い部分でもあると思っています。

ーー昨年ご出演の『春のめざめ』は本当に濃密な舞台空間だったと思いますが、今回は非常に大きな劇場での公演になります。どのような違いがあるのか、現段階でどう想像されていますか。

『春のめざめ』は気持ち的にもすごく窮屈な思春期の男の子を演じていたこともあり、ああいう広さの、窮屈な感じに繋がるような場所でやることが合っていたと思うんですけど、今作のような立ち回りとかがあるような、出る人たちもワクワクドキドキするような派手な作品は大きくて広いところでバン! とやった方がかっこいいと思うし、気持ちいいと思います。大きな劇場にはすごいパワーがあるというか、お客さんたちのパワーってすごいな、って観客として行くと毎回思っています。すごく楽しみですけど、緊張します。舞台に出ちゃえばいいんですけどね、出る前まで……初日とかは多分ドキドキするんだろうな。

伊藤健太郎

ーー『春のめざめ』ご出演の際の事前インタビューで、初舞台のときに緊張感はあったけれども非常に気持ちよくやれたので、2回目の舞台も楽しんでやれたら、というようなお話しをされていました。実際に楽しめましたか?

めちゃくちゃしんどかったですし、「マジでキツイ」って思ってましたけど、楽しかったです。結構ヘビーな題材で精神的にも大変でしたが、一緒にやったメンバーはみんな良かったですし、乗り越えたときの気持ち良さはすごいあった。結果的にすごく楽しかったので舞台をより好きになりました。僕の初舞台は上田誠さん脚本・演出の『続・時をかける少女』というラブコメディだったんですが、本当に初めてがああいう楽しい舞台でよかったなと改めて思いました。初めて出演した舞台がもし『春のめざめ』だったら、もう二度と舞台やりたくない、って思ってたかもしれない(笑)。最初がコメディで、2回目がヘビーな作品で、と段階をうまく踏めたから舞台をもっと好きになれたんだと思います。だからこそ今回も、もっと舞台を好きになれると思っています。

ーー今回は全国8か所での公演となります。

すごく楽しみです! 食べることが好きなので、各地で美味しいものを食べたいです。たぶんそれが舞台のパフォーマンスにも影響してくると思うので(笑)。あと、それぞれの土地によって皆さんの感じ方とかも違ってきたりするので、そういうものを舞台上では楽しみたいです。

ーー東京公演の時期がオリンピックの時期とも重なっていて、様々な国の人々が東京を訪れているタイミングだと思います。もしかしたら、そうした海外のお客様も舞台を見にいらっしゃるかもしれませんね。

ぜひ観に来ていただきたいです。僕も海外で舞台を観たことがありますが、そのときは何言ってるかわからないし、何やってるかも全然わからないんですけど、でも感動したんです。言葉とかがわからなくても感動できるものがある。僕はそれが一番大事だと思っているので、そういうものが『巌流島』でも出来ればいいですね。

伊藤健太郎


音楽のパワーでより高いところへ行ける

ーー『春のめざめ』のときは伊藤さんの大好きなDragon Ashの降谷建志さんが音楽を担当されていました。普段から音楽はよく聞かれますか?

聞きますね。舞台のアップ中とかもよく聞いてますし、あとは一人の時間は大体聞いてます。リラックスしたいときとか、テンションを上げたいときとか、あとはあんまりないですけど、たまに落ち込みたいときがあって、心にズーンとくる曲とかを聞いてグワーッと落ち込んで、落ち込めるとこまで落ちたらもうそれで終わりなんで、よし! ってなります。音楽は自分の生活の中で大事な役割としてあります。

ーー今回の舞台で使われる音楽も楽しみですね。

どういう曲が流れるのかすごい楽しみにしてます。舞台の音楽ってゾクゾクするんです。観客として観に行った時も、音楽ってすごく大切だなって思いますし、自分が舞台に立っている時も音楽があると全然違います。稽古中にまず音なしでやって、その後で音ありでやると、やっぱり音の動かしてくれるパワーって半端じゃないものがあって、音楽によってより高いところへ行ける感覚もあります。

ーーきっと今回もいろいろな場面で、音楽を聴いてテンションを上げていくことになりそうですね。

そうですね、いろんな曲聞きまくって、ブワーッとテンション上げて、バーンと出て行って、バーンと斬られるっていう(笑)。いやまだどうかわからないですけど(笑)。とにかくテンション上げていきたいです!

伊藤健太郎

取材・文=久田絢子 撮影=荒川 潤

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