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参観日に一人駆け回る発達障害長男。「どうして…」涙目の母がハッとしたクラスメイトの言葉

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参観日に一人駆け回る発達障害長男。「どうして…」涙目の母がハッとしたクラスメイトの言葉

監修:鈴木直光

筑波こどものこころクリニック院長

初めての参観日

二学期が始まり、子どもたちも新しい環境に少しずつ慣れてきました。これからの季節は、学校行事も目白押しで忙しくなりそうですね。今回は、そんな行事の一つである参観日のエピソードについてお話ししたいと思います。

ハジュが3歳のとき、家の近くの幼稚園に入園しました。すでにASD(自閉スペクトラム症)の診断を受けていたため、入園当初から加配の先生がサポートをしてくれていました。二学期に入り、ハジュも少しずつ園生活に慣れてきました。

そんな中、初めての参観日がやってきました。私は「お母さんが来た!」と喜んでくれるかな?それとも、お友達と遊んでいるかな?と、期待を胸に幼稚園へ向かいました。しかし、ハジュはいつもとは違う参観日の雰囲気に少し興奮してしまったようでした。独り言をつぶやいたり、落ち着かない様子で、教室の中を行ったり来たりしていました。

ハジュのこだわり

参観中も教室の中にほとんどいないハジュを追いかけて、園内を駆け回る、なんともアクティブな参観日となりました。給食の時間になってもハジュは廊下に飛び出してしまい、私はもう追いかけるのに疲れ果てていました。「どうしてこの子は、こんなに言うことが聞けないんだろう……」と、涙が出そうになりました。

そのとき、クラスメイトの子が「ハジュくんはいつもこの時計が鳴るのを聞いてるんだよ」と教えてくれました。私はハジュが一体何をしたいのか分からず、ただ追いかけていただけだったことに気づかされ、ハッとしました。

ハジュのルールと成長

ハジュはただ自分のルールに沿って行動していただけなのかもしれません。思い返してみると、駐車場の園バスの位置が違ったり、いつも閉まっている玄関が開いていたりと、参観日ならではの「いつもと違うこと」がたくさん起こっていました。ハジュはそれを元の状態に戻そうとしていたのではないかと感じました。

この気づきを先生方と共有し、振り返りや懇談を通して、ハジュもクラスのみんなも楽しく幼稚園生活を送れるようにたくさん考えました。

例えば、園の一日の流れが分かる絵カードをホワイトボードの見えるところに貼るようにして、同じ絵カードを持つ加配の先生からハジュへ、見通しが持てるように活動の前に声かけをしてもらいました。また、ハジュは時計が読めたのと、決まったことに沿うのが好きだったので、「何分になったら外に行けるよ」と時間を明確にした声かけをしてもらいました。家でもカレンダーや絵カードで視覚的にアプローチするようにしました。

そして、年長になって迎えた何度目かの参観日。ハジュは相変わらず走り回ったり、いつもと違う雰囲気に興奮していましたが、なんとその日、最初から最後まで教室で過ごすことができたのです!

レクリエーションには参加しなかったものの、「今は教室にいる時間」ということをしっかり理解して、楽しそうに過ごしていました。ハジュの成長を目の当たりにして、私は涙が止まりませんでした。

現在、小学4年生のハジュ。先日の参観日では、マイクを持って堂々と自己紹介をし、とても立派な姿を見せてくれました。あの頃、不安で悩んでいた私に「大丈夫だよ」と言ってあげたいです。

執筆/スパ山

(監修:鈴木先生より)
教室にいられたり、自己紹介ができたりしたら「できたよ カード」(家庭版&学校版)にシールを貼ってあげましょう。家庭でできたら保護者の方が、学校でできたら担任がシールを貼って褒めてあげると自尊心が上がっていきます。こういったトークン法で自分のやったことがいいことだと気づき今後も継続してできるようになるはずです。できて当たり前だと思われがちなことも、発達が気になる子どもは努力して取り組んでいます。だからポイントが必要なのです。一つクリアしたらさらなる目標を掲げてスモールステップアップを試みていきましょう。

(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。

神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。

知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。

ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。

ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。

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