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高齢者特殊詐欺の実態と対策を解説 被害を防ぐために大切なこと

「みんなの介護」ニュース

古賀 優美子

「会社のお金を使ってしまった。大至急お金を振り込んで欲しい」と、家族のふりをしてお金をだまし取るオレオレ詐欺。

「介護保険料の還付金がある」と役所の担当者を語り、ATMを操作させて、お金をだまし取る還付金詐欺。

このような特殊詐欺の被害は後を絶ちません。警察庁のデータによると、被害者の約8割が高齢者です。加えて、認知症高齢者が被害に遭うケースが多いとされています。この記事では、特殊詐欺の実態と詐欺に遭わないための対策について解説します。

高齢者特殊詐欺の実態

警察庁が発表した「令和4年における特殊詐欺の認知・検挙状況等について」によると、令和4年(2022年)の特殊詐欺の認知件数は17570件で、被害額は370.8億円。前年に比べて認知件数及び被害額、ともに増加していました。

このうち、65歳以上の高齢者が被害にあった件数は15114件でした。これは、法人被害と呼ばれる企業・団体を狙った詐欺を除いた総認知件数のうち、86.6%を占める割合となっています。

また、65歳以上の女性の被害認知件数は11559件で、女性の方が被害に遭っていることがわかります。

高齢者特殊詐欺の事例

高齢者を狙う特殊詐欺の手口はさまざまです。ここでは2つの事例をご紹介します。

2023年9月、長野県内に住む女性は、役場職員を名乗る男から「介護保険料の払戻金がある」という電話を受けました。電話の指示で金融機関のATMを操作した女性は、407万円を振り込んでしまい、その後詐欺だと気がついたのです。

北海道では、70代の男性が、SNSで知り合った投資家を名乗る人物から株などの投資を勧められました。「この投資で儲かった」という感想を多く聞いた男性は信用してしまい、1200万円を振り込んでしまう事件も発生しています。

高齢者を狙う特殊詐欺の種類

具体的にどのような手段で騙されてしまうのでしょうか。ここでは、主な特殊詐欺の種類をご紹介します。いずれも、2020年1月1日から特殊詐欺の手口として分類されたものです。

1.オレオレ詐欺

家族からの電話で、「交通事故を起こしてしまい、損害賠償を請求された」、「恋人を妊娠させてしまい、中絶費用が必要になった」、「会社のお金を使いこんで警察沙汰になった」と告げて、お金をだまし取る手口です。

最近では、事故の相手や恋人の親、会社の上司などの関係者まで登場する、「劇場型」と呼ばれるオレオレ詐欺もあります。

2.預貯金詐欺・キャッシュカード詐欺(窃盗)

警察官や銀行員、自治体職員等を装ってお金をだまし取る手口です。「あなたのキャッシュカードが犯罪に利用されている。そのためキャッシュカードの交換が必要だ」と告げたあと、自宅を訪問して、キャッシュカードや貯金通帳をだまし取ります。

3.架空料金請求詐欺

契約した覚えがないのに、商品やサービスの代金を請求されるものです。連絡してきた相手が、「コンビニエンスストアで電子マネーカードを買って、その番号を教えて」と指示する場合もあります。指示どおりにカードを買って番号を告げると、カードの額面分をだまし取られることになるのです。

4.還付金詐欺

役所の人間を名乗る人物から「税金の還付金がある」、「介護保険料の払い戻しがある」という電話が入るというパターンです。指示どおりに金融機関のATMを操作し、お金をだまし取られてしまうケースが発生しています。

5.融資保証金詐欺

融資を申し込んできた人に対して、実際は融資を行わないにもかかわらず、保証金などの名目でお金をだまし取るものです。

6.金融商品詐欺

高額な金融商品に関する嘘の情報を提供して「この商品を購入すると利益が得られる」と、うたい文句で購入させて、その代金をだまし取るものです。

7.ギャンブル詐欺

不特定多数の人が読む雑誌に「パチンコの打ち子募集」「公営ギャンブルの必勝法を教えます」と掲載したり、不特定多数に同じようなメールを送ったりするものです。実際に連絡してきた人に対して、保証金や会費などの名目でお金を請求してだまし取ります。

8.交際あっせん詐欺

不特定多数の人に対して「女性紹介します」と近づき、保証金や会費などの名目でお金をだまし取ります。雑誌掲載やメール送付などの手段を取ることが多く、連絡してしまうと被害に遭います。

高齢者が特殊詐欺に遭いやすい理由

特殊詐欺被害者の中でも圧倒的に多いのが65歳以上の高齢者です。なぜこれほどまでに高齢者が特殊詐欺被害に遭いやすいのでしょうか。主な理由として、以下が考えられます。

1.3つの不安につけこまれる

高齢者は「お金」「健康」「孤独」の3つの不安を抱えているといわれます。

特殊詐欺グループや悪徳業者は、これらの不安に付け込み、高齢者に対して親切に対応して、信用させてから、貯金などの財産を狙って詐欺の手口を持ち掛けます。

2.日中家にいることが多い

退職した高齢者は日中家にいることが比較的多く、電話に出れる時間も増えるため、詐欺の電話と接する可能性が高まります。その上、聴力が低下していたりすると、家族の声を聞き分けられにくくなっていることも。その場合、詐欺の電話にも気づきにくくなってしまいます。

3.最新の情報をつかみにくい

近年は手口が巧妙化し、詐欺であると見抜くことが難しくなりつつあります。

最新の情報は、インターネットやSNSで広まることも多いため、スマートフォンやパソコンなどのデジタル機器に慣れていない高齢者の場合は、詐欺の実情を知る機会も少なってしまいます。

4.自分だけは大丈夫と思っている

特殊詐欺被害のニュースを見ても、「自分は大丈夫」と思う人もいらっしゃるかもしれません。ここで、警察庁が2018年に行った「オレオレ詐欺被害者等調査」のデータをご紹介します。

これは、オレオレ詐欺の被害者354人、被害に遭わなかった317人(事業所による阻止と家族による阻止の合計)、オレオレ詐欺の電話を見破った428人を対象に行った調査です。

そのうち、自分は被害に遭わないと思っていた人の割合は以下の通りです。

被害者:78.2%
被害にあわなかった人(事業所による阻止):78.0%
被害にあわなかった人(家族による阻止):71.5%
オレオレ詐欺の電話を見破った人:56.8%

上記からもわかるように、自分は大丈夫と思っていた人が被害に遭っている割合が高いです。いつ詐欺の連絡が来るかわからないので、自分を過信しすぎないようにしましょう。

高齢者特殊詐欺の対策

特殊詐欺被害対策の大前提は、「自分は大丈夫」もしくは「自分の親は大丈夫」と、過信しないことです。

その上で、高齢者本人や家族が行える対策をご紹介します。

1.電話に関する対策

特殊詐欺グループは、高齢者宅に電話で連絡してくることが多いとされています。そのために、以下のような電話対策をとるとよいでしょう。

在宅時でも留守番電話にする
ナンバーディスプレイつきの電話にする
家族しか知らない合言葉を決める
詐欺の常套句を電話の前に貼っておく

家族しか知らない合言葉は、好きな食べ物や昔行った旅行先など、個人的なものにすることをおすすめします。

2.情報収集

高齢者本人がテレビや新聞のニュースを見ておくことはもちろん、もしご家族が、インターネットで情報を知った場合は、分かりやすく伝えておきましょう。

自治体の広報誌をチェックすることもおすすめです。特殊詐欺に関する情報が載っていたり、警察署からの注意喚起のチラシが入っていたりすることがあります。

3.家族との連携

家族を名乗る人物から「携帯電話の番号が変わった」という連絡があったときは、いったん切って、もとの番号にかけ直して確認してください。

また、お金絡みの電話がかかってきた場合は、すぐに応じず、家族や知人に相談しましょう。

4.カードは見せない、渡さない

警察や自治体職員を名乗る人物、もしくは全く知らない人が家に来ても、キャッシュカードやクレジットカードは見せない、渡さないことを心がけてください。

警察や自治体職員などが「カードを見せてほしい」といった要求をすることはありません。怪しいと思ったら、警察や市区町村役場に問い合わせましょう。

被害に遭わないために

特殊詐欺被害は、手口が巧妙化しており、自分たちで対策をしても追いつかないことも考えられます。ここでは、国民生活センターからの情報と、NTTが行っているサービスについて紹介します。

1.独立行政法人国民生活センター

独立行政法人国民生活センターでは、特殊詐欺被害を含めた、高齢者の消費者被害に関する情報を数多く提供しております。

そのうちの1つが、「さいふをまもるひけつ」です。特殊詐欺被害や消費者被害を防ぐための行動が分かりやすく表現されておりますので、電話の前など常に目にする場所に貼っておくとよいでしょう。

さ:誘い文句にのせられないで
い:家の戸、財布にしっかり鍵かけて
ふ:不審な人には注意して
を:お断り上手になりましょう
ま:まずは、家族や消費生活センターに相談
も:もしもの時に備えて、成年後見制度を利用
る:留守番、一人暮らしもこれで安心

2.NTT東日本・NTT西日本

NTT東日本と西日本では、70歳以上の契約者、または70歳以上の方と同居している契約者を対象に特殊詐欺被害対策のサービスを提供しております。その1つが、ナンバーディスプレイおよびナンバーリクエストの利用料や工事費の無償化です。

ナンバーディスプレイ

相手の電話番号が電話機などのディスプレイに表示されるサービス

ナンバーリクエスト

電話番号を通知せずにかけてきた相手に対して、「電話番号を通知してかけ直すように」と自動音声で伝えるサービス

年齢確認書類の提出やナンバーディスプレイ対応電話機の設置などが必要にはなりますが、着信した電話番号が分かるので、知らない番号からの電話に出なくて済むという点では、詐欺に遭う確立を減らすことにつながるでしょう。

特殊詐欺被害にあったと気づいた時点で、すぐに相談しましょう。主な相談先としては、警察の電話相談窓口「#9110」または消費者ホットライン「188(いやや!)」、消費生活センター、市区町村の消費生活相談窓口などがあります。

自己判断をしてしまうと、状況を悪化させる可能性もあるので注意してください。

まとめ

この記事では、高齢者を狙う特殊詐欺とその対策についてご紹介しました。特殊詐欺グループは、巧妙な手口で金銭をだまし取ろうとしています。

「自分だけは大丈夫」と思わずに、充分な注意を払っておくことが大切です。家族や知人と話し合ったり、警察や行政が提供する情報に目を通し、詐欺の手口を知っておくことも対策の1つです。

しかし、対策を講じた場合でも、被害にあう可能性はゼロではありません。もし被害に気づいた場合は、自分たちだけで解決しようとせずに、すぐに警察や消費生活センターなどに相談してください。

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