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アクション監督・谷垣健治が語る!ドニー・イェン最新作『シャクラ』の“説得力”とは?「“気功”の表現にも嘘くささを感じさせないのがドニー」

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アクション監督・谷垣健治が語る!ドニー・イェン最新作『シャクラ』の“説得力”とは?「“気功”の表現にも嘘くささを感じさせないのがドニー」

伝説的武侠小説をドニーが映画化

“宇宙最強”ドニー・イェンの新作『シャクラ』は、久々の本人監督・主演にして武侠アクションである。

武侠小説の大家・金庸の小説「天龍八部」を原作としたドニー念願の企画。剣を使ったバトルも含めド派手でキメキメのアクションが展開される。

『シャクラ』© 2023 Wishart Interactive Entertainment Co. Ltd. All Rights Reserved

「ドニーが求める仕事のレベルはむちゃくちゃ高い」

ドニー演じる主人公・喬峯は仲間殺し、親殺し、さらには少林寺での武術の師匠を殺した濡れ衣を着せられる。逃亡生活の中でもあくまで堂々と、そして行動原理は人のため。まあとにかく、今回もドニー(長髪)がハチャメチャにカッコいい。

『シャクラ』© 2023 Wishart Interactive Entertainment Co. Ltd. All Rights Reserved

本当に、そのための映画みたいなもんですから。

そう言って笑うのは、本作のアクション監督である谷垣健治さん。ドニー作品の数々に加え『るろうに剣心』シリーズ(2014~2020年)も話題になった。

ドニーからのオファーは、いつも直電だという。

『シャクラ』メイキング © 2023 Wishart Interactive Entertainment Co. Ltd. All Rights Reserved

ドニーから仕事の話がきたら、まずどうやって断るかを考えますね(笑)。他の現場も大変ですけど、やっぱりドニーが求める仕事のレベルはむちゃくちゃ高いので。『レイジング・ファイア』の時は『るろうに剣心』を撮影中の極限状態の時に電話がきて、思わず本当のスケジュールを話しちゃったんですよ(苦笑)。

中国の古装片(時代もの)を撮った経験があまりなかったので躊躇したんですけど、ドニーは「日本で『るろうに剣心』のアクションを手がけた人間が、その感覚で中国で古装片をやったら新しいものができるんじゃないか」と言ってくれました。

『シャクラ』© 2023 Wishart Interactive Entertainment Co. Ltd. All Rights Reserved

ドニー作品のアクションを作る大変さの一つは、現場で次々と湧き出るアイディアに即座に対応して具現化すること。かなり大規模な撮影であっても“プラン通り”には絶対にならない。ギリギリまでさらにいいアイディアを求めて改良していくのがドニー流だ。

たとえばですけど、急に「ここは武術というより変わったダンスっぽい動きがいいな」って言い出すんですよ。で、僕が速攻でスマホで検索する。“ロシア ダンス バレエ”みたいに。そこで出てきた映像を直感で選んでドニーに見せて、「そう、こういうの!」となったら超ラッキー。

注意深く見てもらえばわかるんですが、エンディングの必殺技を発する時にロシアンダンス風の動きがあるのはそういった、完全に現場での思いつきなんです(笑)。だから、その場での瞬発力が凄く大事ですね。たまに“俺たち、スマホがない時代はどうやって映画作ってたんだっけ?”って思いますけどね(笑)。

『シャクラ』メイキング © 2023 Wishart Interactive Entertainment Co. Ltd. All Rights Reserved

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「ドニーだったら“風”を吹かせるよな、と思わせてくれる」

現代のアクションではCGを追加するのが当然のようになっている。完成した状態のビジョンを共有するのも大事で、だからプリヴィズ(※事前イメージ映像)も作られるわけだ。もちろんドニー作品にもプリヴィズはある。しかし、それは絶対的なものではないと谷垣さんは言う。

プリヴィズはもちろんプランを各部署で共有する上で大切です。ただプリヴィズは優れたスタントマンたちが、足場もいい練習場で動きやすい衣装で動く、そんな環境で作られるもの。不測の事態が連発する現場とは違うんですよ。プリヴィズを目指して撮影しても、どうしても80点くらいのものになってしまう。だから、そことは違うベクトルのことを目指さないといけないとは思いますね。

『シャクラ』メイキング © 2023 Wishart Interactive Entertainment Co. Ltd. All Rights Reserved

序盤、中盤、クライマックスと、それぞれシチュエーション、テイストの違うアクションが用意されている『シャクラ』。クライマックスの撮影は時間がかかり、オープンセットの使用期限がきて何度も撮影場所を変え、そのたびにプランを変え、アイディアを絞った。劇中で上階から下階、屋外と移動しながら闘いが続くのは、そんな苦心のたまもの。結果として、目まぐるしく状況が変わる新鮮なアクションになった。

『シャクラ』メイキング © 2023 Wishart Interactive Entertainment Co. Ltd. All Rights Reserved

それにしても、だ。詠春拳のイップ・マンを演じても、MMA(総合格闘技)スタイルで闘う現代の刑事役でも、そして今回のような剣を使う武侠アクションでも、ドニーは抜群にカッコいい。ファイトスタイルが変わっても、軸にあるものは変わらないような。それを谷垣さんは、ドニー・イェンという役者の持つ「説得力」だという。

この『シャクラ』では、気功の表現で手からエフェクトがバンバン出る。でも、そこに嘘くささを感じさせないのがドニーなんです。“まあ、ドニーだったら出せるんじゃない?”と思わせてくれる。闘いの最中にポーズをバッと決める場面もドニーらしかったでしょ。あれもその場で直感的に出たものです。「どうやろうかな。こうか?」とやったら、さすがのカッコよさで。その場に風が吹いたような感じがしましたね。風が“見えた”というか。だから、予定になかった風のエフェクトを入れたんです。

ポーズひとつで現場に風を吹かせる漢、ドニー・イェン。ぜひ劇場で“スクリーンに風が吹く”瞬間を確認してほしい。

取材・文:橋本宗洋

『シャクラ』は2024年1月5日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー

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