SNS時代の生きもの愛好家必携! 『改訂版 いきもの六法』ブックレビュー
SNSに投稿された自然や生きものの写真が、思いがけず「それは違法では?」と話題になることがあります。
採集したサカナ、昆虫、草花、動物の骨——本人に悪気はなくても、実は法律で規制されていたというケースは少なくありません。
情報発信のハードルが下がった今、個人と自然との関わり方が“公の目”に触れる場面も増えました。
行動が記録され、共有されることが当たり前になったからこそ、自分の行動がどんなルールに関わっているのか、あらかじめ知っておくことの重要性は高まっています。
こうした背景のもとで、心強いガイド本となってくれるのが、『改訂版 いきもの六法 日本の自然を楽しみ、守るための法律』(監修:中島慶二、益子知樹/編集:山と溪谷社いきもの部(2025)山と溪谷社)です。
2022年の初版を経て、2025年7月に刊行された改訂版では、法改正や新たな保護対象にも対応。フィールドで活動する人に向けて、知っておきたい法律の知識をやさしく、実用的に教えてくれます。
自然と法律の“複雑な関係”を読み解く
海や川で魚を釣ったり、田んぼでカエルを捕まえたり、海辺で貝を拾ったり——そんな日常的な自然とのふれあいが、思いがけず法律にふれることがあります。
たとえばブラックバスやウシガエルなどの特定外来生物は、「外来生物法」によって厳しく規制されており、2023年には“条件付特定外来生物”という新たな分類も登場。
アメリカザリガニやアカミミガメがこの対象となり、飼育は可能でも、生きたまま他の場所へ運んだり、野外に放したりすることは原則として禁止されています(2025年10月現在)。
生物種だけでなく、場所にも注意が必要です。採集した場所が「自然公園法」で定められた特別保護地区だったり、他の地域では採取して問題のない生きものが、「地方自治体の条例」によって、その地域だけで保護種に指定されていたりすることもあります。
本書では、「種の保存法」「外来生物法」「自然公園法」「文化財保護法(文化財保護条例)」「森林法」「漁業法(漁業調整規則・遊漁規則)」「地方条例」の7つを“知っておくべき法律・条例”として紹介。それぞれが自然保護や資源管理、文化財の保全など、異なる視点から定められており、どれかひとつを理解していれば安心、というわけにはいかない複雑さがあることが分かります。
こうした複雑に入り組んだ法規制を、生きものの種類や場所ごとに整理し、「どの法律が何に対して規制をかけているのか?」を明快に解説。そもそも、なぜこれほどまでに制度が複雑になっているのか、その背景にある考え方まで丁寧に伝えてくれます。
法律の意義とともに知る、個人の心構え
改訂版では、法改正の反映に加え、「特定外来生物や天然記念物をうっかり捕まえてしまったらどうすればいいの?」といった、読者の素朴な疑問に答えるQ&Aを新たに収録。
巻末には、特定外来生物とよく似た在来種を見分けるための図鑑ページも追加され、実際のフィールドで役立つ内容がさらに充実しています。
また本書は、法律の知識だけでなく、マナーや配慮の視点にも丁寧に触れています。現場でのトラブルを防ぐ心得や、他者との共有空間としての自然環境に対する思いやりが、法令と並んで大切に語られています。
『改訂版 いきもの六法』は、自然を守るための法律の意義、そして自然を楽しむ上で、一人ひとりの心構えが、いかに大切かを教えてくれます。SNS時代の自然との向き合い方を考える一冊として、自然と関わるすべての人にぜひ手に取ってほしい本です。
(サカナト編集部)
参考文献
山と溪谷社-改訂版 いきもの六法 日本の自然を楽しみ、守るための法律
環境省-条件付特定外来生物アカミミガメ・アメリカザリガニの規制について