【土用の丑の日】浜松のタクシー運転手に「オススメの鰻屋までお願い」と言った結果 → 異世界感が凄い場所にたどり着いた
鰻と言えば静岡県浜松市。駅前をちょっと歩くだけで、探さなくとも鰻屋にぶつかる。北にも南にも鰻鰻鰻。なんなら高架下にも鰻。さすが鰻で知られているだけあってマジで鰻屋が多いけど、多すぎてどこ行ったらいいのか分からない。価格帯も2000円~4000円のメニューが揃っていて似たようなものだしなあ。
そこでタクシーに乗り込み「オススメの鰻屋まで連れて行ってもらえますか」と言ってみた。タクシードライバーは私(中澤)より20歳くらい年上。多分60歳くらいの浜松の地元運転手さんは穏やかにこう言った。
【写真】店周辺の様子はこのような感じ。人に会ったらびっくりするレベルで人がいない
・何かを知ってそうなタクシー運転手
「鰻屋なら駅前のその辺にもあるけど、美味しいヤツってことですか?」と。「そうですね。お昼を鰻にしようと思ったんですが、ちょっと店がありすぎてよく分からないんで運転手さんのオススメを教えてください」と私(中澤)。
運転手さん「オススメかあ……実は駅前のお店はあんまり評判良くないんですよね。間違いないのは浜名湖周辺だろうな。ここからタクシーで行くなら一番近いのは『志ぶき』かな? あ、今日何曜日でしたっけ?」
私「水曜日です」
運転手さん「あー水曜日かあ。定休日かも。なぜか、鰻屋って水曜日が定休日の店が多いんですよね」
・鰻がうまいエリア
知らんかった。そんな鰻屋あるあるがあろうとは。そして、確かに調べてみると『志ぶき』は定休日だった。非常に残念だが、この運転手さんはちゃんと経験に基づいた鰻屋知識がある人っぽい。運転手さんが言うには、『志ぶき』周辺は鰻屋がいっぱいあってどの店もレベルが高いという。
運転手さん「鰻を食べるならオススメのエリアで一番近いんですが、一番近いと言っても浜名湖まで行くから、タクシーだと運賃が5000円~6000円かかっちゃう。料金的にはバスで行った方が良いと思いますけどどうしますか?」
私「連れて行ってください」
・同僚の話
すでに会話のグルーブは動きだしている。あと、ここでバスで1人で行ったら冒頭の状態に逆戻りだ。着いた先でどこに入ったらいいか分からなくなる。このタクシー代は情報料というわけだ。
運転手さん「その辺りで言うと『うな修』もウマイって同僚から聞いたなー。あ、『うな修』は14時までですね。今13時だから厳しいか」
私「そういう話、同僚としたりするんですね。やっぱり鰻屋は普段からよく行くんですか?」
運転手さん「いやー、実は店で食べる割合はそんなに多くないですね。やっぱり美味しいんで好きなんですが、最近は希少性で価格も高くなってね。高価すぎてなかなか手が出ないというのが実情です。
鰻が有名なんで、スーパーとかにも結構良い国産が売ってるので、それを買って食べるのが一番多いですね」
私「浜松と言えば、浜松餃子もありますよね」
運転手さん「浜松餃子もウマイと言えばウマイけど、あんまり食べないね。蒲田で餃子食べた時の方が美味しかった」
──かなり正直な名物に対する感想が聞けた気がする。運賃に比例して乗車時間も長いので、色んな話をしていることでだんだんと運転手さんも心を開いてくれたのかもしれない。
・運転手さんオススメの店まとめ
ゆえに、道すがら、今回は遠くて行けないけど、運転手さん的に良かったり浜松で噂を聞く鰻屋も教えてくれた。それが『清水家』『さくめ』『加茂』の3店舗。
運転手さん「電車なら『清水家』は気賀駅、『さくめ』は浜名湖佐久米駅、『加茂』は東都筑駅が近くにあって行きやすいから、機会があれば行ってみてください。ただし、遠方から来る人がいるくらいだから行列なんだけどね。オープン時間くらいに行くのをオススメします」
──というわけで、道中で話に上った店をまとめると、『志ぶき』『うな修』『清水家』『さくめ』『加茂』の5店舗。運賃をケチらなかったことが結果として付帯効果を生んだようである。そして、そんな話の末にタクシーがたどり着いた先が……
『松の家』だ。
・入店してみた
価格帯はうなぎ一尾の「鰻重定食」が税込4500円、鰻3分の2の「うな丼定食」が3500円。鰻丼以外にも、天然鱧(はも)の天ぷらと鰻蒲焼が合い盛りになった「鱧かばうな丼(4500円)」もあってメニューのバラエティーは豊富である。
とは言え、ここまで来て鰻重を食べないのはいかがなものかと思ったので注文したのは鰻重定食。最初はやっぱりこれでしょ。そんなわけで、運ばれて来た鰻重がこちら。
お重からはみ出すサイズ感が食欲を刺激する。食べてみたところ……
パリッとした皮とジューシーな身のコントラストがとても良い。噛むとジュワッと染み出す旨みが山椒のシビ辛で引き締められ、ご飯の甘みとよく合う。米も粒立ちが良くて美味しいなあ!
すぐに食べきるのが惜しいという気持ちをウマさの速度が追い抜いていく。体の前を突っ走るウマさに突き動かされて、一瞬で食べきってしまった。たどり着くのに苦労したこともあって、今日の私ができる限りのベストを出せた一杯であったと言えよう。食べ終わった後、なぜかアスリート的な満足感を覚えた。
・マジかよ
ただ、そんな味以上に衝撃を受けたことがある。それは『松の家』がある場所についてだ。良い鰻屋が多数集まっているというこの周辺は、どうやら観光地の模様。来る途中にも運転手さんが大規模な温泉地であることを教えてくれ、「浜松にそんなスポットが!」とへー度高めに聞いていたのだが、店の外に出てみると……
通りを歩いている人がマジでいなかった。確かに、遊園地やロープウェイもあって、この一帯にはディズニーランド的なアミューズメントオーラが漂っている。その上で、人に会ったらびっくりするレベルで人がいない。
おりしも夏。陽炎立ち上らんばかりの暑さと眩しさが白昼夢みたいで異世界オーラを倍増させる。『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』みたいだ。
おそらく、平日というのも関係しているだろうけど、逆にこの忘れられたような世界観が刺さる人もいるのではないかと思う。私のように。
・タクシーなしで行くなら
そんな場所の名前は『舘山寺温泉』だ。運転手さんいわく、「車を持ってなければバスかタクシーでしか行けない」とのこと。そこで帰りはバスで帰ったんだけど、浜松駅までの料金は660円。
浜松駅から舘山寺温泉のバスは1番乗り場から出ていて本数は1時間に1~2本だった。ただし、6時~22時まで途切れずにあるので乗り過ごしても最長で1時間待てば帰ることができる。
3日前に体験した異世界鰻屋放浪譚。本日7月19日は土用の丑の日なのでここに記す。興味がある人は行ってみてくれ。個人的には鰻だけでなく世界に興奮した。平日の舘山寺は熱い。夏だけに。
・今回紹介した店舗の情報
店名 うなぎ和食処 松の家
住所 静岡県浜松市中央区舘山寺町2306-4
営業時間 月・水・木・金・祝10:30~15:00、 / 土・日10:30~16:00
定休日 火曜日
執筆:中澤星児
Photo:Rocketnews24.