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サッカーのトラップ技術、次のプレーに移りやすい位置、体の向きで受けられるようになるにはどんな指導がいいか教えて

サカイク

サッカーの中でも大事な技術とされる「止める」。自分に来たボールをトラップして次のプレーにつなげるとても大事なスキルだから、頑張って習得してほしい。

中学年だからかまだ「次のプレー」のイメージが弱く、受ける前に何をすべきか、とか体の向きができてない。どんなふうに教えればいい? というご相談をいただきました。

ジェフユナイテッド市原・千葉の育成コーチや、京都サンガF.C.ホームタウンアカデミー

ダイレクターなどを歴任し、のべ60万人以上のあらゆる年代の子どもたちを指導してきた

池上正さんが、おすすめの方法を伝授します。

(構成・文 島沢優子)

 

(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません)

 

<お父さんコーチからの質問>

こんにちは、子どもの入団とともに父コーチになった者です。(担当はU-9、U-10)これまでも何人かの方が書いていましたが、自分がサッカーをするのと教えるのでは違うと日々実感しています。

相談したいのは、トラップについてです。次のプレーに移りやすい位置、体の向きで受けることがまだまだ出来ていません。

足元のコントロール技術はもちろん大事なのですが、次のプレーをイメージする力が弱く、そのための視野も狭いというか、何を見たら良いのか(何が見えていると良いのか)がわかってない気がします。

中学年におすすめのトレーニング方法はありますか?

 

<池上さんからのアドバイス>

ご相談ありがとうございます。

要約すると、「ボールの置きかた、置きどころについて、どのようなトレーニングが効果的か?」という質問ですね。

これについて、先日とても良い説明を聞きました。小中学生を対象としたサッカースクールと指導者の養成活動を行っている上田原剛さん(蹴和サッカースクール代表)がなさっていた方法です。

 

■「ボールの見方」に気づかせる方法

ボールだけがうつっている写真と、ボールの後ろ、つまり背景までうつっているものの2枚を同時に見せます。そこで子どもたちに背景がうつっていない写真を指差して「みんなはこっちのボールだけ見ちゃってない? 周りが見えてないよね」と言います。

次に背景もうつっている写真を指して「ボールをこんなふうに見てごらん」と言います。後ろの様子も見られるようなボールの見方です。そうすると、子どもたちは、ハッと気づくそうです。ああ、そういうふうに見るのか。そう考えてくれます。

 

■オランダでは1970年代からボールの周りを見るトレーニングがあった

そもそも何を見るか、あるいはいつ見るかといったことを理解し、その習慣をつけるようなトレーニングが日本には少ないようです。

オランダでは1970年代ぐらいのトレーニングに、ボール以外にそのまわりも見えるようにするものがありました。

例えば、ドリブルしながら周りを見る低学年用のトレーニングがあります。前にスペースがあって、そこにボールを運んでいくのですが、少しスペースがあるからボールを大きく前に出して、そのときに次にボールをさわるまでの間に周りを見る。そんなトレーニングです。

コーチが出している指が2本だったか、4本だったか、といったことに答えながらドリブルをします。顔を上げていないと見えません。

 

■日本ではまだ抽象的な人も多い、「何を見るのか」具体的に言ってあげよう

日本では「顔を上げろ」「周りを見ろ」と抽象的に言うだけで、具体的な指導が少ないようです。指導者の多くが「顔を上げろ」「周りを見ろ」と命じることしかやっていないようです。指導が抽象的です。

顔をあげなさいと言うけれど、じゃあ何を見るのか。あるいは首を振れとまだ言う人もいますが、具体的に言ってあげられるような指導に変えなければいけません。

ご相談者様が書いておられるように、次のプレーをイメージするためには、視野が狭いとそんなことはできません。そのことを、きちんと伝えてください。

 

■例えば鳥かごでは「2タッチ以内」に制限することで、徐々に置き所がわかってくる

それは言葉で説明するのと同時に、上述したようにそれができるようになる練習をつくればよいのです。

「他の選手や、相手守備の選手の位置や姿をちゃんと見て、もらったボールをどこにコントロールするか判断しよう」

それができるようになるためのトレーニングにします。

まず、低学年でも中学年であっても、ひとりでのトレーニングはやらないようにしてください。例えば3対1の鳥かごでも、視野を広くすることはできます。まわりを見ていないとボールを取られてしまいます。ボールがどこから来て、味方がどこにサポートに来てくれているか。そこを意識して見るよう促します。

それには、自分が視野を取りやすい場所にボールをコントロールすればいいわけです。そういったコントロールに特化するとしたら、例えば鳥かご籠で「オンリー・ツータッチ」にします。絶対にツータッチでパスをしないといけない。そんなルールにします。

そうすると、1回目にコントロールする場所を間違えてしまうと、ボールを取られてしまいます。よって、そのような制限でやっていると、徐々にボールの置きどころがわかってくるはずです。

 

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■ファーストタッチをいかに有効的にするか

(写真は少年サッカーのイメージです。ご相談者様、ご相談内容とは関係ありません

 

次に自分がプレーしやすい場所にボールを置くことができる。それはつまりファーストタッチをいかに有効的なものにするかがポイントになります。コーチたちがよく言う「ボールの置きどころ」というものです。

私がB級のライセンスを取得したときのこと。私のグループにたまたまですが、Jリーグでプレーしていた元選手が多くいました。よって、皆さんボールの扱いがうまいわけです。

そこで、デモンストレーションをしていたコーチ役の私が「じゃあ皆さん、オンリー・ツータッチに変えます」と言った瞬間、ミスが結構出ました。そこで「今、どうしてミスしましたか?」と尋ねると、間違いなく皆さん「1回目のタッチをコントロールする方向を間違ったからです」という答えが返ってきました。

「そうですよね。では、1回目のタッチにみんな気をつけてやってみましょう」

そう言ってトレーニングをしたことがあります。

そのようにタッチの制限をすることでコントロールの仕方が変わってくるので、ぜひやってみてください。

もちろんタッチ数は変えてもいい。選手の習熟度や状況によってオーガナイズしてください。以前から伝えていますが、そのように状況によって制限を与えたり、解いていくオーガナイズの「塩梅」が、指導者のひとつの能力です。

 

池上 正(いけがみ・ただし)

「NPO法人I.K.O市原アカデミー」代表。大阪体育大学卒業後、大阪YMCAでサッカーを中心に幼児や小学生を指導。2002年、ジェフユナイテッド市原・千葉に育成普及部コーチとして加入。幼稚園、小学校などを巡回指導する「サッカーおとどけ隊」隊長として、千葉市・市原市を中心に年間190か所で延べ40万人の子どもたちを指導した。12年より16年シーズンまで、京都サンガF.C.で育成・普及部部長などを歴任。京都府内でも出前授業「つながり隊」を行い10万人を指導。ベストセラー『サッカーで子どもがぐんぐん伸びる11の魔法』(小学館)、『サッカーで子どもの力をひきだす池上さんのことば辞典』(監修/カンゼン)、『伸ばしたいなら離れなさい サッカーで考える子どもに育てる11の魔法』など多くの著書がある。

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