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【2022年春夏パリコレクション総論】パンデミックからの解放で溢れんばかりの高揚感が横溢

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コロナ感染拡大の収束が感じられた9月27日から10月5日にかけて行われた2022年春夏パリコレクションは、ミラノで登場した安らぎと悦びのムードに祝祭気分が加わって最高潮へと達した。これぞ “ファッションの都”、“モードの祭典”と言わんばかりの刺激的なコレクションが目白押しだった。

ビッグメゾンはフィジカルでの発表を同時にSNSで公開するスタイルが定着。パリで発表していた日本勢はそのほとんどがデジタルでの発表になったが、「ヨウジ ヤマモト(Yohji Yamamoto)」は先シーズンに続き現地でコレクションを発表し、フィジカルで発表することへのこだわりを貫いた。一方「コム デ ギャルソン(COMME des GARÇONS)」は東京本社でフロアショーを開催し、迫力の造形美を発信した。

今シーズンのトピックス
なんと言ってもパリコレラストを飾った「AZ ファクトリー(AZ Facotry)」だろう。故アルベール・エルバス(Alber Elbaz)によって先シーズン立ち上がったばかりのブランドだ。しかし残念ながら今年4月、コロナ感染によってエルバスが逝去したため、ファッションに絶え間ない愛情を注いできた彼を偲ぶデザイナーたちによって追悼ショーが開催された。45のブランドが参加し、思い思いのエルバスへの愛を渾身の一着に込めた。パリからはディオールやサンローラン、バレンシアガ、エルメス、ランバン他、ミラノからはジョルジオ・アルマーニ、グッチ、ボッテガ・ヴェネタ、ヴェルサーチェなど、日本からはコム デ ギャルソン、サカイ、トモ コイズミらが参加。彼の特徴的なラッフルやドレープ、ワンショルダーなどを取り入れたデザインもあれば、イラストや顔写真、ハートのモチーフを取り入れたものまで一つ一つにエルバスの仕事や人柄が投影されていた。ファッション業界の中でも愛され、慕われていた類まれな存在だったことを伺わせる。同ブランドのチームによる新作も発表され、ラストはスーパーモデルのアンバー・バレッタがエルバス風のタキシード姿とポーズで会釈。観客の涙を誘いながらもハートの紙吹雪が舞うハッピーなエンディングで幕を閉じた。かつて手掛けた「ランバン(Lanvin)」で2000年代のエレガンスを構築し、再起となった「AZ ファクトリー」では体型を選ばず全ての女性を悦ばせる服を目指していたエルバスの功績は大きい。彼のチャーミングな姿にもう会えないと思うと残念だ。

ベスト1 「ルイ・ヴィトン(Louis Vuitton)」
今シーズンは素晴らしい出来栄えのコレクションが多く、絞ることが困難だった。しかしパリコレ全体から伝わるクチュールばりのクオリティと華やぎや賑わいという観点で見た時、「ルイ・ヴィトン」のクリエイションが真っ先に浮かんだ。ファッション史に残る中世のヒストリカルなルックやきめ細やかな装飾は、当時のスタイルに囚われる事なくワークウエアやデニムなどと調和し、知的かつ生き生きと現代的に描かれていた。クチュールの技術を駆使しつつデイウエアとイブニングウエアの折衷のバランスを探った作品群は圧巻だった。

ベスト2  「ロエベ(Loewe)」
「ロエベ」は一見シンプルだが所々に不思議な違和感を差し込んできた。クリノリンのような突起した骨組みのドレスや、歪んだメタルプレートがボディにはめ込まれたドレスなど、不自然な立体感をもたらした。が、その違和感は拒絶反応を示すどころか、有機的な美しさとなって調和していた。リアリティには遠いけれど、何かが芽吹く瞬間のような新鮮さがコレクションを一段階引き上げたように感じた。

ベスト3  「ラフ・シモンズ(Raf Simons)」
「ラフ・シモンズ」は完全なるジェンダーレスの提案。レディスのスカートやドレス、オーバーサイズのメンズライクなジャケットを男女のモデルが同じテンションで着用した。女性が着ても男性からの借り物に感じない、加えて男性がここまで女性的な服を着て違和感が無かったことがかつてあっただろうか。提案としては決して斬新ではないが、日常を難なく溶け込ませ、涼しげな表情で調和させたことに拍手を送りたい。

パリ全体の流れとしてはパンデミックから解き放たれて、溢れんばかりの高揚感が華やかさや開放的なムードとなって戻ってきた。凝りに凝った舞台演出で60年代の軽快なルックを現代に蘇らせた「ディオール(Dior)」や、映画祭でのセレブリティらのフォトコールさながらに、レッドカーペットがショーの一部だった「バレンシアガ(Balenciaga)」、80年代のエキサイティングなファッションショーを再現した「シャネル(Chanel)」、エッフェル塔を眺める壮大なランウェイを設えた「サンローラン(Saint Laurent)」など、非日常や華やかだった時代を切り取ることがクリエイションの原動力となったようだ。画面越しでも見ていてワクワクするコレクションが目白押しだった。また、デジタルでの発表ではこの秋のトレンド、ビッグカラーの立役者でもあるギョーム・アンリ(Guillaume Henry)による「パトゥ(Patou)」のロマンティックなさじ加減や、「イッセイ ミヤケ(Issey Miyake)」の水の中で漂うような美しい生地のありさま、「ドリス ヴァン ノッテン(Dries Van Noten)」の格別なセンスでまとめあげる鮮やかな色柄の美しさも印象に残った。

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