宮城県の海で「アイゴ」が急増中 将来的に磯焼けのリスク高まる
近年問題視されている磯焼けの原因は、水温変化や、魚・ウニなどによる摂食圧と考えられています。磯焼けの原因とされる魚の1種であるアイゴ科の魚は岩礁に生息する魚で、主に南方に広く分布しています。しかし最近、本種が北日本でも多く見られるようになったそうです。
(アイキャッチ画像提供:PhotoAC)
アイゴとは
アイゴはスズキ目ニザダイ亜目アイゴ科に属する魚で、アイゴ科はアイゴ属のみからなります。2024年5月現在、日本のアイゴ科は12種が知られており、いずれの種も南方を中心に生息する魚たちです。
アイゴ属はすべての種で鰭条数が同じであり、いずれも背鰭13棘10軟条、臀鰭7棘9軟条、腹鰭1棘3軟条1棘です。特に腹鰭の鰭条は軟条は棘条で挟まれているという特異な形質を持ちます。おそらくこのような腹鰭を持つのはアイゴ科のみではないでしょうか。
さらにこれらの棘条には毒があり、刺されてしまうと酷く痛むといいます。
アイゴは本科の中でも日本各地から記録がある普通種。本種は独特な臭いを持つことから別名「バリ(イバリ=尿)」とも呼ばれている他、価値のない魚を意味する「ネコマタギ」、腸が渦巻き状であることから「ゼンマイ」とも呼ばれています。
北日本で増加中
有毒魚であることから釣り人から恐れられている他、本種は磯焼けの原因ともされています。
宮城県の定置網では3年前からアイゴが入りだし、2023年は330kgだったものの今年は15日だけで594kgものアイゴが漁獲されたそうです(khb東日本放送-暖かい海に生息 海の厄介者アイゴ 宮城・気仙沼魚市場に大漁水揚げ 懸念が広がる)。
現在、宮城県におけるアイゴによる磯焼けの被害は報告されていませんが、2021年10~12月に網地島周辺海域の定置網で漁獲されたアイゴの胃内容物が調査されました。その結果、藻類が大部分を占めており、次いで甲殻類、魚類消化物という結果だったそうです(宮城県におけるアイゴの来遊について)。
このことから、アイゴが増加すれば宮城県でもアイゴによる食害が起こる恐れがあるとされています。また、本種は有毒であることから、漁業関係者のみならず遊漁者も注意する必要があるでしょう。
アイゴは食用魚
厄介者として扱われることの多いアイゴですが、味の良い魚として有名で東南アジアではごく普通に食べられています。
日本の一部地域でも食用となり、特に沖縄のまーす煮に欠かせないカーエー(ゴマアイゴ)やアイゴの幼魚を使ったスクガラスは有名ではないでしょうか。
フィリピンのセブ島では魚介類の干物の製造が盛んであり、アイゴ科の魚を天日干しした「ダンギット」はお土産としても売られています。フィリピンでは魚の干物は油で揚げて食べる習慣があり、ダンギットも例外ではありません。油で揚げたダンギットはご飯とよく合い、朝ごはんに最適だそうです。
毒魚として敬遠されるだけでなく磯焼けの原因ともされるアイゴですが実は美味しい魚なのでした。磯焼けの原因を究明しつつ、アイゴが有効活用されることを祈るばかりです。
(サカナト編集部)