羽田空港隣接地で「レベル4」の自動運転スタート 目指すは公共交通の地域インフラ化(東京都大田区)
羽田空港に隣接する、東京都大田区の複合施設「HANEDA INNOVATION CITY(羽田イノベーションシティ、略称・HICity=エイチアイシティ)」に、運転手が乗務しない完全無人運転バスが2024年7月18日に登場、現地で出発式が開かれた。
完全無人運転は、自動運転の区分では「レベル4」。中心になるのは、ソフトバンク子会社でドライバレス技術開発に取り組むBOLDLY(ボードリー)。同社によると、レベル4による自動運転は2023年5月に自治体主導で始まった福井県永平寺町がトップだが、民間レベルでは今回が全国初という。
ボードリーや施設を運営する羽田未来開発は、2020年7月のエイチアイシティのオープン以降、実証実験の形で実績を重ねてきた。今回は東京都公安委員会から特定自動運行許可、東京空港警察署から道路使用許可をそれぞれ取得、正式な形での運行が始まった。
レベル4のバスが走るのは施設内約800メートルのコース。約7分間でルートを1周する。バスは11人乗りで最高時速12キロ。乗客がディスプレーに表示された行き先を選び、ボタンを押すと発車する仕組みだ。
レベル4はドライバーが乗車する必要はないが、当面は事故発生時の対応に備えてスタッフ1人が同乗する。
ボードリーは、今回のレベル4運転にあわせて自動運転に対する考え方を公表した。目的は「移動の社会課題解決」、「日本の公共交通の成長・基幹産業化」の2点。現在、ドライバー不足で多くの路線バスが減便・廃止に追い込まれるが、自動運転なら地域の移動を維持できる。
無人運転は必ずしも目的でなく、観光地ならガイド、住宅なら自治体の嘱託職員などを添乗させることで、地域の生活サービス向上につながる。
ボードリーはレベル4運転にあたり、安全性能を一段と向上。救急車など緊急車両のサイレン音検知時に自動停車指示を出すシステムを開発・搭載した。
また、道路上の障害物を見分けるセンサーを2台追加して合計10台で検知。自動運転中であることを周囲のクルマや歩行者に伝えるディスプレイを追加した。
ボードリーの星野達哉市場創生部部長は、「自動運転バスはレールのない線路上を走る列車のようなもの」と本サイトへのメッセージを語った。
記事:上里夏生