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藤岡正明「今上演することの意味を強く見い出したい」ミュージカル『いつか~one fine day』オンライン制作発表会レポート

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ミュージカル『いつか~one fine day』製作発表

2021年6月、東京・CBGKシブゲキ!! で待望の再演を迎えるミュージカル『いつか~one fine day』のオンライン制作発表会が、2021年4月15日(木)朝に都内にて開催された。

本作は韓国のイ・ユンギ監督が手掛けた映画『One Day』(2017年)を基に、板垣恭一(脚本・作詞・演出)と桑原まこ(作曲・音楽監督)がミュージカル化。2019年に日本で初演され、2019年読売演劇大賞上半期スタッフ部門(音楽)にノミネートされた話題作だ。2020年11月には、初演キャストによるコンサート版の上演と配信も行われている。

【あらすじ】
保険調査員のテル(藤岡正明)は後輩・タマキ(大薮丘)の担当だった仕事を引き継ぐよう新任の上司・クサナギ(藤重政孝)から命じられる。それは交通事故で植物状態の女性・エミ(皆本麻帆)の事故の原因を調べるというもの。しかし、エミの代理人・マドカ(松原凜子)と友人・トモヒコ(西川大貴)は調査に非協力的で敵対。仕事が進まないなか、病死した妻・マキ(浜崎香帆)のことをまだ整理できずにいるテルに声をかけてきたのは、意識がないはずのエミだった。俄かには信じがたいと思いながらも自分にしか見えないエミと交流を重ねるうちに、事故の陰に幼い頃にエミを捨てた消息不明の母親・サオリ(土居裕子)の存在が浮かび上がってくる。

会見の場に姿を現したのは、プロデューサーの宋元燮、演出家の板垣恭一、そして初演から続投の藤岡正明、皆本麻帆と、再演からの参加となる松原凜子、⻄川大貴、大薮丘、浜崎香帆、土居裕子ら総勢9名だ。(※キャストの一人、藤重政孝のみ映像出演)

制作発表は宋の司会によって進行された。2年ぶりに再演を迎えるにあたっての気持ちを問われた板垣は、改めて台本を読み返して一部を書き換えたこと、そして一つ新曲を追加したことを明かした。変更箇所の例として「西川大貴くんが演じる役を、ちょっと知的なキャラクターにしたい。前回公演の人はハートが熱いタイプだったけど、大貴くんはクールなところがあるなと思ったので」と語り、ストーリー自体は変えないものの、作品の雰囲気に変化をつけていくようだ。

(左から)演出家 板垣恭一、プロデューサー 宋元燮

続いて、キャスト一人ずつの自己紹介と役柄の説明が行われた。ちなみにこの日の服装は「休日の私」というお題が出ており、それぞれが考える自身の役の休日をイメージしているそうだ(写真のキャプション内で、衣装についてのコメントを記載している)。

テル役の藤岡は「様々な傷を抱える登場人物の中で、ある種その部分を拾っていくような役割でもあるかなと思っています。ビビッドに反応していい作品にしていきたいです」と二度目の出演への意気込みを見せた。

衣装テーマ:私の休日 藤岡「当たり障りのない感じで作ってきました」

同じく二度目の出演となるエミ役の皆本は「このあいだ、大貴と凜ちゃん(松原凜子)と会った日に3人でメロンパンを買って帰ったので、この公演はうまくいきます!」と高らかに宣言。

衣装テーマ:私の休日 皆本「作品では事故で昏睡状態のエミですが、そうなる前に親友のトモヒコと遊んでいるときのイメージです」

それに対しトモヒコ役の西川は「エミちゃんのソウルメイトです。アーティストで音楽をやっている役柄」と紹介し、「どちらにしても、メロンパンを食べたので絶対にうまくいくと思います」と皆本のメロンパンネタに乗っかった。

衣装テーマ:私の休日 西川「PV撮影時は柄シャツだったので、あえてシンプルなシャツにしてみました」

エミの代理人となるマドカ役の松原は「示談を持ちかけようとする人たちと断固戦う姿勢を貫く、強いお姉ちゃん的存在」と自身の役を分析。

衣装テーマ:私の休日 松原「カチッとした仕事中とは対象的におしゃれを取り入れてみました。ちょっと映画でも行こうかしらというイメージです」

続いてサオリ役の土居は「エミの母親役ですが、かなりワケアリで娘とは離れて暮らしています。エミの他に小学生の子どももいるというシチュエーションです」と、その複雑なキャラクターの設定に触れた。

衣装テーマ:休日の私 土居「小学生の子を持つ母の役なので、サッと自転車に乗れるようにデニムとブラウスにしてみました」

テルの病死した妻マキを演じる浜崎は「生前すごくテルのことを愛していて、彼と一緒にいることがすごく楽しかったんだろうなと感じました。美しいものやその瞬間を大事にする方だと思うので、舞台上でも一瞬一瞬を大事に演じたいと思います」とこれから演じる役のイメージを膨らませた。

衣装テーマ:休日の私 浜崎「夫のテルと公園デートをするようなイメージできました」

テルの会社の後輩のタマキ役の大薮は「タマキはすごく流されて生きている子で、でも自分の中にやりたいこともある。今の若者にフィットしているイメージを持ちました。自分の個性を出していけたら」と意気込んだ。

衣装テーマ:休日の私 「自分が全力でオシャレしましたっていう感じです!」

「2019年の初演を劇場で観たことがある人?」と問われると、西川、松原、土居の3人の手が挙がった。西川は初演について「繊細なものを扱っているお話だと思うのですが、自然と音楽がそこにある意味が感じられる構成でした。セリフと音楽の違和感がなく一緒になっていて、衝撃的なくらい素敵だなという印象を受けました」と感想を述べると、松原も「私も、音楽とセリフとの融合性がすごく感じられて衝撃的でした。日本のミュージカルってこういうことか、と」。日本のミュージカル劇団である音楽座で活躍してきた土居は「随分と日本のミュージカルの音楽も変わったなあと思ったのが第一印象。PVも観て、こんな風に日本のオリジナルミュージカルを打ち出していくとニュアンスも新しくて素敵だなと思いました」と率直な初演時の感想を語った。

オンライン制作発表会の直後には、報道関係者向けに質疑応答の時間が設けられた。一部抜粋してお届けする。

ーー再演版では藤岡さんと皆本さん以外のキャストは一新されました。キャスティングはどのように決められたのでしょうか?

板垣:キャスティングは宋さんにお任せしました。

:再演にあたって、雰囲気を変えたいという想いがありました。一段回大人っぽい作品にできたらなと。オファーをする際に、主演二人はそのままに、他の方の経験値や年齢を上げることで大人っぽくなれないかなあと考えました。実は、一番最初に土居さんにお声掛けさせていただいたんです。僕は最初の一人を決めて、その方が決まったかどうかで他のキャストを考えていくというキャスティングの仕方をします。そうして全体のバランスを見ていくという決め方なので、土居さんに「NO」と言われた場合は、この座組が全部変わっていたかもしれません。

藤岡:うお〜怖い話じゃん!

板垣:僕は途中経過を聞きながら、ワクワクしていました。

ーー再演から参加のキャストのみなさまが、本作への出演を決めた理由を一言ずつお聞かせください。

大薮:僕は『いつか~one fine day』の配信を観て本当に心から素敵だなあと。「これってミュージカル?」と思ったくらいナチュラルで素敵な作品だと思いました。本格的なミュージカルはこれがほぼ初めて。今回チャンスをいただけてありがたいですし、このチャンスをしっかり活かせたらいいなと思っています。とにかくすごいキャストのみなさんなので、食らいついて頑張っていきます!

大薮丘

松原:私は初演を拝見しているので、お話をいただいた瞬間に「やりたいです!」と。板垣さんとはコンサートとワークショップでご一緒したことがあるのですが、作品で板垣さんの演出を受けてみたいという想いが実はずっとありました。作品の良さと、板さんへの想いが重なって即答という感じでした。

松原凜子

西川:日本のミュージカルが本当に必要だなととても思うんですよ。だからこそ、あえて日本人ということをやろうとし過ぎてギクシャクしてしまったり、個人的に違和感を感じてしまったりする瞬間がある作品も少なくない。そんな中で、この作品は繊細なテーマなのに違和感もなく「ミュージカルなのか? いやミュージカルなんだ」という思考がいったりきたりしながら観終えた印象があります。そういう作品に出演できる機会があると聞いたので、0.1秒くらいでやりたいと思いました。

西川大貴

浜崎:スタッフさんから「すごく素敵な作品だからぜひ」と。映像を観たときに本当に心を打たれて、こんなに素晴らしい作品に出演させていただけるなんて光栄だなと思いました。私はグループ活動をメインにしてきたので、これから一俳優としてもっともっとステップアップしていくために、歌もお芝居も全てが素晴らしいキャストのみなさんの背中を見て成長していけたらなと思っております。

浜崎香帆

土居:日本のオリジナルミュージカルを私たちがやってきたのはもう何十年も前ですが、いいものをやってきたなという自負はあります。けれど途中で途絶えてしまい、私も自分で劇団などを立ち上げる勇気もなく、ズルズルとここまで来ちゃったんです。「日本で大切に手作りしている作品で、何か私が参加できるものがあったら参加しよう」という想いはいつもずっと心の中にあったので、迷わずOKしました。

土居裕子

ーー既に初演や配信をご覧になったお客様もいらっしゃると思います。そういった方々に向けて、一言メッセージをお願いします。

皆本:キャストもガラッと変わりましたので、雰囲気も全然変わるんじゃないかなと。一から新しいものをという気持ちで、みなさんと一緒にもう一度作品にぶつかっていけたらなと思っております。そして、劇場もシアタートラムからCBGKシブゲキ!!に変わりますので、何度も言いますが全然違うものになると思うんですよね。板さんがあの劇場をこれからどう変身させていくのか、私もこれから楽しみです。

皆本麻帆

藤岡:僕が以前ご一緒したフィリップ・ブリーンというイギリスの演出家の言葉を引用すると、その作品をやるにあたって「この時代にやる意味」と「この場所でやる意味」、この二つは大事なこととして明確にあると。「そこに意味が見い出せないのであれば、その作品をやるべきではない」と彼は話していました。2019年に上演したとき、板垣さんがずっと「この社会においての生き辛さというものを表現したい。それをエンタメに乗せたい」と話していて、「社会派エンターテインメント」という言葉をよく使っていました。初演のときとは違った意味合いで、2021年の本作が試される公演になると思います。僕自身も一俳優として、今この2021年の東京のCBGKシブゲキ!!で上演することの意味を強く強く見い出し、みなさんに全く新しい『いつか~one fine day』を届ける使命があると自覚しています。

藤岡正明

『いつか~one fine day』は、2021年6月9日(水)〜6月20日(日)まで東京・CBGKシブゲキ!!にて上演される。

会見の中では、前日に作品のPV撮影が行われたという話もあった。初演時に作成されたPVに加えて、近日中に新たな動画が無料公開される予定だ。今後の発表も楽しみに待ちたい。

取材・文・写真=松村 蘭(らんねえ)

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