『ハチビキ』は別名「赤サバ」と呼ばれるもサバ科にあらず 身の見た目はまるでマグロ
魚の別名は時に複雑で、異なる分類群の名前が使われることもしばしばあります。例えばハチビキはサバ科に属さないものの「赤サバ」とも呼ばれており、かつては価値が低かったものの徐々に評価が上がっている魚です。この記事ではハチビキについてご紹介します。
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ハチビキの特徴と分布
ハチビキはスズキ目ハチビキ科に属する海水魚。赤い体と青物を彷彿とさせる体型が特徴で、英語圏では Ruby fish とも。本種は日本に広く分布しますが、南方を中心とした水深100~350mの岩礁に生息し、釣りや定置網で漁獲されます。
日本で見られるハチビキ科の種類と流通状況
日本産のハチビキ科は2024年5月現在、ハチビキ、ハワイチビキ、ロウソクチビキ、トゲナシチビキ、ヒチビキの5種が知られており、いずれも深場に生息する種です。このうちハチビキ、ハワイチビキ、ロウソクチビキは食用として流通しますが、ハチビキ以外は漁獲量が少なく一般的ではありません。
なお、ハチビキはカマにある突起の数から他のハチビキ科と区別することができます。
ハチビキの名の由来は?
ハチビキのチビキは漢字で「血引き」と書きますが、これは身が血を引いたように赤いことが由来とされています。
チビキと付く魚はハチビキ科の魚以外に、フエダイ科のアオチビキやシマチビキが知られているものの、筋肉が顕著に赤い魚はハチビキくらいでしょう。また、筋肉の色合いから「赤サバ」とも呼ばれており、地域によってはこちらの方が通りが良いこともあります。実際、魚屋や居酒屋でも赤サバと表記されることが多くハチビキの名を知らない人も少なくありません。
本種は沖縄や小笠原諸島で盛んなハマダイ釣りなどで漁獲される魚で、沖縄では「チョウチンマチ」とも呼ばれます。価格はマチ類と比較すると安いものの大型個体は高値で取り引きされるようです。
ハチビキは赤身魚か白身魚か?
ハチビキの大きな特徴が筋肉の色がマグロのように赤いことです。ハチビキ科の中でもハチビキの筋肉は群を抜いて赤みが強く、初見だとマグロと間違えてもおかしくありません。
通常、赤身魚と白身魚の違いはミオグロビンの含有量で区別されており、100gあたり10mg以上のミオグロビンを含む魚が赤身魚とされています(1976,鈴木 たね子,赤身の魚と白身の魚.)。
サケの身が赤いにもかかわらず白身魚に分類される話は有名ですが、これはサケの筋肉の赤身はミオグロビン由来のものではなくアスタキサンチンによるものだからです。
ハチビキは身が赤いものの白身魚のような食味であることから白身魚をとして扱われています。しかし、ハチビキのミオグロビン分析を行った結果、カツオとほぼ同量のミオグロビンが含有されていることも判明しています(東京都島しょ農林水産総合センター 漁業資源の分散利用促進のための研究(平成28~31年度)。
ハチビキの現在の市場価値と流通状況
ハチビキはかつて安値だった魚ですが、高値で取引されるようになったことで関東でもしばしば見られる魚になってきました。今では扱っているお店もあるので、見かけた際には食べてみてはいかがでしょうか。
(サカナト編集部)