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バスと電車と足で行くひろしま山日記 第75回 湯来冠山(広島市佐伯区)

ひろしまリード

前回の葉田竜王山・筆影山編(https://hread.home-tv.co.jp/post-361797/)で、同名の山に地名を被せて区別している例をいくつか紹介した。その一つ、湯来冠山(1004メートル)は広島市域の1000メートル級の山では大峯山(1050メートル)(https://hread.home-tv.co.jp/post-170137/)に比べて地味な存在だが、登山口と山頂の標高差は約700メートルもあり、なかなか登りがいのある山だ。下山後にはバス停の前にある国民宿舎湯来ロッジの温泉で汗を流せるのも魅力だ。春本番、ソメイヨシノは満開。太田川沿いや平和公園など花見客でにぎわう桜の名所に背を向けて湯来温泉に向かった。

スタート地点の湯来ロッジ

▼今回利用した交通機関 *時刻は休日ダイヤ
行き)JR山陽線(おとな片道200円)/横川(08:35)→(08:46)五日市
広電バス湯来線(おとな片道1000円)五日市駅南口(09:00)→(10:16)湯来ロッジ前
帰り)広電バス湯来線/湯来ロッジ前(15:10)→(16:30)五日市駅南口*混雑で延着
JR山陽線/五日市(16:44)→(16:55)横川

なじみのバス路線で湯来温泉へ

湯来冠山へはコラムのタイトル通り「電車とバスと足で行く」ことになる。広電バスの湯来線はこれまでにも第2、3回の東郷山(https://hread.home-tv.co.jp/post-93963/ https://hread.home-tv.co.jp/post-98927/)や第10回の窓ヶ山(https://hread.home-tv.co.jp/post-119738/)の山行でも利用したなじみのある路線だ。

五日市の市街地から八幡川沿いを北上し、魚切ダム、杉並台団地を経て水内(みのち)川を渡るとバスは信号を左へ。右に行くと広島藩主浅野氏の湯治場だったという湯の山温泉がある。ほどなく終点の湯来ロッジ前バス停に着いた。ロッジ周辺の桜も満開で、気分良くスタートできた。

登山口までは旧道を1キロ余り歩く。途中、湯来西小学校のグラウンド横に立つ風格のある桜の木が目を引いた。「湯来冠山」の標識と案内板のある分岐を右に折れ、沢沿いを10分ほど歩くと登山口だ。

湯来冠山へ向かう。ピークは手前の山に隠れている

湯来西小学校のグラウンドに立っていた風格のある桜

登山口の案内看板

整備された登山道と集落跡

それほど名を知られていない山だが、登山道は驚くほど整備されている。地元の人たちが整えてくれているのだろうか。沢を渡り、しばらく上ると道沿いに古びた石垣が現れる。集落の跡だ。家屋は残っていなかったが、小さな祠があった。広島市に合併する前の旧湯来町教育委員会が編纂した小学生向けの社会科資料集「わたしたちの町湯来町」に掲載されていた古地図によると、このあたりは「クス谷」といい、「河内」という集落が記されている。いつごろまで人の営みがあったのだろうか。

集落跡を過ぎてからはひたすら暗い針葉樹林の中の上りが続く。何度か沢を横切る場所があるのだが、必ずピンクのリボンが結び付けられていて迷うことはないのはありがたい。ひたすら上り続けること約50分、標高750メートルの稜線に出た。

上り始めてすぐに沢を渡る

よく整備された登山道

集落跡の苔むした石垣

小さな祠が残っていた

タムシバかコブシか白い花

稜線の道は打って変わって明るい。樹林の向こうにたくさんの白い花をつけた木が見えた。この季節に咲くのはモクレン科のタムシバかコブシだろうか。近寄って確認してみたかったが、かなり薮の中に分け入らなければならないのでやめておいた。登山道には、風に運ばれたのか花びらが落ちていた。

標高940メートル付近まで上ると、麓の集落が見える展望地があった。湯来温泉から安芸太田町に通じる県道沿いにある打尾谷集落だ。ほとんど樹林の中を通る登山ルートの中では数少ない眺望ポイントだ。

頂上直下まで来ると、ササに覆われた急斜面が現れる。枯れ葉が地面を覆っていて滑りやすいので、ロープをつかみながら慎重に歩を進める。登山開始から1時間40分、疎林に囲まれた湯来冠山の頂上に着いた。

稜線の道は明るい

タムシバかコブシか

花びらが落ちていた

打尾谷集落の展望地。ルート上には眺望を楽しめる場所は少ない

ロープを頼りに最後の急登を行く

山頂に到着

本家?冠山を遠望

山頂はコンパクトな広場だ。西側の眺望が開けており、県内では最も有名で人気のある冠山(本家?)の吉和冠山(https://hread.home-tv.co.jp/post-112701/)が望める。手前にはもみのき森林公園のある小室井山(1072メートル)がたおやかな姿で横たわっている。

ちょうどお昼時。コンロでお湯を沸かし、カップラーメンを作る。福岡に住んでいた時によく行った「博多純情らーめんShinShin」の豚骨ラーメンを再現したという製品だ。いつもながら山で食べるラーメンはうまい。ドリップコーヒーとおやつのチョコレートもいただいて満足の昼食だった。

コンパクトな山頂広場

吉和冠山(正面左)と小室井山(手前)

山で食べるカップラーメンはおいしい

咲き残っていたセリバオウレン

今回の山行で「もしかしたら」と期待していたのは、セリバオウレンの花を見ることだった。キンポウゲ科の多年草で、春に白い小さな花をつける。登山アプリYAMAPユーザーの活動日誌を見ると、盛んに咲いていたのは2~3週間前だったようだ。自生地は登山口からすぐのあたりだったらしいのだが、上りの時は見逃してしまった。下りは慎重に観察しながら歩いたが、なかなか見つからない。あきらめかけていたら、集落跡を過ぎたあたりにわずかに咲き残っていたセリバオウレンを見つけた。翌週なら完全に終わっていたことだろう。満足して下山した。

わずかに咲き残っていたセリバオウレン

温泉でお花見

下山後はもちろん温泉だ。湯来ロッジで入湯料750円を払って入浴する。浴室内にスマホは持ち込めないのでお見せできないのが残念だが、水内川に面した大浴場の窓からは満開のソメイヨシノを望むことができた。ここで花見ができるとは思わなかった。泉質は単純弱放射能温泉。加温はされているが、源泉をそのまま使っているそうだ。筋肉痛、関節痛にも効能があるという湯につかり、疲れを癒して帰途についた。

湯来ロッジの浴場(2階左の窓)から見える満開のソメイヨシノ

2024.4.6(土)取材 《掲載されている情報は取材当時の内容です。ご了承ください》

ライター えむ
50代後半になってから本格的に山登りを始めて5年ほど、中四国の低山を中心に日帰りの山歩きを楽しんでいます。できるだけ公共交通機関を利用しますが、やむを得ない場合に時々レンタカーを使うことも。安全のためトレッキングポールは必ず携行。年齢のわりに歩くのは速い方です。
■連載コラム「バスと電車と足で行くひろしま山日記」

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