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原田マハのおすすめ小説5選。アート小説の第一人者の名作を読もう

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アート小説とは、実在の画家やアート作品を題材にして、史実にフィクションを織り交ぜて描かれたジャンルのことです。 たとえば、ルーブル美術館を舞台にしたミステリー『ダ・ヴィンチ・コード』(著:ダン・ブラウン)などは、ベストセラーの名作として知られています。また、サマセット・モーム(1874-1965)による名作文学『月と六ペンス』は、ポール・ゴーギャン(1848-1903)をモデルに書かれた作品です。 これら海外文学だけではなく、日本の文学作品にも多くの優れたアート小説があることをご存じでしょうか。 特筆すべきは、アート小説の第一人者として知られる、原田マハさん(1962-)の作品です。本記事では、原田マハさんが手がけた珠玉のアート小説の中から、特におすすめの5作品をご紹介します。

原田マハとは?経歴とアートへの情熱


フランシス・デ・ゴヤ『着衣のマハ』

, Public domain, via Wikimedia Commons.

原田マハさんは、2005年『カフーを待ちわびて』で日本ラブストーリー大賞を獲得した翌年、作家デビューしました。その後も、『キネマの神様』『本日は、お日柄もよく』などのさまざまな名作小説を生み出し、多くのファンに愛されています。

「原田マハ」というペンネームは、フランシス・デ・ゴヤによる『着衣のマハ』『裸のマハ』に由来しています。

森ビル森美術館設立準備室や、ニューヨーク近代美術館での勤務を経て、フリーのキュレーター、カルチャーライターとして活動するなど、美術作品への膨大な知識と愛を持った作家です。

「原田マハといえば、アート小説」。そう思う方も多いのではないでしょうか。

原田マハのおすすめアート小説は?西洋画から民芸まで幅広いテーマを紹介


アート小説①『楽園のカンヴァス』|「日曜画家」ルソーの謎の絵とは?


アンリ・ルソー『夢』

, Public domain, via Wikimedia Commons.

長きにわたり「日曜画家」と呼ばれ、その独特の画風を揶揄されてきたアンリ・ルソー(1844-1910)。『楽園のカンヴァス』は、そんなルソーの作品に魅せられたふたりの人物が、ルソーの遺したという1枚の絵画を巡り、謎を解き明かしていくミステリー小説です。
本作は山本周五郎賞を受賞しており、原田さんのアート小説の代表作として知られています。

原田さんは、ルソーの没後100年にあたる2010年に『楽園のカンヴァス』を書き始めようと決意し、パリに長期滞在して取材と執筆を重ねました。

原田さんはパリに発つ前、作品の舞台となった岡山県の大原美術館館長・高階秀爾氏を訪ね、本作が文庫本になった際に巻末の解説を書いてほしいと頼んだのだとか。

その願いは晴れて実現し、高階氏は『楽園のカンヴァス』の文庫版で巻末の解説を執筆しました。

アート小説②『暗幕のゲルニカ』|ピカソの想いが時代を超えて交差する


ゲルニカ・アレンデサラザール通りに壁画として飾られている『ゲルニカ』

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パブロ・ピカソ(1881-1973)による『ゲルニカ』は、一度観たら忘れられないほどの強烈なインパクトを持つ作品です。

一見、奇妙な姿をした動物や人間の姿に、違和感を覚える方もいるでしょう。実はこの作品は、第二次世界大戦において、ナチス・ドイツがスペインの古都ゲルニカに行った無差別爆撃を描いたものです。

絵に描かれているのは、動物たち、倒れる兵士、死んだ子供を抱いた母親。この強烈な作品には、犠牲になった多くの人々の悲しみと、強い反戦のメッセージが込められています。

『暗幕のゲルニカ』は、ピカソの『ゲルニカ』を巡って、現代のニューヨークと第二次世界大戦前のパリが交差する構成で物語が進んでいきます。

ミステリー要素、第二次世界大戦前後の美術、そしてピカソという天才の物語と、いくつもの側面から楽しめる1冊です。

アート小説③『サロメ』|薄幸の天才ビアズリーと禁断の愛


オーブリー・ビアズリー『サロメ』

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19世紀のロンドン。病弱な青年ビアズリーは、イギリスの代表的作家であるオスカー・ワイルドに出会います。ワイルドに見出されたビアズリーは、彼の書いた『サロメ』の挿絵で有名画家となりました。

やがてビアズリーとワイルドは「禁断の関係」となり、破滅の道へと突き進んでいくのですが……。

本作『サロメ』の主人公として描かれているのは、奇才画家オーブリー・ビアズリー(1872-1898)です。その洗練された作品たちは、妖(あや)しい魅力を放ち、読者を惹きつけます。

わずか25歳という短すぎる人生。家計を支えるために16歳から働く傍ら、ロウソクの光をもとに絵を描いたという薄幸さも、後年の人々を強く惹きつけるのかもしれません。

アート小説④『リーチ先生』|国を超えた友情、白樺派とイギリス人陶芸家の物語


岸田劉生『B.L.の肖像(バーナード・リーチ像)』

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日本の美に魅せられたイギリス人陶芸家、バーナード・リーチ(1887-1979)。

1909年、日本の美を学ぼうとしたリーチは、芸術に関心を抱く亀之介を助手に迎え入れます。リーチはやがて、「白樺派」の中心メンバーとなる柳宗悦(1889-1961)、濱田庄司(1894-1978)などの若き芸術家と、熱い友情を交わすことになります。

アートというと、つい「絵画」を想像してしまいがちですが、陶芸などの民芸もアートのジャンルのひとつです。『リーチ先生』では、東洋と西洋の架け橋となった彼の生涯を、助手の亀之介、そして亀之介の息子である高市の視点からあたたかく描いています。

作中では、文化運動への情熱を抱く若者の姿を描きながらも、作品全体に「優しさ」や「愛」が溢れており非常に魅力的です。600ページにもわたる長編ですが、リーチや彼を取り巻く芸術家の人生を追体験している気持ちになれるでしょう。

アート小説⑤『風神雷神』|作者が国宝に挑んだ、壮大なミステリー


俵屋宗達『風神雷神屏風図』

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『風神雷神』で描かれるのは、17世紀前半に京都で活躍した絵師、俵屋宗達(1570-1643)を巡るミステリーです。

京都国立博物館の研究員である望月彩の元に、マカオ博物館の学芸員、レイモンド・ウォンが現れます。

彼に導かれてマカオを訪れた彩が目にしたのは、宗達の『風神雷神』が描かれた西洋絵画でした。そして、その絵と共に、天正遣欧少年使節の一員・原マルティノの署名が残る古文書と「俵屋宗達」と記された四文字が遺されていて……。

『風神雷神屏風図』は、日本美術の中でも非常に有名な作品であり、国宝にも認定されています。風神と雷神が左右に構えをとったこの作品は、おそらく多くの人が一度は目にしたことのあるイメージでしょう。

原田さんは、これほどまでに有名な作品をテーマに、上下巻にも及ぶミステリー作品を書き上げました。アート小説はもちろんのこと、歴史小説、ミステリー小説がお好きな方にも読んでいただきたい一作です。

まとめ


本記事では、数ある原田マハ作品の中でも、特に有名なもの、そして西洋画から日本美術、工芸品まで幅広いジャンルを扱った小説を紹介しました。

このほかにも、ゴッホの死の真相に迫る『リボルバー』、モネの晩年を描いた『ジヴェルニーの食卓』など、魅力的な作品がたくさんあります。

美術館に行く前に読むもよし、作品を観た後に読むもよし。原田さんのアート小説は、あなたとアートの距離をぐっと近づけてくれるはずです。

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