【気象予報士が災害体験】8月は6個の台風が発生…台風10号が近づく今、必要な備えは?/札幌市民防災センター
台風10号は9月1日(日)にかけて西日本を東へ進む見込みで、引き続き、土砂災害や低い土地の浸水、河川の増水や氾濫、高潮に厳重な警戒が必要です。
台風では大雨や暴風に注意が必要ですが、天気予報で数値を聞いても、どれくらい危険なのか、何に気をつけたらいいのか、あまりイメージがつかないという方もいるのではないでしょうか。
そして、台風のように予想できるものもあれば、地震のように、いつ来るかわからない災害もあります。
札幌には、災害を疑似体験しながら、防災について学べる施設があります。
HBCウェザーセンターの星井さきと児玉晃が、体験レポとあわせて、気象予報士から見た必要な備えをお伝えします。
科学が進歩した現在でも、わからないこと
札幌・白石区にある札幌市民防災センター。
去年、開館20周年を機にリニューアルしたので、HBCウェザーセンターのメンバーで訪れました。
ここでは、様々な「災害の疑似体験」ができます。
入館無料で、気軽に防災について学ぶことができ、札幌市営地下鉄東西線・南郷7丁目駅から徒歩3分とアクセスも便利です。
消防車に乗ったり…
防火衣を着てポーズを決めたりと、家族や友人と楽しめる仕掛けもあります。
地震への備え
ことしは、元日に能登半島地震が発生しました。8月8日に宮崎県東部・日向灘で発生した地震では、初めて「南海トラフ地震臨時情報」が発表されたことも記憶に新しいです。
科学が進歩した現在においても、地震の予知は不可能です。
いつ、どこで起こるかわからない地震に、しっかり備えをしておくことが大切です。
【気象予報士が伝えたいポイント①地震への備え】
・耐震用のつっぱり棒などで家具を固定し、転倒・落下・移動防止措置をしておく
・家族で話し合い、避難場所や避難経路、離ればなれになった際の連絡手段や集合場所などを決めておく
・非常時に持ち出すべきものをあらかじめリュックサックに詰めておき、いつでもすぐに持ち出せるようにしておく
いざ揺れたらどうする?
防災センターには地震体験コーナーがあり、地震による揺れを体験することができます。体験できる地震は、震度3から震度7までです。
災害現場での活動経験や豊富な知識を持つインストラクターさんのもとで、地震発生時から揺れが収まった後の基本行動が学習できます。
私たちも体験してみました。
強い揺れで座っているのも精一杯で、疑似体験とはわかっていても不安な気持ちになりました。
強い揺れが発生したとき、まずは身の安全の確保。大事なのは「頭を守る」ことです。
クッションなどで頭を守ったり、可能ならば机の下に入り、落下物から身を守りましょう。
台風にどう備える?8月は6個の台風が発生
そして防災センターでは「暴風体験」もできます。
風速10m/s、20m/s、30m/sの強い風を3D映像を通してよりリアルに体感することができ、暴風の危険性を身を持って知ることができます。
私たち気象予報士も想像を絶する風の強さで、思わず顔をそむけてしまいました。
バーにつかまりながらでも、立っているのがやっとです。
私・星井は髪が長いので、髪の毛で視界が遮られたりして、より危険だと感じました。
風速30m/sといえば「猛烈な風」と表現され、看板が落下、飛散したり、走行中のトラックが横転してしまうような風ですので、屋外での行動はきわめて危険です。
そして暴風といえば、この時期注意が必要なのが、台風です。
ことしは台風の発生はスローペースでしたが、8月に入り南海上で台風の卵となる「熱帯低気圧」が発生しやすい状態になっていて、8月は6個の台風が発生しました。
そして現在、直近で心配なのが8月22日に発生した台風10号です。
9月1日(日)にかけて西日本を東へ進む見込みで、引き続き、土砂災害や低い土地の浸水、河川の増水や氾濫、高潮に厳重な警戒が必要です。
1日(日)には近畿から東海の付近で熱帯低気圧に変わる見通しです。その後、2日(月)以降は速度を上げて北上し、3日(火)にかけて北海道付近に近づいてくるおそれがあります。
北海道では週明けも大雨のおそれがありますので、引き続き気象情報にお気を付けください。
暴風や暴風雪といった荒れた天気となるときや、地震が起きたときは、停電のリスクも高まります。
停電は自然災害など様々な原因によって、一年中発生する可能性があります。特に地震は天気予報と違って、基本的には予測することができません。日頃から備えておきましょう。
気象予報士が伝えたいポイント②停電への備え
たとえば最低限必要なものとしては、以下があげられます。
・懐中電灯
・携帯ラジオ
・乾電池
・スマートフォンのモバイルバッテリー
・備蓄食品、水(最低でも家族が3日間乗り切れる程度の量)
・カセットコンロ、カセットボンベ
・防寒着や毛布
・ポータブルストーブ、灯油
・現金(大規模停電では電子決済も使えなくなります)
・携帯用トイレ
2018年9月6日未明に起きた北海道胆振東部地震から、まもなく6年が経ちます。
北海道では、日本で初めてとなるエリア全域におよぶ大規模停電「ブラックアウト」が発生しました。そこから約99%が停電から復旧するのに、約2日かかりました。
私・星井は当時東京にいたのですが、札幌に住む親はスマートフォン用のモバイルバッテリーを持っていなかったため、連絡をしても返信がなく、心配でした。その後、モバイルバッテリーをプレゼントしました。
当時から札幌にいた児玉気象予報士、電化住宅なので苦労したものの、百均で買っておいた置き型懐中電灯が活躍したそうです。幸い、子どもはミルクを卒業していたので大事には至りませんでしたが、お湯も沸かせない状況だったので「危なかったね…」と夫婦で話をしたそうです。
あのときの経験を無駄にしないよう、今一度、停電への備えを確認しましょう。
防災について学ぶことは、自分と大切な人の命を守ることにつながります。
「札幌市民防災センター」では、いろいろな災害の疑似体験をしながら、防災に関する知識や、災害が発生したときの行動を学べます。
ご家族や友人同士で、体験してみてはいかがでしょうか。
【札幌市民防災センター】
・北海道札幌市白石区南郷通6丁目北2-1
・開館時間:午前9時30分〜午後4時30分
・入館料:無料
・休館日:年末年始及び第1・第3月曜日(祝日の場合は翌日)
※機器の保守点検などによる臨時休館があります。最新情報は施設にご確認ください
文: HBCウェザーセンター気象予報士 星井さき・児玉晃
HBCは気象庁の認可を2001年に得て以来、民間気象会社の一つとして「HBCの独自予報」を発信しています。
連載「気象予報士コラム・お天気を味方に」
天気予報のほか、天気に合わせた服装の選び方のヒントなど、HBCウェザーセンターの気象予報士が暮らしに役立つ記事をお届けしています。
編集:Sitakke編集部IKU
※対談の写真は2024年8月、防災センターでの写真は2023年訪問時のもの。内容は記事執筆時(2024年8月30日)の情報に基づきます