【横須賀 イベントレポ】浦賀の町家に響く民謡 - 国登録有形文化財で味わう唄と三味線
2026年5月30日(土)、横須賀市浦賀にある国登録有形文化財『みそ工房 幸保六兵衛』にて、浦賀の町家に響く民謡が開催されました。
様々なゲストを招いて日本の伝統芸能や地域文化を広く紹介していく新シリーズの第一弾です。
風情ある浦賀の古い街並みを楽しみつつ、当日の様子を取材してきました!
国登録有形文化財の町家と日本の伝統芸能
会場の『みそ工房 幸保(こうぼ)六兵衛』は、関東大震災で倒壊した母屋の跡に1925(大正14)年に建てられた店舗付き住宅の典型的な町屋建築です。平成の時代まで米穀商を営まれていました。
現在の幸保家当主の夫妻がこの建物を相続し、『みそ工房』としてリニューアルオープン。浦賀の歴史を今に伝える建物は、2025(令和7)年8月に横須賀市東浦賀の国登録有形文化財に登録されました。
母屋はレンタルスペースとして講演会やイベントで利用されており、今回はこちらの情緒あふれるスペースで開催されました。
画像出典:鶴澤津賀花
本公演は、日本の伝統芸能や地域文化を紹介していく新シリーズの第一弾。横須賀市在住の義太夫節三味線方・鶴澤津賀花(つるざわ つがはな)さんがナビゲーターを務めています。
プロフィール
福井市出身。ふくいブランド大使。横須賀市在住。
・1995年: 武蔵野音楽大学音楽学部音楽学学科卒業
・1998年: 女流義太夫の人間国宝・竹本駒之助に入門
・2001年: 国立演芸場にて初舞台
・2006年: 文化庁新進芸術家国内研修員として、三味線を六世鶴澤燕三に師事
・2007年: 文化庁芸術団体人材育成支援事業研修員。(一社)義太夫協会新人奨励賞受賞
・2009年: 第10回(公財)日本伝統文化振興財団「邦楽技能者オーディション」合格
・2011年: 第24回(財)清栄会奨励賞受賞
・2017年: 第38回松尾芸能賞新人賞受賞
現在、(一社)義太夫協会、横浜邦楽邦舞家協会所属。横須賀市「出前授業」、横須賀商工会議所マイタウンティーチャー(MTT)の講師として義太夫節体験授業を行う。
参照元:女流義太夫 三味線弾き 鶴澤津賀花
画像出典:木津かおり
第一弾のゲストとして迎えたのは、民謡歌手・木津(きつ)かおりさん。横須賀市内の高校出身で、ゆかりある地での公演となりました。
プロフィール
民謡歌手・三味線弾き唄い。新潟県魚沼にルーツを持ち、幼少より民謡とともに育つ。
・ 日本各地に伝わる民謡を、その土地の風土や言葉の響きを大切に受けとめ、現代の感性で表現。体温のある歌声と三味線を軸に、即興性や他ジャンルとのコラボレーションも積極的に導入。
・ユニット「木津かおりと the 民謡」では、打楽器やヴァイオリンなど異なる音楽的背景を持つ奏者と共に独自の音世界を展開。2025年には、八代目市川染五郎らが出演する歌舞伎ネクスト『朧の森に住む鬼』に唄・三味線・太鼓で参加。
・リサイタル「花音里の会」をはじめ、舞台作品、地域文化事業、教育活動など多岐にわたる。
現在、(一財)日本郷土民謡協会 成年部副部長、保土ヶ谷民謡民舞協会会長、竹嶺会主催。
参照元:花音里Arts | 木津かおり
国登録有形文化財の土間にて。(左から)当主の幸保節子さん、木津かおりさん、鶴澤津賀花さん。
響きわたる三浦半島にゆかりのある民謡
公演は当主の幸保節子さんによる温かいご挨拶と建物のお話からスタートしました。
最初の唄は、幸保節子さんの故郷である福岡県のご祝儀唄「祝い目出度」。会場を一気にお祝いムードに包みます。
続けてここ三浦半島の海に生きる唄を3曲を披露されました。まずは三崎に伝わる海南神社チャッキラコより「初伊勢~よささ節~チャッキラコ」。
さらに、風待ち港として栄えた三崎の流行り唄「三崎甚句」。
そして、逗子市小坪地域に伝わる子守歌「いか採り唄」と続きます。
見守るナビゲーターの鶴澤津賀花さん。
ここでしか聴けない民謡と義太夫の希少な奏で合い
ここからは民謡と義太夫の協演(コラボレーション)です。まずはそれぞれが使用する三味線の説明からスタート。木津かおりさんの三味線は民謡は中音域の深みのある響きと長く残る美しい余韻が特長の『中棹三味線』が使われるのに対し、義太夫は腹の底に響くような重厚な響きを持つ『太棹三味線』が使われます。幸保節子さんの三味線は、民謡に使う中棹三味線よりも棹や胴がやや大きい『地歌三味線(中棹)』です。
いよいよ始まった演奏では、中棹の深みのある響きと太棹の重厚な音色が美しく響き合います。その圧倒的な音に負けない、木津かおりさんの唄声が会場を包みました。
最初の曲は義太夫・新版歌祭文より「野崎村」。
続く2曲目は鶴澤津賀花さんの故郷・福井県の民謡「しっちょいな節」が披露されました。二つの三味線と唄が織りなす、ここでしか聴けない特別なパフォーマンスとなりました。
その後は再び木津かおりさんの独演に戻り、十八番(おはこ)二題を披露。木津かおりさんのルーツである新潟県の民謡「佐渡おけさ」、三崎を中心に広まった流行り唄「ダンチョネ節」が演奏され、圧巻のコラボレーションは拍手喝采のなか締めくくられました。
国登録有形文化財の見学ツアーも開催
第一部・第二部の終演後には、横須賀市自然・人文博物館 学芸員補・亀井泰治さんによる町家の解説と、敷地内にある石蔵の見学ツアーが開催されました。
ツアーでは、母屋の建築構造から当時の浦賀の歴史背景まで、専門的なお話を分かりやすく詳しく解説してくださいました。
解説の後は、木骨石造の米蔵として建築された蔵に移動します。
桁梁(けたばり)には、1915(大正4)年に造られたことを示す文字が記されています。あの大震災を乗り越えた、非常に丈夫な造りであることが分かります。
数字が記された2階の床板は、あえて固定されていません。下のフロアからスムーズに荷物を引き上げるため、取り外せる仕組みになっているそうです。
この天井梁に滑車をかけ、重い荷物を上下に運んでいたという当時の知恵が垣間見えます。
石蔵の中には、当時の貴重な資料や文献のほか、歴史を物語る家財道具が今も大切に保管されていました。
東浦賀の国登録有形文化財 幸保家主屋・石蔵 | 横須賀市自然・人文博物館 公式HP
公演の余韻とともに楽しむ浦賀散策
『みそ工房 幸保六兵衛』のある東浦賀、今もなお古い街並みが残る散策にぴったりなエリアです。路地のところどころに井戸水が湧き出ていたりと、歩くだけで歴史を感じられます。近くには、願いが叶うパワースポットとして有名な『東叶神社』があります。
また、すぐ近くには1725(享保10)年ごろから始まる長い歴史を持ち、地元で『ポンポン船』の愛称で親しまれている『浦賀の渡し』の東渡船場もあります。
今回は浦賀の渡しに乗り、対岸にある『西叶神社』まで足をのばしてきました。
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湘南人
まとめ
国登録有形文化財という歴史ある特別な空間で、日本の伝統芸能を五感で味わう贅沢なひとときとなった浦賀の町家に響く民謡。
実は、今回素晴らしい唄声を聴かせてくださった民謡歌手の木津かおりさんは、筆者の高校時代の同級生でもあります。当時から変わらない、あるいはそれ以上に深みを増した彼女の圧倒的なパフォーマンスを、こうして地元の公演で取材できたことは、筆者にとっても非常に感慨深い特別な経験となりました。
また、会場となった『みそ工房 幸保六兵衛』では、今季のみその販売が6月中旬よりいよいよ再開されます。歴史が息づくこの場所で、丁寧に作られたみそをぜひ味わってみてはいかがでしょうか。
鶴澤津賀花さんがナビゲートするこの新シリーズは、今後も様々なゲストを迎えて日本の伝統芸能や地域文化を発信していく予定とのこと。
浦賀の古い街並みとともに、次回はどんな素敵な出会いと音色がこの町家に響くのか、今から楽しみです。
浦賀の町家に響く民謡
開催日時
2026年5月30日(土)第1部11:00〜12:00/第2部14:00〜15:00/第3部16:00〜17:00
開催場所
みそ工房 幸保六兵衛
住所:神奈川県横須賀市東浦賀2-2-23
駐車場:なし
料金/定員
3,000円/各回25名
主催
鶴澤津賀花