赤ちゃんの頭に謎のブツブツ! 乳児の約3人に1人が経験する皮膚トラブルの正体
乳児の約3人に1人が経験する「脂漏性皮膚炎」。赤ちゃんの頭や顔にできる黄色いかさぶたやブツブツの原因、アトピーとの違い、正しいケア、SNSに流れる情報の真偽まで皮膚科医・野崎誠先生が解説。
7割のママが産後に経験する 「マミーブレイン」って?<アンケート結果>「乳児脂漏性(しろうせい)皮膚炎」は、多くの乳児が経験するといわれる皮膚の炎症トラブルです。「生まれたばかりの赤ちゃんの頭皮に黄色っぽいかさぶたができた」「頭や顔がガサガサでブツブツもある!」と驚く保護者は少なくありません。SNSでは、さまざまな情報が飛び交うものの、いったいなにが真実なのか、戸惑うママパパも多いでしょう。
今回は、乳児脂漏性皮膚炎の原因や正しいケアの方法、またSNSに流れる投稿の真偽について、皮膚科医の野崎誠先生にお話を伺いました。
多くの乳児がかかる「乳児脂漏性皮膚炎」
──乳児脂漏性皮膚炎は、いつ、どのような症状であらわれるのでしょうか。
野崎誠先生(以下、野崎先生):乳児脂漏性皮膚炎の発症ピークはおおむね生後1~3ヵ月で、生後6ヵ月を過ぎて新たにあらわれることはまずありません。気温や季節による影響もなく、「夏だから」「気温が高いから」といった理由で発症することもありません。
症状の多くは皮膚のベタつきや黄色っぽいかさぶた、粉をふいたような状態です。ときには皮膚がむけてくることもあります。もっとも症状が出やすいのは頭皮ですが、顔のTゾーン(おでこや鼻のまわり)にもあらわれることがあります。
炎症をみると不安になる保護者も多いですが、かゆみはなく、乳児本人は気にしていないケースが大半です。ほとんどの場合は、生後6ヵ月ごろには自然におさまっていきます。
原因は「ホルモンの影響」
──なぜ乳児脂漏性皮膚炎が起こるのでしょうか?
野崎先生:おもな原因はホルモンの影響です。生後3ヵ月までは子どもの性的発達期にあたり、性ホルモンの分泌量が非常に多くなります。この影響で皮脂の分泌が増加し、乳児脂漏性皮膚炎の原因となります。
生後3ヵ月を過ぎると性ホルモンの分泌はほぼゼロとなり、第二次性徴期が始まる10~11歳ころまで再び増えることはありません。このため、生後3ヵ月以降は発症がほとんどなくなっていくのです。
また、親御さんの育て方や、赤ちゃんの生活習慣によるものでもありません。成長過程でだれにでも起こりうる“通過点”のようなものと考えてもらえたらと思います。データ上は約3人に1人が経験するといわれますが、病院を受診しない赤ちゃんも含めると、実際にはもっと多くの子が経験しているのではないでしょうか。
──大人も脂漏性皮膚炎になると聞きますが?
大人の発症頻度も高く、男性のほうがより多い傾向があります。赤みや、皮膚がはがれフケのような症状が起きます。子どもは頭皮への発症が多いのに対し、大人は首や鼠径部(そけいぶ)にも出る傾向があります。また、大人の場合は「マラセチア」という常在菌の影響を受けますが、乳児ではこの菌による関与はあまりないと考えています。
乳児脂漏性皮膚炎とアトピーを見分けるポイント
──アトピー性皮膚炎と見分けにくいという声も。区別するポイントはありますか。
野崎先生:ご家庭で見た目だけで判断するのは、難しいかもしれません。ただし、アトピー性皮膚炎は生後2ヵ月以降に発症することが多く、かゆみを伴うのが特徴です。
乳児脂漏性皮膚炎には「かゆみがない」「頭皮に症状が出やすい」という特徴があるので、「生後0~1ヵ月で頭皮に症状が出ている」「赤ちゃんがかゆがっていない」場合は、乳児脂漏性皮膚炎である可能性が高いと考えられます。
──病院を受診する目安はありますか。
基本的には時間とともに自然に改善することが多いため、とくに心配がなければ自宅でていねいに洗浄し、見守ってもらっても問題ありません。
ただし、かゆみが出てきた場合や、髪の毛が抜けたり部分的に薄くなったりする場合は、かならず受診してください。炎症が悪化することは少ないですが、「治らない」「広がっている」と感じたときには、早めに専門医に確認してもらうと安心です。
乳児脂漏性皮膚炎のケア方法は「よく洗うこと」
──もし乳児脂漏性皮膚炎になった場合、家庭でどのようにケアすればよいでしょうか?
野崎先生:なによりも大切なのは「よく洗うこと」です。乳児脂漏性皮膚炎が長引くケースは、ご家庭で十分に洗えていないことがほとんどです。
1日1回のシャンプーでは、汚れが十分に落ちきらないこともあります。そこで、1日2回のシャンプーを意識して取り入れてみましょう。たとえば「朝と夜にシャワーで洗う」または「1回の入浴で2回シャンプーする」など、ご家庭の生活リズムに合わせて実践してみてください。
また、最近は乳児用コーナーで、頭にも体にも使える「全身用」のボディソープが多く販売されていますが、これらは洗浄力が頭部には合わないことがあり、頭皮の皮脂汚れを十分に落としきれない場合もあります。頭には頭専用のシャンプーを使い、しっかり皮脂を落とすことをおすすめします。
頭専用のシャンプーの種類は、普段、親御さんが使っている大人用シャンプーを一緒に使っても問題ありません。秋から冬にかけては、寒さのために入浴や洗髪の回数が減りがちですが、それが乳児脂漏性皮膚炎の治りを遅らせる一因となります。
乳児脂漏性皮膚炎は季節を問わず発症しますが、とくに秋から冬の寒い時期は親御さんがお風呂やシャワーに入れる頻度が減り、症状が長引きやすい傾向があります。この時期こそ、ていねいな洗浄を心がけてあげてください。
SNSでよく見る、さまざまな情報の真実とは
──X(旧Twitter)では「沐浴剤(ベビー用入浴剤)がよくない」「坊主頭にするとよい」「ベビーオイルで保湿する」「スカルプブラシを使う」など、さまざまな体験談やアイデアがあふれています。「この方法で治った!」という投稿も目にしますが、注意点はありますか。
野崎先生:ネット上には正しい情報もあれば、誤解を招きかねない情報もあるため注意が必要です。
1.「沐浴剤を使うのはよくない」→【正しい】
そのとおりです。沐浴剤は洗浄力がほとんどなく、水で流すのとほぼ同じ状態です。使用しても効果はなく、しっかり洗浄できるシャンプーを使うことが必要です。
2.「髪を短くする、または坊主頭にするとよい」→【一部は正しいが注意が必要】
髪を短くすると頭皮が洗いやすくなるため、症状が早く落ち着く場合もあります。ただし、乳児を丸刈りにする必要はありません。時間の経過とともにホルモンバランスが整えば、自然と改善していくはずです。あせらず見守ってください。
3.「ベビーオイルで保湿する」→【間違い】
脂漏性皮膚炎は皮脂が多い状態で起こるため、さらに油分を加えると、かえって症状を悪化させるおそれがあります。オイルによる保湿は避けましょう。
4.「スカルプブラシでこするとよい」→【間違い】
強くこすると皮膚を傷つけ、かさぶたを無理にはがしてしまう危険があります。赤ちゃんの皮膚を守るため、スカルプブラシの使用は避けましょう。
野崎先生:SNS上には、医療的な根拠が十分でない情報も多く流れています。情報の発信者をしっかり確認し、迷った場合はかならず医師に相談してください。また、オンライン診療なども始まり、とても便利な時代ですが、画面越しでは症状を十分に確認できないこともあるので注意が必要です。
乳児脂漏性皮膚炎は、ホルモンがしっかり働いている証であり、すこやかに成長しているサインのひとつです。あせりすぎず、「よく洗う」という基本を大切にしながらていねいにケアしてあげてくださいね。
───◆─────◆───
生まれたばかりの赤ちゃんに黄色いかさぶたや粉ふきのような症状があると、つい心配になりますが、ホルモンバランスが整うにつれて自然に落ち着いていくことがわかりました。
家庭ではていねいな洗浄を心がけながら、心配なときやなかなか改善しないときは、信頼できる医療機関に相談し、赤ちゃんの肌をやさしく守っていきましょう。
取材・文/牧野 未衣菜