【富士・無上帑(むじょうどう)】白い「火の見櫓」がある極上カフェ スペシャルサンドを食べ 旅行気分に
大きな白い「火の見櫓」がシンボルの古民家風カフェが静岡・富士市にあります。スペシャルサンドとこだわりのコーヒーでくつろいだら、火の見櫓がある庭を散策。地域の遺産を後世に残したいという思いが詰まっていました。
【画像】記事中に掲載していない画像も! この記事のギャラリーページへ白い火の見櫓が目印 古民家風の外観
静岡・富士市、富士川沿いにある道の駅「富士川楽座」から、北の芝川方面へ向かうこと車で約10分。
集落を抜けた林の中に、古民家風の建物と白い火の見櫓が見えてきます。
そこは、コーヒーや軽食が楽しめるカフェ「無上帑(むじょうどう)」です。
古民家を移築したと思う人が多いようですが、そうではありません。
無上帑の運営会社は建築会社の「イワセイ」です。無上帑は地域の環境になじむような伝統的な日本家屋を新しく建てた、古民家風のカフェなのです。
広い窓から富士山が見える客席
大きな一枚ガラスの窓からは、富士山と日本の原風景を思い起こさせる田園風景が目に飛び込んできました。日常を忘れ、心が豊かになるのを感じます。
中に入ると高い天井と太い梁(はり)に荘厳さを感じつつも、店内に流れるジャズや薪ストーブの中で揺れる炎に心が安らぎます。
食事メニューはスペシャルサンド一択
カフェメニューはいくつかありますが、食事メニューは「無上帑スペシャルサンド珈琲セット(1300円)」のみ。早速、頼んでみました。
メインのサンドはパンとソーセージのみという潔さで、一見すると物足りないのでは?と思ってしまいました。
しかし、食べてみて驚きました。まず、ソーセージの歯ごたえの良さとジューシーさ。そして白いパンはもちもちの食感で、ほのかな甘さ。どちらも主役級のおいしさでした。
それもそのはず、ソーセージは同じ地域に店を構えるハム・ソーセージ店「グロースヴァルトSANO」がスペシャルサンドのためだけに作ったオリジナル。なんとここでしか食べられないそうです。
パンは小麦粉と砂糖、塩、酵母のみで作られたシンプルだからこそ素材の味を感じる手作りパンです。
スペシャルサンドは名前の通りスペシャルで、また食べに行きたくなるおいしさでした。
コーヒーを一口飲んで感じたのはその飲みやすさ。苦みが少なくすいすい飲めてしまいます。
コーヒーに関しては初心者レベルの筆者ですが、砂糖もミルクも要らず、こんなに飲みやすいコーヒーは初めてでした。
季節限定メニューやケーキ
今の時期は冬季限定メニューとして「おしるこ(770円)」や「焼き餅(770円)」、「ホットチョコレート(660円)」もあります。
おしるこのあんこは無上帑の自家製で、お店で炊いています。お餅も自家製です。
無上帑・久保田かつら 店長:
なるべく材料にこだわって、自分たちの力でできるものは手作りしていきたいと思います
夏季はかき氷が人気メニューです。
自家農園で採れるクリやウメの手作りシロップをかけたかき氷があります。
定番の抹茶、ミルク、あずき、みぞれも根強い人気です。ボリューム満点なので、ぜひ一度お試しください。
また、3年前からはパティシエの平沼奏子さんがスタッフに加わり、焼き菓子などを作ってくれています。
お店の人気メニューにもなっているのが、「ガトーショコラ(700円)」。
濃厚なチョコレートの風味の中に酸味のあるジャムがよいアクセントになっています。
これは自園で採れたウメを使った手作りジャムです。
無上帑といえば“庭”
お腹も満たされて外に出た後、すぐに帰るのはもったいない!
無上帑の庭は、本当に美しいのです。
社長自らが、毎日のように率先して掃除しているという庭。
映画や結婚式の撮影にも使われるほどで、どこにカメラを向けても絵になります。
社長の友人が作ってくれたこの庭は「自然の中にお邪魔する」という社長の思いを反映してデザインしたそうです。
庭は季節によって趣が変わります。
かまどもあり、実際にイベントなどで使われています。
歩き回っているとちょっとした観光気分に。ゆっくりと散歩をするように歩きながら庭を眺めていると心が癒されていきました。
今の時期は緑はありませんが、澄んだ空気で富士山がきれいに見えるので防寒をしっかりしてお楽しみください。
食事と景色で二度楽しめるので、時間にゆとりを持ってお出かけするのがおすすめです。
「無上帑」の意味は
この場所は元々、久保田野園という農園でした。
無上帑のシンボルでもある火の見櫓があったのは、もっと南側の富士市岩淵です。
火災の早期発見のために建てられた火の見櫓ですが、19mとひときわ高く、八角形の屋根が特徴的です。
「櫓an」という市民団体が2005年、“東海道一美しいと言われた火の見櫓を後世に残そう”と、久保田野園に移籍復元しました。
現在、国の登録有形文化財になっています。
そして、ここを訪れた人達がひと休みできる場所として無上帑が建てられたそうです。
無上帑は「帑」の字が見慣れませんが、“この上なく大切な物をしまっておく場所”という意味となるそうです。
ここは地域の宝と、それを大切に思う人たちの気持ちが、守られている場所なのです。
地域の遺産を後世へ
「この地域の良さを知ってもらいたい」と社長の久保田常右さんは話します。
無上帑・久保田常右社長:
この地域は、観光地ではありませんが、富士山の景勝地でございます。地方が衰退していく中で、この自然豊かな環境を無上帑というフィルターにかけて、火の見櫓とともに後世へとつなげていきたいです
年始には毎年恒例の餅つき大会が開かれ、多くの方が楽しんだそうです。
また、カフェに隣接している塘変木という建物には現在、鉄の造形作家である野口大さんの作品が展示されています。スタッフに声を掛ければ見せてもらえます。
プチ旅行が楽しめる無上帑に、ぜひ一度足を運んでみてください。
■店名 無上帑
■住所 静岡県富士市南松野247
■営業時間 平日11:00~16:00
土日祝11:00~17:00
※LO閉店1時間前まで
■定休 木※不定休あり インスタグラムで要確認
■問合せ 0545-69-3588
■駐車場 あり(19台)
文/鈴木美緒 撮影/望月知世子