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【不登校】「学校に行かないと生きていけない」は親の思い込み? 識者が語る「子どもの本当の幸せ」とは

コクリコ

【不登校】「学校に行かないと生きていけない」は親の思い込み? 識者が語る「子どもの本当の幸せ」とは

『フリースクールという選択』(講談社+α新書)など90冊以上の著書を持つ教育ジャーナリスト・おおたとしまさ氏と、不登校の子ども向けオンライン支援「夢中教室」「夢中カレッジ」で約500もの家庭に寄り添ってきた辻田寛明氏による対談(後編)。前編は新しい学びの形「パラレル登校」について聞きました。後編は子どもの生きる力、学校以外の選択肢、不登校から次の一歩を踏み出すための見守り方について教わります。

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プロフィール
●おおたとしまさ
教育ジャーナリスト。1973年東京生まれ。リクルートから独立後、教育に関してさまざまな観点から取材を行い、著書は90冊以上。どこの組織にも属さない在野の視点で現代の教育への考察・提言を続けている。メディアへの出演や講演も多数。中高教員免許をもち、小学校教員や心理カウンセラーとしての経験もある。

●辻田寛明(つじたひろあき)
ワオフル株式会社 夢中教室WOW!代表。1993年生まれ。茨城県つくば市出身。東京大学経済学部卒業、同大学経済学研究科修了。2020年ワオフル株式会社を創業。不登校の子どものためのオンライン家庭教師「夢中教室」、オンラインフリースクール「夢中カレッジ」を展開。累計約500名の生徒が利用。

学校では「生きる力」は学べない!?

辻田寛明さん(以下敬称略):公立の学校はお金がなくても通える場所で、これは人類が発明した素晴らしい制度だと思っています。

学校が合わなかった子どもには、複数の学びの場を利用する「パラレル登校」がいいと思っていますが、実際に「パラレル登校」をやろうとするとお金がかかる現実があります。補助金も地域によって差がありますし。

おおたさんは今回の本(『フリースクールという選択』講談社+α文庫)を取材する中でその辺はどう感じましたか。

おおたとしまささん(以下敬称略):難しい問題ですよね。僕は将来的には、フリースクールも学習塾も習い事も、全部無償にすべきだと考えています。

今の社会は、お金がないと教育や体験ができない構造になっているし、僕らもお金がかかって当然と思っている。このままではお金がないと教育や体験ができない社会をどんどん加速することになりますよね。「教育格差」「体験格差」がそれです。

そうじゃない社会の作り方があるんじゃないかなと思っていて。実は10月(2026年)には地域教育をいろんな形でやっている団体などを取材した本を出す予定です。

昔は地域の中で、お金をかけずに子どもたちが育っていました。それを現代の社会に置き換える新しい仕組みを作れないかと考えています。学校では学べないことを、地域の中で子どもたちが自然に学ぶことができる社会を再生することは不可能ではないはずです。

辻田:近代社会が「学校が学ぶ場所、あとそれ以外」と境界線を引いてしまったからそうなったんですよね。もっと境界をゆるめることで、新しい形の学びが生まれるかもしれませんね。

おおた:1990年代の終わりごろから、学習指導要領に「生きる力」という言葉が入ってきました。それ以降、社会では「学校で全ての子どもに生きる力を与えなければならない」と思い込んでしまった。

今となってはそれが間違いの始まりだったのではないかと感じています。そもそも学校にそんな機能はなかったし、学校で生きる力を全部インストールさせるなんて到底無理な話ですよ。

生きる力は個人に属するものではないのに、学校で与えられると間違った思い込みをしてしまった。それを改めて地域に戻していく。すると、地域の大人たちが群れ始める。いろいろ企(くわだ)て始める。大人たちが群れとして発揮する生きる力を子どもたちは間近で見ることができるようになる。そうすれば、生きる力なんて勝手に育つんじゃないかな。

そうしたら学校がやらなきゃいけないことはもっと限定される。それが多様な学びや、パラレル登校になって「学校は利用できれば利用すればいい」という流れにつながっていくと思いますよ。

辻田:はい、わかります。

おおた:そもそも学校ができたのってこの数百年、近代以降の話じゃないですか。日本だって明治維新以降です。学校は国民国家を整えるために軍隊とセットでできたんです。

そうしてできたいわゆる近代の産物としての学校は、もう役目を終えているのかもしれない。学校を再定義しなければいけないですよね。

一条校の学校に通わないでフリースクールに通って、自立して、社会に出ていって、ちゃんと暮らせてる人たちがこれからどんどん出てきますよ。

辻田:僕らの運営する夢中教室や夢中カレッジは、あえて「株式会社」として運営するという挑戦をしています。

その背景はこの資本主義の中で、どういい形で社会を作っていけるかを課題にしているからなんです。お金と人が集まるところが会社の良さだったりはするので。

例えば地域に根ざした会社が50年先への投資として売り上げの一部を地域の学びに還元したり、今よりもっと学びに寄っていくことで、子どもたちが学校と合わなかったとしても、地域で無償で学びを受けられたり、そのボランティアをする人たちにもしっかり収益が入るような仕組みができるんじゃないかと思ってるんです。

おおた:おっしゃるとおりですね。人と人とが贈与でつながる地域経済の足場をしっかり固めたうえで、グローバルな市場を舞台にした競争にも加わっていく。企業が、経済活動の2つの階層を区別して、それぞれにおけるふるまいを使い分ける。

これは企業の生き残り戦略としても重要な観点だろうと思っています。

学校以外の選択肢に迷う親たちへ

辻田:おおたさんはフリースクールの本(『フリースクールという選択』)を出されましたし、実際にフリースクールを選ぶ人は増えつつあると僕も感じています。

とはいえ、多くの人と違う道を選ぶ勇気がなかったり、不安だったり、現実的に難しいと考える保護者もまだ多いと思います。今、迷われている方に向けて、どんなメッセージがありますか。

おおた:多くの方は、人生は正しい選択をしなければいけないものと思い込みがちですが、自分がイキイキする方向に歩んでいったら、そこに道ができるだけのことだと思います。

不登校になった子どもは、深く傷ついています。なぜなら「学校には行くものだ」という社会通念を知っているから。そうじゃない自分はダメな人間だと自己像がゆがめられてしまうんですよね。

この社会は学校に行かないとまともに生きていけないって思い込まされている。それは学校が軍隊と一緒にできたからなんです。ある種、脅すことによって思い込ませてきた。

自分が無意識に前提にしてしまっているものが本当に真実なのか、疑ってほしいですね。学校以外の選択をするのは難しいと考えるのは、具体的に何が難しいのか、それは思い込みじゃないですかって。

子どもが自ら踏み出すには?

おおた:人間って本来、自然と足を踏み出す力を持っていると思うんです。大人もそうだし、子どもならなおさら。自ら踏み出せるし、それでちゃんと道ができるのに、「学校が正しい道」といわれると、それ以外に踏み出したくても否定されるから動けなくなってしまう。

でも、「自分はこのままでいいんだ」「周りの人は自分を認めてくれる」という安心感があれば、おのずと道は開けます。

辻田:「おのずと道はある」という言葉は、非常に勇気をもらえます。

おおた:不登校の渦中にいて、なかなかいいフリースクールや居場所が見つからないと、私の選択肢はどこにあるのかって苦しくなっちゃうと思うんですけど、それは外に答えを求めようとしているからなんじゃないかなって思うんですね。

お子さんの中に答えは絶対あるはずです。それがオモテにポッと出てくるためには安心感みたいなものがすごく必要。自己肯定感といってもいいですが、もっとシンプルに「自分は自分でいい」と胸を張れる安心感があれば、選択肢は自然と見えてくる。

「そのままでいい、間違ってもダメでもいい」と応援してくれる人がいる、誰も文句言わない、そんな安心感に満ちたら、これやってみようって意欲が湧いてくる。それが人間の基本構造なんじゃないかな。

これまでいろんな学校や教育現場を取材してきた中で、すぐれた教育者だなって思う方々は、ほぼ同じようなことをおっしゃいます。これはたぶん間違いない答えなんじゃないかなっていうのが、僕の『シートン動物記』的な観察から得られた結論です。

不登校から大企業の社長になりましたとか、キラキラした成功談や武勇伝はいらないんです。地味で些細なところにある幸せや、自分が“まあまあ”普通だと思える暮らしができていれば、それでいいじゃないですか。身近にある幸せに気づける人間に育ってくれれば、それで大成功だと僕は思います。

辻田:おおたさんの本(『フリースクールという選択』)は僕も本当に勉強になりました。お守りにしたい一冊でもあります。

本の中で僕が運営しているオンラインフリースクール「夢中カレッジ」も紹介されましたが、僕らがオンラインにしているのには理由があります。オンラインだからこそ参加できる子どもたちがいるからです。

おおた:そうですね。学校に行かなくなり、家にいる時間が長くなると、外に出るハードルは非常に高くなります。その状態でリアルのフリースクールを見学して回るのは、親子ともにとても難しい。その間、親御さんもすごく不安になると思うんですね。

そういうとき部屋からつながるオンラインフリースクールがあると、すごくハードルを下げてくれます。オンラインだとしても、子どもが誰かとつながる第一歩になるし、親御さんもスタッフやほかの保護者とつながることができて孤独じゃなくなるし安心感につながる。それがオンラインの存在価値なんじゃないかな。

そのうちリアルなスクールに行くようになったとしても、またちょっと出るのが億劫になったときに、じゃあしばらくオンラインでちょっとエネルギー充電し直そう、とかね。

階段を一気に登るのではなく、0.5段分の足場として、オンラインフリースクールは機能するなって、今回いくつものオンラインフリースクールの取材をして分かりました。

辻田:はい、次の一歩に進む1つの選択肢として、オンラインフリースクールもあると知ってもらえるとよいかなと。

おおた:いつでも戻ってこられるしね。

辻田:そうです。いろいろな形で受け入れられたりもするので。

おおた:一歩を踏み出すといいましたが、そのタイミングは子どもによって違います。親があせってタイミングが来る前にガチャガチャ動いても、余計に子どもを傷つけるだけになってしまうことがあります。

その子にとってのタイミングを一緒に待つ。待ってくれていること自体が、子どもにとって最大の安心感につながるはずです。

※2026年6月2日オンライン開催 「おおたとしまさ✕辻田寛明」特別対談より一部抜粋して構成

“フリースクール探し”で最初に読む本、登場! 『フリースクールという選択』(著:おおたとしまさ/講談社+α新書)

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