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それでも「感情は動く」。日車が虎杖に問いかけたこと——TVアニメ『呪術廻戦』第3期「死滅回游 前編」連載インタビュー第13回:虎杖悠仁役・榎木淳弥さん×日車寛見役・杉田智和さん前編

アニメイトタイムズ

写真:アニメイトタイムズ編集部

『呪術廻戦』第3期「死滅回游 前編」が、2026年1月8日(木)より放送中です。

放送にあわせ、アニメイトタイムズでは連載インタビューを実施。第13回は虎杖悠仁役・榎木淳弥さん×日車寛見役・杉田智和さんによる対談をお届けします。

第55話で描かれた日車の過去、そして虎杖との邂逅は、作中で描かれてきた「人を助ける」というテーマをこれまでとは少し違う角度から浮かび上がらせます。前編ではキャラクターの内面やお芝居への向き合い方について、じっくりと語ってくださいました。

【写真】『呪術廻戦』第3期 榎木淳弥×杉田智和が語る、虎杖と日車の邂逅【インタビュー前編】

日車を憐れむべきではない

ーーまずは杉田さんの『呪術廻戦』に対する印象をお伺いしたいです。

日車寛見役・杉田智和さん(以下、杉田):作中で“パロディ”をするんですよ。その元ネタに当たってみると、それがまた面白い。そういった引用する魅力を確かに感じました。

ーー榎木さんも芥見下々先生の「好きなもの」を感じる作品だとお話しされていました。

虎杖悠仁役・榎木淳弥さん(以下、榎木):そうですね。芥見先生の趣味というか、嗜好が反映されている感じがあって。ある意味で、趣味的な漫画だと感じる瞬間もあります。

ーー杉田さんは、出演が決定される前から、作品に触れていたのでしょうか?

杉田:「すごく話題になっているな」と思いつつ、いわゆるネットミーム的なものに僕が乗っかってはしゃぐのは少し違うとも思っていました。ましてや今回、出演させていただくことになって、制作に関わる立場として作品への向き合い方が大きく変わるとまでは言わないですけど、より慎重になりました。

ーー日車寛見というキャラクターについてはいかがでしょうか?

杉田:漫画を読んでいた時から「彼を憐れんではいけない」と思っていました。弁護士という仕事は、たとえどんな巨悪が相手でも弁護をしなければいけない時がある。理想と現実、道徳や倫理。本当はきちんと定められているはずのものが、個人の価値観で歪められて、理不尽なことや不条理なことがたくさん起きているはずです。今回、日車を演じるにあたって、様々な裁判の判例を調べました。

ーーそういった職業設定がある役の場合、現実の事象に丁寧にあたるというのは毎回されるのでしょうか?

杉田:やる場合と、やらない場合があります。今回は「やる」方でした。ただ、そうやって下調べすることをステータスにする気は全くないです。「杉田智和がこういうことをしてるのに、なぜお前はしないんだ」と誰かが言われるのは悲しいですから。優しさって「誰もが違う捉え方をするという事実に対して、諦めないでいること」じゃないでしょうか。

それでも「感情は動く」

ーー榎木さんから見た日車の印象についてもお聞かせください。

榎木:日車のエピソード、すごく面白いと思っています。敵として登場しますけど、彼なりの信念があって。中でも「弁護士」という職業を通して、人間の弱い部分に寄り添おうとしていた彼が、だんだん人間の弱さを美しいと思えなくなっていく。「絶望だけで、希望はないかもしれない」という考えに行き着いてしまうところは、色々な人に刺さりやすいテーマだと感じました。

榎木:実際、行ったり来たりだと思うんです。人間に絶望したり、また信じたいと思ったり。そもそも日車が「死滅回游」に参加した理由も、理不尽に抵抗するようなところがありますよね。「死滅回游」のルールには、法よりも絶対的なものがある。その曖昧ではない部分に、ちょっと希望を感じて参加しているのかもしれません。

杉田:やはり「感情は動く」と思います。弁護して、検察側は証拠を出して、裁判官が判決を言い渡す。ただ現実の判例を見ていると、被告人があまりにも反省していない場合など、裁判長が怒り出して、判決時に説教を始めたりすることもあるんです。それを見ると「人が人を裁くのに、感情がないわけがないな」と実感しました。

日車はその結果として、心が疲弊しきってしまった。何かのトピックやアイデンティティを通して「自分のことだけを言いたい」と思うと、結局は悲しいことになってしまいます。多くの人が「どうする?」と迷いながらやるしかない。心の中に相反するものがあって、それを天秤にかけて、判決を言い渡す。スッキリするわけがないですよね。

日車が虎杖に問いかけたこと

ーー第55話では、そんな絶望しきった日車と虎杖の邂逅が描かれました。「君は服を着て風呂に入ったことがあるか?」という日車の問いかけも印象的です。

榎木:映画的なシーンですよね。日車が普通じゃなくなっている、という印象を与えるシーンでもあるのかなと。

杉田:虎杖に“基準”を問いかけている気がします。彼の中では、普通じゃないものが普通になりつつあるけど、そもそも「普通」って何だろうという問い。理不尽や不条理を形にし始めている。

榎木:なるほど。

杉田:もしくは、これから戦う相手の人となりを見ておきたかったのかな。こういう聞き方をしたのは、この時点から「虎杖は何か違う」と見ている可能性もあると思います。そこは現実世界と違う部分です。現実の人間は、想像以上に弱い。それを嘲笑うなんて、ひどいことだと思うけど、みんな笑ってしまう。そういう社会にはしんどさを感じてしまいます。

[インタビュー/タイラ]

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