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佐渡裕&反田恭平、信頼を寄せ合う二人が全国10都市ツアーへ! チャレンジングなプログラム、新生オーケストラへの思いとは

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佐渡裕、反田恭平

2021年2月27日(土)から3月14日(日)、日本国内10都市で『佐渡裕/反田恭平 with ジャパン・ナショナル・オーケストラ 特別編成』が夢の共演を繰り広げる。現在、反田が主宰する「MLMナショナル管弦楽団」が、2021年に「ジャパン・ナショナル・オーケストラ(JNO)」と改名。今回のツアーでは、精鋭部隊が集う特別編成として、乗りに乗っている佐渡×反田との初共演となる。

約二週間にわたって、ロシアの作曲家のコンチェルト二本立てというチャレンジングなプログラムに挑む佐渡、反田両氏に、ツアーへの思い、そして、新生オーケストラに込める情熱を語ってもらった。

――10月25日にウィーンの楽友協会でお二人が共演された演奏会の大成功と熱狂ぶりは日本にも伝わっていますが、改めて、今、どのようなお気持ちですか?反田さんにとっては、ウィーン・デビューでもありましたね。

佐渡:急遽の依頼にもかかわらず、反田君をウィーンに呼べて、大熱狂の中で演奏を終えられました。本当に素晴らしい演奏で、ご本人も誇りに思えたと思います。僕も声を掛けた側として、ある種の達成感のようなものを感じています。

反田:そもそも、ウィーンが初めてだったので、予想以上に可愛らしい街並みと清潔さに感心しました。滞在中は、ロックダウンも始まり、テロが発生したりと、僕にとっては、とてもアドベンチャーな滞在になりました。

反田恭平

楽友協会のホールに足を踏み入れるのも初めてでしたし、映像で見てイメージする音とは何十倍も違っていて、今まで弾いてきたホールの中でも初めて体験する響きでした。実際にステージで弾けて本当に楽しかったですし、嬉しかったです。たくさんお客さんも来てくださいましたし。佐渡さんから、アンコールは「トルコ行進曲」でというリクエストがありまして、それも、とても盛り上がりました。

――佐渡さんと反田さんは、2017年の初共演以来、30回近く共演なさっているということですが、お二人が共演される時、他の音楽家同士とは少し違う、特別な“何か”を感じるのでしょうか?

佐渡:どんなピアニストであっても、僕は10分くらい打ち合わせをして実際に演奏に入っていくのですが、反田君の場合、最初の瞬間から波長が合うんですね。しかも、ものスゴく高い技術を持ちながらも、文化祭で作った“バンド仲間”みたいな感覚もあってね。初めて一緒に回った2017年のツアーは、確か十数回の本番があったと思うのですが、毎回、僕自身、興奮するものがありましたし、回を重ねるごとに、どんどん波打っていくような反応がありました。こちらも負けられないと、信号を送るとすぐ返ってくる。そういう音楽的な波動や波長が合うというのは言えますね。

もう一つ。例えば、音楽には引力のように上から下に落ちるというようなある種の暗黙の法則があって、それは演奏者が自分自身の力で、行間から読み込んでいかなくてはいけないものなんです。彼は若いのにその点を熟知していて、しかも、オーケストラという人の集団がどう機能し、それによって、聴衆の感情がどのように生まれ、動いていくのかをよく理解しているんです。一緒に演奏していて、僕はそういうのがスゴく気持ちいい。しかも、さっき言ったように、ルーティンの演奏ではなく、一回一回新しいものが生まれるという、中高生のバンド活動みたいなエキサイティングな感覚もそこに加わるんですよ。

佐渡裕

反田:音楽と向き合う際に、僕はある種の領域みたいなものを感じています。例えば、ある一定の部分より下の領域では、人間自身の力が奏でる世界なんです。ところが、何回かに一回、それよりも上の領域にある、あちら側の世界の音楽が聴こえてくる瞬間があるんですね。僕にとって、そちら側の世界に連れて行って下さるのが佐渡さんなんです。今でも忘れられないのは、17年ツアーの千秋楽のステージで、佐渡さんが仏像みたいに見えたんです。多分、ある条件がすべてそろった時に、そういう現象が起きるんだと思います。

佐渡:それは、見た目だろ?(笑)

反田:いや、何かいろいろあるんですよ(笑)。ステージのライトのせいかどうかわからないんですが、できあがった音楽を感じたらワーッときて、僕も涙を流してしまったんです。その時、佐渡さんが棒を振り上げている姿が阿修羅像のように見えて……。弾いていて恐ろしくなるくらい、人間離れした姿が見えたんです。きっと、佐渡さんが持っている世界観なんですよね。それでいて、優しさも感じられる。そういう人って本当にいないと思います。

――今回のJNOとのツアーでは、ラフマニノフの協奏曲 第3番とパガニーニの主題による狂詩曲、そして、プロコフィエフのピアノ協奏曲 第3番が予定されています。ラフマニノフの協奏曲 第3番は、佐渡さんたってのリクエストと伺いました。

佐渡:そうですね。ラフマニノフのコンチェルトは、2番もいい曲ですが、3番はその2倍くらいの魅力がある。最高峰の作品と言ってもいいと思います。ピアノとオーケストラとの対立があったり、反面、共鳴するところがあったりと、大きなうねりや波を描いていくのが魅力です。その分、ピアニストにとっては、ものすごい集中力と体力が必要だと思います。そのような作品ですから、僕と反田君とで、お互いに「ここまで燃焼できるか」というところまで絶対に目指せると確信していますし、ぜひ、僕たちのコンビで聴いて欲しいと思っています。

佐渡裕

そもそも、このプログラムを一晩で演奏する、この3曲で数週間のツアーをやるなんて、僕も反田君もどこか気が狂ってるんですよ。でも、クラシック音楽というのは、美しいだけではなくて、興奮も悲しみも、そして、狂気も異常な世界も、それらすべてがあってクラシック音楽なんです。今回は、そういうものがたくさん詰まったツアーになると思いますね。基本的に“反田恭平ショー”になったらいいと思っています。

――反田さんは、今回のチャレンジングなプログラムに関してどのように感じていますか?

反田:3つのコンチェルトを携えてのツアーは初めてです。どれも重量級ですし、そもそも、一回に2つのコンチェルトを演奏するのはあまりないですね。こんなに弾いていいのかな、と思っているくらいですが、とにかく楽しみです。

パガニーニの主題による狂詩曲は、ロシアのマリインスキー劇場でも弾いた思い入れのある曲です。ラフマニノフの3番は、この曲をきっかけに、いろいろな道が開けた曲です。プロコフィエフのコンチェルト3番は 、先日、ウィーンで佐渡さんと初めてレコーディングさせて頂きました。テロ発生やロックダウンまっただ中での録音でしたが、オケのメンバーが、テロの翌日も何事もなかったかのように定時に集まってくれたのには驚きました。

実は、一楽章を録音した後にテロが発生しまして……。なので、発生翌日に録音された二楽章以降は、ちょっと空気感が違う感じがします。その日は、街自体が機能していませんでしたし、佐渡さんも僕もほとんど寝ていない状態で臨みました。録音前に黙祷もしまして、皆さん、想像していたよりも演奏に集中して下さったのですが、僕自身は、一楽章の時の爆発的に燃え上がるものとは違って、内に秘めたような燃え方になったように感じています。それはそれで良かったと思います。

反田恭平

実は、この曲(プロコフィエフ 3番)は、僕自身、ソロ部分はあまり弾いたことがなくて、オケ伴奏ばっかり弾いていたんです。5人くらい担当してましたね。なので、わかっているつもりではいたんですが、いざ、オーケストラと対峙すると新鮮味がありました。何回か演奏を重ねることで、これからレパートリーになってゆくと考えると、楽しみです。

――MLMナショナル管弦楽団は、今回のツアーを皮切りに、ジャパン・ナショナル・オーケストラ(JNO)へと改名されます。ある意味で新しい門出を迎える訳ですが。

反田:(MLMは)もともと2021年に改名しようと思っていたのですが、急遽、こういうかたちで出発できることになったことにワクワクしています。MLMでは、僕を入れて17人くらいの人数で室内楽などにも積極的に取り組んでいました。今回のJNOとしてのツアーでは、特別編成として、幅広い年齢層のメンバーをお呼びしています。全員、ソロで活躍できるレベルの方々で、本当にうまい人しかいないのですが、とにかくオケが好きなんです。スーパーキッズ・オーケストラやPAC(兵庫芸術文化センター管弦楽団)出身の方も多く、佐渡さんのお知り合いもたくさんいますし、皆さん、何らかの知り合い同士なので、とてもフレンドリーな感じです。

今回、ラフマニノフ 3番のコンチェルトを演奏するということを前提に集まって頂いたのもありますが、特にこの作品は、全員が一団結しないと音楽として成り立たないですし、これだけの実力派が揃うと、一人ひとりがラフマニノフに対してどう思っているかということも客席に強く伝わると思います。また、佐渡さんが振ってくださるということで、メンバーにとっても経験値やモチベーションがすごく上がると思いますし、特に、ツアーというのはなかなか経験できないことなので、メンバー全員が一丸となって、まとまったプログラムを勉強できるいい機会だと思っています。

反田恭平

――「ジャパン・ナショナル・オーケストラ」という力強い名称に反田さんの信念が窺えます。今後、どのように羽ばたいていってくれたらいいなと考えていますか。

反田:改名に関しては、MLMの正式名称が長くて、おじいちゃん、おばあちゃんたちが、覚えてくれないので、以前から少しシンプルなものにしようと思っていました(笑)。今後の活動内容やプロジェクトなどについては、後日、改めて発表したいと考えていますが、実はかなり壮大な構想になっています。

多分、25年後くらいの話ですが、以前から、僕自身、学校を作りたいと宣言していまして、学生がいつでもコンチェルトを弾けるように、(JNOは)そのためのオーケストラでもあるんです。でも、プロのオケとしても、ワールドワイドで演奏活動ができるようにと考えています。

――それでは、JNOも教育的な意味で、若い世代のメンバーを継続的に入団させていくというかたちになるのでしょうか。

反田:はい。そういう点においては、佐渡さんがやっていらっしゃるPAC(兵庫芸術文化センター管弦楽団)に影響されています。PACも3年くらいで定期的にメンバーが入れ替わっているので、僕たちも5~10年のスパンで入れ替えしたいと思っています。その間に自分の活動の指針やポジションを決めてもらう。そのためには、ワールドワイドで活動していって、その国が好きになったら、そこに住んで、活動したりと、自分自身が感じるように身の振り方を決めるのもいいんじゃないかと。

――反田さんは、指揮にも大変興味をお持ちですね?

反田:ウィーンに引っ越したいと思っているのも、今後のJNOの活動を視野に入れて、真剣に指揮を勉強していきたいと思っているからです。佐渡さんも、まだ暫くウィーンにいらっしゃると思うので、(佐渡さん) お手製のカレーを食べられると思うと楽しみです(笑)。

反田恭平

――佐渡さんは、新生JNOとの共演に対してどのような期待感を抱いていらっしゃいますか?

佐渡:オーケストラに関しては、反田君に任せて、僕は楽しみにしています。僕自身、つねに知らないメンバーと共演しているので、新しいオケということには、特にこだわりは無いですね。反田君が、「佐渡さん、このメンバーなら、自信を持ってお届けできます」と言ってくれたので、僕としては、とにかく楽しみです。

一つ言えるのは、反田君がMLMで実現しているように、小編成で活動するというのはとても大事なことなんです。室内楽というのはオーケストラの核であり、基本なんですね。まずは一人ひとりの卓越した技術があり、デュオ、トリオ、カルテット……と、少しずつ人数が増えてゆくことで、感じられる喜びも増していく。その理想のかたちが、最終的にオーケストラというものなんです。

今回のプログラムでも、一曲目に小編成のハイドンの交響曲 第44番を選んだのは、そのような意味で、元々MLMに所属していたコアなメンバーを中心とした室内楽的な編成で最初の曲をやらせてもらおうと思ったからです。それからもう一つ、この「悲しみ」という曲は、僕自身、こんなに美しい音楽はないと感じていて、コロナ禍で多くの人々の心が沈んでいる中で、このような曲を鳴らすというのは、とても意義あることだと思っています。

――佐渡さんは、人間 反田恭平のどこがお好きですか?

佐渡:もちろん、ピアノの技術のレベルも高い。そして、音楽的にも自然でいながら、狂った部分もあれば、非常に物事を冷静に見ている部分もあって、幅広い音楽が作れる人だと思います。もちろん、音楽だけがそうなのではなく、彼の生き様やスタイルから滲み出てくるものがそうさせているんですね。様々なかたちで自ら企画を立て、それらを成功に導いていっている姿も逞しいと思います。と、言ってもまだ若いですからね。これから、悩むこともたくさんあると思いますし、どんな時も応援していきたいと思っています。非常に魅力的な青年だと思います。

佐渡裕

ところで、ツムツムっていうゲームがあるんですが、僕は10年前からやってましてね。以前、ツアーの時に反田君に聞いたら、「知らない」というから教えたんですよ。そうしたら、2か月後には僕のスコア超えてましたからね。おかしいと思います、それは(笑)。

反田:ツアー中に、楽屋で佐渡さんが一生懸命に腕を動かしているので、指揮の勉強をしてるんだと思って覗いたら、画面にディズニーのキャラクターが見えるんですよ。「これ何ですか?」って聞いたら、「ツムツムだよ」って(笑)。

――佐渡さんにとって、反田さんは息子さんのような年齢ですね。そういう目線でご覧になることもありますか?

佐渡:年齢は全然意識してないかもしれないですね。何ですかね、もう本当に友達。音楽上においても同士ですからね。舞台に一緒に立つ音楽仲間であり、人としても尊敬できる存在だね。

――反田さんは、人間 佐渡さんの一番好きなところを一点あげるとすると

反田:佐渡さんに友達と思って頂けるのは本当に光栄です。実際、年齢でいうと本当に父の年齢です。僕の父は全く音楽に興味がなくて、一回も音楽の話をしたことがないので、音楽好きのお父さんだったら、こんな感じだったのかなと。あと、僕は“楽しさ”が基準で生きているので、佐渡さんにも、同じニオイを感じています(笑)。

佐渡:ゴルフもね。

反田:そうですね、ゴルフも一度、連れて行って頂いて。まだ、ピアノで一杯一杯なので、もう少し余裕ができたらボール追っかけようと思っています。“佐渡カップ”にも出させて頂いて。

佐渡:僕がね、誕生日にゴルフクラブをプレゼントしたの。

佐渡裕

――最後にファンの皆さんにメッセージをお願いします。

佐渡:コロナ禍を経験して、クラシックの音楽においても、多くの人がSNSの力を知ったり、YouTubeなどの配信動画の効果で、新たなファン層が拡大したと思います。このようなことは、本当にすばらしいことだし、嬉しいことと感じていますが、僕自身、音楽の醍醐味というのは、やはり、劇場に来てもらって、特別な空間の中で眼の前の空気が振動することだと思うんです。

そういう意味で、間違いなく今回のツアーは、コンサートホールに足を運んで、生の音楽を体験することが、いかに大きな喜びかということを感じてもらえる良い機会になると確信しています。反田君とともに、そして、すばらしいオーケストラとともにその喜びを実現したいと思っています。

反田:よく考えると、今まで120回くらいコンチェルトを弾かせて頂いているんですが、その3割が佐渡さんなんです。コンチェルトを演奏する場合、指揮者を見ないで鍵盤に没頭しなくてはならない時もあるのですが、そこで、指揮者との絶対的な信頼や安心感がなかったら亀裂が生じてしまう。その点で、佐渡さんとの共演では、何の心配もなく、自由自在に弾かせてもらえます。今回のツアーでも、思う存分に僕らの思い描いているロシア音楽をファンの皆さんにお届けしたいと思っています。

取材・文=朝岡久美子 撮影=池上夢貢

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