「自分の人生は、自分で選択し続ける」俳優・駒木根葵汰が決めたキャリアの分岐点
高校時代にスカウトされて芸能界入りし、20代前半で「ヒーローになる」という幼少期からの夢を叶えた駒木根葵汰(こまぎね・きいた)さん。現在は俳優として活躍中で、文化放送「レコメン!」のパーソナリティも務めています。今24歳の駒木根さんが、一つの区切りと考えているのは「25歳」。芸能界でのこれまでの6年間を振り返りながら、自身のキャリアに対する思いや、仕事への向き合い方について語っていただきました。
「死」を意識したら、失敗がどうでもよくなった
──夢の一つが「ヒーローになること」だと伺いました。いつ頃からそう思っていたのでしょうか?
幼少期に仮面ライダーやスーパー戦隊を見て、純粋にヒーローってかっこいいなと思っていました。それで、4歳頃から空手を習い始めました。ただ成長とともに興味の対象が広がってきて、一度“ヒーロー離れ”をしたんです。でも、高校生の頃にスカウトされて芸能事務所に入った後、「そういえばヒーローになりたかったんだよな」と思い出して、本気で目指してみようって決めました。
──それで「機界戦隊ゼンカイジャー」の主演オーディションを勝ち取って、夢を叶えられたわけですね。新しいことへの挑戦は怖くなかったですか?
正直、人っていつ死ぬかわからないじゃないですか。だから、 挑戦する過程で失敗しても、別にいいやって思っているんです 。本気で自分が望むことなら、道がどんなに険しくても挑戦したい。たぶん僕はお金を稼ぎたいとか、人気者になりたいとか、そういう欲自体は薄いんですよね。家族のためとか誰かのために仕事を頑張っているわけではなくて、ただ「自分の人生を大切にしたい」という気持ちが強いんです。だから、やりたいことにも素直に行動を起こせる自分でいたいんですよね。
──自分の人生を大切にするために行動を起こすということですね。仕事をするうえでは、どんなことを大切にしていますか?
ありのままの自分でいること、でしょうか。自分を偽ってしまうと、それを守るのに必死になって、ため息をつきながら仕事をする姿が想像できるんですよ。「今日も違う自分で生きないと」って。でも、最初から自分を偽らずオープンにしていれば、大勢の人には受け入れられなくても、一部の人が共鳴してくれるはずと思ったんです。そこから輪がどんどん広がっていけばいいなと思っています。
それと、俳優業においては「背伸びしないこと」も意識しています。やっぱり等身大の自分で、楽しく働きたいですよね。 僕の場合は、「この仕事を嫌いになりたくない」という気持ちが強いので、「好きでいる努力」を怠らないようにしています 。
──確かに、嫌いな仕事をするってつらいですよね
昔は「嫌いなことを継続するのが美徳」だと思っていたんです。でも、苦しい思いをしてまで続ける意味ってあるのかなって。仕事も同じで、「苦しい」「つらい」というマインドだけじゃ続かない。今はシンプルに、「自分が心から楽しめることをやったほうがいい」と思えるようになりました。
──2023年からはラジオのお仕事にもチャレンジされていて、「♪働くための休日なのか、休日のための働くなのか~」という求人ボックスのラジオCMがお気に入りだそうですね。以前、お笑い芸人のいとうあさこさんとの対談で「僕は、働くための休日になった」とおっしゃっていましたが、1年経って心境の変化はありましたか?
今は「休日のための働く」ですね。実は文化放送で毎週このCMソングが流れるたびに、放送作家さんと「今週はどっちですか?」って話しているんです(笑)。その日その日で「働くための休日」か「休日のために働く」か、コロコロ変わるんですよ。
これって哲学的な問いなので、答えが出ない。たとえば、「お金を稼げたぞ!」と思ったときは、プライベートでどうお金を有意義に使うかという発想になって、「休日のための働く」になる。逆に仕事が忙しいと、パフォーマンスを維持するためにしっかり休もうってなりますよね。これらに限らず、 ライフステージや仕事の立場などが変われば、答えはまた変化します 。僕自身は、「働くための休日」という答えに着地することが多いですね。
ただ、ワークライフバランスは結構考えます。自分のメンタリティや体力などを加味したうえで、ちょうどいい塩梅を探るようにしています。やっぱり、仕事を頑張るだけの人生だと苦しくなってしまうと思うので。
「25歳で理想に届かなかったら、この仕事を辞める」18歳で決めた覚悟
──3年前のインタビューで「今は目指すべき俳優像はない」と答えられていましたが、ロールモデルになるような方とは出会えましたか?
もちろん素敵な俳優さんはたくさんいますし、憧れの気持ちも芽生えますが、今もそこに縛られてはいないです。
やっぱり、自分の人生は自分で決めたい。 自分の在り方も生き方も、自分で選択し続けたいんですよね 。たとえば、自分以外の誰かが歩んだ道を選んで、失敗や望む結果が出なかったりしたら、責任転嫁をしてしまう気がして嫌なんです。俳優は自分で決めた道だから、失敗してもしょうがないという気持ち。だからいつ辞めてもいいと思っています。
──いつ辞めてもいいと思っているのは意外でした。そのマインドはずっとあったのでしょうか?
高校生の頃からありましたね。僕は今24歳ですが、芸能界入りした18歳の頃に決めたことがあるんです。それは、 「25歳までに納得のいく仕事量や立ち位置じゃなかったら、この仕事を辞める」ということ 。自分なりの指標があったからこそ頑張れたし、今は納得のいく道を歩めている自負もあって、今後も俳優業を続けていきたいという気持ちです。とはいえ、いつ辞めてもいいという覚悟はあるので、今の仕事に執着はしていないですね。
──自分なりの基準を設けておくのは、駒木根さんと同年代のビジネスパーソンにもなにかヒントになりそうですね
僕のように長期間じゃなくても、「2〜3年後に自分が納得いく要素が一つでも見つからなかったら辞めよう」とか、「自分がやりたいと思う限りは続けよう」などと決めておくと、心が楽になる気がします。
そこまでは、自分なりに一生懸命やる。でも自分に合わないと判断したら、他の選択肢を探ったり、新たな目標を設けたりするのは全然悪いことではないですよね。特に日本は、生きていくための選択肢って、探せば無数にあると思うんです。すでに成功している人の話を聞きに行ったり、その人の発信を参考にしたりすると、夢が近づく気がします。現場感がわかれば、自分に合う・合わないも見えてくるかもしれないなって思うんです。
どんな仕事でも、そこで培った経験やスキルって、辞めても無駄にならないと思います。だから、みなさんにもキャリアチェンジを恐れないでほしいですね。 僕自身も「1回挑戦してダメだったらまた戻ればいい」と常に思っているので 。
──最後に、今後挑戦してみたいことを教えてください
俳優業でいえば、個人的に興味があるカメラマンやカフェの店員、パン屋、警察官、あるいは悪役にも挑戦してみたいですね。役って本当におもしろくて、どんな職業にも挑戦できるんですよ。作品や役を通して、いろんな世界をのぞいてみたいですね。
プロフィール
駒木根葵汰(こまぎね・きいた)
2000(平成12)年、茨城県生まれ。高校時代にInstagramでホリプロよりスカウトを受けて芸能界入り。幼少期から憧れだったスーパー戦隊シリーズのオーディションを受け、2021年に「機界戦隊ゼンカイジャー」の主人公・五色田介人に抜擢される。2022年からは同名の役で「暴太郎戦隊ドンブラザーズ」に出演。その後、ドラマ「差出人は、誰ですか?」「星降る夜に」「今日からヒットマン」「この秋、僕は恋をした」などに出演。2023年3月からは文化放送「レコメン」の月曜パーソナリティを務める。2024年4月からはW主演ドラマ「25時、赤坂で」に出演し話題に。7月からは金曜ナイトドラマ「伝説の頭 翔」に出演、10月には主演作「天狗の台所」Season2が控えている。