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吉田 羊主演『ハムレットQ1』は「人生で何かしら失いながら生きている人たちの群像劇」~初日前会見&プレスコールレポート

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PARCO PRODUCE 2024『ハムレットQ1』初日前会見

2024年5月11日(土)~6月2日(日)まで東京・PARCO劇場にて『ハムレットQ1(キュー・ワン)』が上演される(その後、大阪、愛知、福岡の3都市を巡演)。

シェイクスピアの四大悲劇のひとつ『ハムレット』の三種類の原本のうち、Q1版は現在最も上演されているF1版の約半分の長さで、物語が凝縮された『ハムレット』戯曲の原型とも言われる。松岡和子の新訳での上演となる本作は、主人公のハムレット役に吉田 羊を迎え、森新太郎が演出する。

初日に先立ち行われた初日前会見とプレスコールの様子をお伝えする。

初日前会見

会見には、ハムレット役の吉田 羊、ハムレットの恋人オフィーリア役の飯豊まりえ、ハムレットの親友ホレイショー役の牧島 輝、オフィーリアの兄レアティーズ役の大鶴佐助、ハムレットの母親ガートルード役の広岡由里子、ハムレットの叔父クローディアス役の吉田栄作が登壇した。

PARCO PRODUCE 2024『ハムレットQ1』初日前会見 吉田 羊

初日を迎えるにあたり今の心境を問われると、吉田羊は「ようやく皆様に見ていただけるというワクワク感と、できればあと一ヶ月稽古したいという気持ちと、複雑な思い」と笑顔を見せた。吉田栄作は「初日というのは特別な感慨がある。作品が船出していく瞬間だし、初日の幕が閉じる時というのも特別な感動がある」、飯豊は「千穐楽までいいものをしっかりお届けできるように先輩方にしっかりついて行きたいなと思っている」、牧島は「演劇人なら誰もが知っているような作品に出演できることを嬉しく思う。楽屋で待機している先輩方に『目に物をみせてやります』と言ってこい、と言われた(笑)」、大鶴は「やるべきことはやってきたと思うので、あとはお客さんと一緒にこの作品を作り上げていきたい」、広岡は「初日のワクワク感と、セリフを忘れやしないだろうかというドキドキと、この2つで心が満杯です」とそれぞれ答えた。

PARCO PRODUCE 2024『ハムレットQ1』初日前会見 吉田栄作

演じる役の見どころやお気に入りのシーンを聞かれると、吉田羊は「膨大な独白がひとつ魅力になると思う。一つひとつお客様に語りかけながら紡いでいくので、お客様にはハムレットと共犯関係を結んでいただいて、復讐劇を最後まで見届けてもらいたい」、吉田栄作は「僕は羊さんと初共演。吉田吉田対決は見どころなんじゃないかなと思っている」、飯豊は「決して楽しいシーンではないが、ハムレットとのシーンがお気に入り。悲しみもあり、オフィーリアが変わって行ってしまう瞬間でもあるので、大切に羊さんの思いをしっかり受け止めて演じたい」、牧島は「羊さん演じるハムレットはいろんな役と会話していくが、親友であるホレイショーにしか見せない顔が見られると嬉しくなったり切なくなったりするので、それをお客様にも感じていただきたい」、大鶴は「どの役も悲哀を抱えていて、そこからの解放でもあると思うので、観客にどう受け止めてもらえるのかが楽しみ」、広岡は「Q1版にしかないホレイショーとの2人のシーンがお気に入り。ありがたく大切に稽古した」とそれぞれ答えた。

PARCO PRODUCE 2024『ハムレットQ1』初日前会見 飯豊まりえ

稽古中に印象に残ったエピソードを聞かれると、吉田栄作は「主演で座長の羊さんのガッツ」、牧島は「明るく和気あいあいと稽古していて、坂になっている舞台セットでみんなで滑ったりとかして楽しい稽古場だった」、大鶴は「フェンシングの構えを自己流で作っていて、少しずつ誇張していたのがばれて修正されてしまったのが残念」とそれぞれ稽古場の雰囲気の伝わるエピソードを披露した。また、稽古場の雰囲気について聞かれた吉田 羊は「爆笑に次ぐ爆笑でした。ハムレットでこんなに笑えるんだ、って」と答え、会場の笑いを誘った。

PARCO PRODUCE 2024『ハムレットQ1』初日前会見 牧島 輝

男性役を演じることについて問われると、吉田 羊は「これといって男役を意識した役作りはしておらず、声を低く発生するぐらいは意識しているが、私自身よりも特にホレイショー役の牧島さんが私の体に触れるお芝居が割とあるので、そこが少し遠慮させてしまうかな、と心配はあった。今回は女性である私が演じるからこその、女性としての身体機能を逆手に取った演出を受けているので、そこはぜひ楽しみにみていただきたい」と語った。それを受けて牧島は「正直遠慮する部分も多少なりとあったが、羊さんは最初から「全然遠慮しなくていいよ」と言ってくれたのであまり意識せずに僕的には楽しんでやれた」と自身の思いを述べた。

PARCO PRODUCE 2024『ハムレットQ1』初日前会見 大鶴佐助

『ジュリアス・シーザー』(2021年)に続き2回目となる森新太郎演出について吉田 羊は「相変わらず情熱的で、百本ノックも含めて厳しさは健在だったが、最難関の『ハムレット』という作品の大変さをよくご存じだからこそ、休憩を取りたがらない森さんが役者の体や声のことを懸念して休憩を取ってくださっていた。今回も休憩なしで9時間稽古するのかな、と覚悟していたので、それは嬉しくもあり驚きでもあった」と明かした。

稽古を経て本作への思いに変化はあったかを問われると、吉田栄作は「この作品と向き合って、命の尊さ、儚さを感じる毎日だった」、飯豊は「私は舞台の経験が少ないということもあり、何もかもが新鮮。本作はキャラクターの心情がセリフにすべて書かれているのでそこに救われている」、牧島は「シェイクスピアはなんとなく自分から遠い存在のように感じていたが、やっていくうちに登場人物が人間味にあふれていて、シェイクスピアも僕と同じ人間なんだなと身近な存在に感じられた」、大鶴は「小さい頃から『ハムレット』は何本も見てきたが、出演するのは初めて。劇構造もそうだしセリフのメタファーもそうだが、なぜこんなにいろんな人が『ハムレット』を創作してきたのか、作品の中に入って気づけることがたくさんあった」、広岡は「ずっと昔に書かれた作品だが、やってみるとそんなに前のことではなく、私たちが日々感じている感情と何ら変わらないんだな、と思った」とそれぞれ述べた。

PARCO PRODUCE 2024『ハムレットQ1』初日前会見 広岡由里子

最後に吉田 羊が「演出の森さんが一人ひとりのキャラクターに愛情を持って作ってくださった。この群像劇において一人も埋もれることなく、それぞれのキャラクターがとても魅力的に出来上がっている。お客様にはご自身を投影していただいたり身近な方を投影していただいて、自分事として楽しんでいただけたら嬉しい。登場人物はどこか孤独で哀しく切なく、人生で何かしら失いながら生きている人たち。でもその先に救いがあるというところに向かって、美術セットや音響や照明など各セクションの皆様が力を尽くして美しく幻想的な世界観を作り上げてくださっているので、それを見てもらいたい」と語り会見を締めくくった。

PARCO PRODUCE 2024『ハムレットQ1』初日前会見


プレスコール

まず公開されたシーンは第2場。デンマーク王が急死して、夫を亡くした王妃ガートルード(広岡由里子)と結婚した王の弟クローディアス(吉田栄作)が王の座につく。幸せそうに笑う母と叔父を悲しみに沈んだ表情で見つめるハムレット(吉田 羊)のところにホレイショー(牧島 輝)がやってきて、ハムレットの父とそっくりな亡霊が現れたと話し始める。

PARCO PRODUCE 2024『ハムレットQ1』プレスコール

PARCO PRODUCE 2024『ハムレットQ1』プレスコール

吉田 羊は佇まいから、繊細で内省的でありながらも、まっすぐで熱いものを内に秘めた青年ハムレットの姿を体現している。吉田栄作はクローディアスの新しい王としての威厳と頼もしさを見せるが、その穏やかさゆえに本心の見えない人物像をうかがわせる。広岡のガートルードも夫を亡くしたばかりとはとても見えない落ち着きぶりで、ハムレットの憂う姿との対比がくっきりと見える。大鶴は、新王・クローディアスに希望に満ちた瞳でフランスへ行くことを語り、レアティーズの清廉さを感じさせる。牧島は、ハムレットが恐らく唯一心を許せるであろうホレイショーを、温かな人間味で魅力的に立ち上げる。

PARCO PRODUCE 2024『ハムレットQ1』プレスコール

PARCO PRODUCE 2024『ハムレットQ1』プレスコール

そして続いて公開された第7場では、ハムレットの独白の後、オフィーリアが登場して2人の激しいやり取りが展開される。正気と狂気の狭間にいるハムレットの変化を、吉田 羊は鮮やかな切り替えで巧みに演じ分ける。そんなハムレットに戸惑いと恐怖を覚えながらも純粋な愛情を向けるオフィーリアを、飯豊が可憐な存在感で見せる。

PARCO PRODUCE 2024『ハムレットQ1』プレスコール

PARCO PRODUCE 2024『ハムレットQ1』プレスコール

堀尾幸男による美術が圧倒的な力を持って本作の世界観を可視化している。ひび割れた大地は舞台下手後方に向かって丘のような斜面を作り、そのまま空に続いているように見える。人間の暮らす地面の不穏さが空間を侵食し、そのまま天をも脅かそうとしているかのようだ。『ハムレット』という作品が時代も国も超えて広く人々を魅了している理由のひとつは、作品世界を支配する「不穏さ」なのかもしれない。生きることにはどうしても不穏がつきまとい、そこをどう乗り越えるかが人生における課題でもある。本作において、果たしてハムレットはどうするべきだったのか。

PARCO PRODUCE 2024『ハムレットQ1』プレスコール

PARCO PRODUCE 2024『ハムレットQ1』プレスコール

“To be or not to be that is the question.”

ハムレットの独白に出てくる最も有名なセリフが改めて見るものの心に刺さる作品になっていることだろう。本番を迎え、本作の全貌が観客にお披露目されることが待ち遠しい。

PARCO PRODUCE 2024『ハムレットQ1』プレスコール



取材・文・撮影=久田絢子

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