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お笑いと千利休。佐久間宣行×糸井重里対談 #9

ほぼ日

元テレビ東京のプロデューサーで、現在はフリーで活躍する佐久間宣行さん。
著書『ずるい仕事術』をきっかけに、ほぼ日代表の糸井重里と対談していただきました。
テーマは「はたらく」について。
全12回でおとどけします。
第9回。お笑いというジャンルが日本のカルチャーに深く沁みたことによっておきた、経済構造の変化について。


糸井
この前、久しぶりにジャルジャルのライブを観たんです。

佐久間
はい。

糸井
そのとき見たネタのひとつが、わざと「つまんない」という時間を作って、「それっておもしろいよね」というコントをやってたんです。

佐久間
やりますね(笑)。

糸井
それ、ひでえことやってるわけですよ。「つまんない」をコントロールするって、料理人に例えると「ふきのとう」を最初に使った人みたいなことでしょ?

佐久間
ハハハハハ。

糸井
で、そのまんまでもダメですよね。つまり、ずっとその芸をやってるとお客さんは増えないよっていうところもある。でも彼らはそれをやれちゃってるんだよね。

佐久間
ジャルジャルはまた一歩違うところに行ってますね。お笑いとアートの間の、誰も行ってないところへ行こうとしてる。

糸井
どっちの脳みそから出たんだかわかんないっていうのも、ねぇ。

佐久間
芸人たちの間では、「いい加減『キング・オブ・コント』取れや」って思ってたらしいです。「ジャルジャル毎年出てくんな」って(笑)。

糸井
そうか(笑)。

佐久間
たまたま賞が取れてないだけで、ジャルジャルがチャンピオンに相応しいのは、もう芸人みんなが知ってると。だから「頼むから取ってくれ」って芸人みんな思ってたみたいです。

糸井
すごいね。

佐久間
さっき糸井さんもおっしゃったように、ジャルジャルさんからテレビバラエティーのタレントまで、「お笑い」というジャンルは日本のカルチャーの深くに沁みましたよね。

糸井
沁みた。

佐久間
いいか悪いかは置いといて、そこまで沁みちゃったから、逆にお笑い芸人がワイドショーのコメンテーターまでするようになって、それでスキャンダルに弱くなってしまった(笑)。

糸井
そうだねー。

佐久間
昔はスキャンダルがあっても、「お笑いの人だから」というのがどこかあったじゃないですか。

糸井
あった。

佐久間
でも、お笑いというカルチャーがいろんなところに沁み込んで、存在がパブリックになってしまったゆえに、逆に苦しんでる芸人さんもいると思います。「自分たちは芸人だったのに、あれ、ちゃんとしないとダメなの?」って。

糸井
仕事になっちゃうっていう経済構造ができちゃったからね。

佐久間
そうなんです。

糸井
コメンテーターみたいに、「この人に聞いてみましょう」という存在になっちゃったんだけど、でもその例って日本の歴史で、すでに1回ありましたよね。

佐久間
え?

糸井
茶の湯。

佐久間
ああーー。

糸井
武器になっちゃった。

佐久間
武器になった‥‥。

糸井
だから千利休は最終的には殺されるんですよ。

佐久間
本当はカルチャーとしてやってたはずなのに。

糸井
日本の美を語るときに、「茶の湯をやらずには言えない」みたいなこと言われますよね。でも、あれってある意味では、全部千利休っていう人の趣味でしょう?

佐久間
そうですね。

糸井
いわゆるキュレーターですよね。それを殿様が「俺も習う」と言ったから、「こっちは美しい、こっちは美しくない」があんなに広がってしまった。
最終的に千利休は権力に一番近いところにまで行って、「お前、ちょっといると困るんだけど」と‥‥。でも、茶の湯は残ったよね。あの時代に広がったカルチャーが、いまでもずっと日本に残ってる。

佐久間
そのうちお笑いもそうなりますかね。ゼレンスキー大統領みたいな人が日本にも現れて。

糸井
あの人はだから、茶の湯の千利休ですよね。

佐久間
千利休ですね。もし日本のお笑いが権力とつながって、お笑いのカルチャーが行くところまで行ってドンガラガッシャンになるなんてことも‥‥。

糸井
かもしれない。ゼレンスキーがコメディアンだった話と、いまの日本のものすごいお笑いブームと、それから二枚目のウィル・スミスが殴った相手がコメディアンだったとか。

佐久間
はいはい。

糸井
そもそもあの人だって、「それで笑えるの?」みたいな綱渡りみたいなお笑いを作って人気者になっていった人でしょう。

佐久間
ですよね。

糸井
全部こう、笑いが安心なエリアじゃないところで、いまみんなが見てるっていう。

佐久間
いまので思い出しましたけど、ぼくの世代にとっては、ダウンタウンさんが『HEY!HEY!HEY!』でMCやって、いままでかっこつけてたアーティストの頭を、浜田さんがバチーンって叩いた瞬間に‥‥。

糸井
ああ(笑)。

佐久間
ぼくは10代とか20代前半だったんですけど、「あれ、お笑いのほうがかっこいいかも?」って。そのカルチャーショックは、ぼくら世代から下は1回あったと思います。『HEY!HEY!HEY!』ショックがあったと思う。

糸井
そうだね。

佐久間
そういうことの積み重ねなんでしょうね。お笑いの文脈が複雑になりながら、パブリック化していった理由というのは。

(出典:ほぼ日刊イトイ新聞「 知恵と武器と感度。(9)お笑いと千利休。」)

佐久間宣行(さくま・のぶゆき)
テレビプロデューサー、演出家、作家、ラジオパーソナリティ。
1975年福島県いわき市生まれ。元テレビ東京社員。
『ゴッドタン』『あちこちオードリー』などの人気番組を手がけるプロデューサー。
2019年4月からはニッポン放送『佐久間宣行のオールナイトニッポン0』ラジオパーソナリティを担当。
2021年3月に独立。YouTubeチャンネル「佐久間宣行のNOBROCK TV」を開設。
2022年3月からNetflixオリジナル番組『トークサバイバー!』が全世界配信中。
著書に『普通のサラリーマン、ラジオパーソナリティになる』(扶桑社)。

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