井上尚弥の標的ニック・ボールが弱点露呈? TJドヘニーにTKO勝利でフェザー級王座防衛
膝蹴りあり、首投げありのラフファイト
プロボクシングのWBAフェザー級タイトルマッチが15日(日本時間16日)、イギリス・リバプールで行われ、王者ニック・ボール(28=イギリス)が同級6位テレンス・ジョン・ドヘニー(38=アイルランド)に10回終了TKO勝ちで2度目の防衛を果たした。
試合は荒れた展開となった。1回終了のゴングが鳴っても王者の頭部に腕を巻き付けて離さないドヘニーに対し、怒ったボールがドヘニーのお尻に膝蹴りすると、ドヘニーはわざとらしく倒れ込む。王者の反則行為を、挑戦者がサッカーの「シミュレーション」ばりのパフォーマンスでアピールする泥仕合の始まりだった。
6回にはクリンチに来たドヘニーをボールが投げ飛ばしてスリップ。さらに9回には、またしてもボールがドヘニーを首投げのような格好で投げ飛ばし、レフェリーが減点1を宣告した。14日の前日計量でもあわや乱闘寸前となった2人の戦いは、クリーンとは決して言えないファイトだった。
しかし、身長157センチと小柄ながら攻撃力で勝る王者は、166センチの挑戦者への突進をやめない。序盤こそドヘニーのパンチをもらうシーンもあったが、パワフルな左右フックをヒットして38歳のベテランのスタミナを削ぎ落していく。
10回にもロープに詰めて猛攻を仕掛け、挑戦者の右目を腫れ上がらせると、辛くもゴングに救われたドヘニーは11回開始を待つことなくギブアップした。
ボールはこれで22勝(13KO)1分けと無敗をキープ。昨年9月に世界スーパーバンタム級4団体統一王者・井上尚弥(31=大橋)に敗れて以来の再起戦だったドヘニーは26勝(20KO)6敗となった。
ボールは攻め込まれると弱い?
井上尚弥は5月4日にアメリカ・ラスベガスでラモン・カルデナス(アメリカ)と防衛戦を行い、勝てば9月に東京でWBAスーパーバンタム級暫定王者ムロジョン・アフマダリエフ(ウズベキスタン)と統一戦。それもクリアすれば、12月にサウジアラビアで1階級上のボールと5階級制覇を懸けて戦う計画が報じられている。
スーパーバンタム級で防衛戦を消化しながらフェザー級で戦える体を作り、着々と準備を整えているモンスターにとって、この日のボールの出来なら5階級制覇は難しくないだろう。
ドヘニーのパンチを受けて真っすぐに下がるシーンもあったフェザー級王者は攻め込まれると弱い。ファイターにありがちだが、前に出てパンチを振り回してこそ本領を発揮するタイプだ。
その突進力と旺盛なスタミナは目を見張るものがあるとはいえ、スピードで勝る井上がコントロールすることは十分に可能。バンタム級から上げていきなりスーパーバンタム級王座に挑戦したフルトン戦の方がリスキーだっただろう。
むしろ怖いのは、この日のようなダーティーファイトを繰り出してきた場合。アクシデントに巻き込まれて出血するなど実力をフルに発揮できなくなるリスクも頭に入れて戦う必要がありそうだ。
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記事:SPAIA編集部