【9/8 皆既月食】 見るべきポイントを富山科学博物館の学芸員が解説! オンライン観察会「中継!深夜の皆既月食を見よう」も
9月8日は満月。
そして、2022年11月8日以来、約3年ぶりに日本全国で皆既月食が見られます。
今回は、真夜中に起こるので、眠気との勝負は避けられません。ですが、皆既月食の状態が長く続くため、観測としては好条件が期待できそうです。
月食は望遠鏡などの道具を使わなくても肉眼で十分楽しむことできる天文現象で、富山市科学博物館では、オンライン観察会「中継!深夜の皆既月食を見よう」を開催します。見どころもあわせて、天体担当の学芸員さんに教えてもらいました。
月食が起きるのは満月のころ
月食は、地球の影に入って月が欠けて見える天体現象です。
月食は、太陽と地球、月が一直線に並ぶとき、つまり、満月のころだけに起きるのですが……あれ、でも三日月とか半月のように、月が欠けて見えることってあんまり珍しくないですよね?
月食と三日月って、何が違うのでしょうか?
月食について学ぶ前に、まずは「月の満ち欠け」についておさらいしてみましょう。
どうして月は満ち欠けを繰り返すの?
月は地上から見るととっても明るいですが、自ら光っているわけではありません。
月も地球も、太陽の光を反射して輝いている天体です。
そして、月は地球の周りをぐるぐると回っています。
そのため、上の図のように、月が太陽と同じ方向にあるときは、地球から月が見えない状態、つまり「新月」となります。この新月のときを月齢0日と数え、月の満ち欠けがリセットされると考えましょう。月は地球の周りを約29.5日かけて回っていて、日が経つにつれて「新月→上弦(半月)→満月→下弦(半月)→新月」といった満ち欠けを繰り返していきます。
図を見るとわかる通り、太陽と月が180度離れたとき、つまり一直線に並んだときが満月のころです。29.5日に1度、つまり約1か月に1回の頻度で満月が見られるのはこのためです。
月食ってなに?
では、月食とはどういう状態なんでしょうか?
太陽の光は地球にも当たっていて、その光による影が太陽とは反対の方向に伸びています。この地球の影の中を月が通過することによって、月が暗くなったり、欠けたように見えたりします。これが「月食」です。
そのため、月食が起きるのは必ず地球を挟んで太陽と月が反対側にあるとき、つまり太陽と地球、月が一直線に並ぶ満月のころとなるのです。
それでは、満月のたびに月食が起こるのかというと、そうではありません。
地球の周りをまわる月の軌道は、傾いています。
ふだんの満月は地球の影の北側や南側にそれたところを通っています。そのため、月の表側全面が輝いて見え、丸い満月として見ることができます。逆に、地球の中心に近いところを通るときは影の中を通ることになり、月食が起きることになります。
2025年9月8日の月食はいつどこで見られる?
皆既月食は9月8日未明、日本各地で見られます。
9月7日の夕方に昇った月は、日付が変わった8日の午前1時27分に欠け始めます。完全に月が地球の影に入る皆既月食は、2時30分から3時53分までの約1時間20分。その後4時57分に部分食が終わります。
食の始まり・終わりなどの経過時刻は、全国どの場所で見ても同じです。
ちなみに、9月7日の富山市では、月の出の時間は17時58分。
日付が変わって8日の満月の瞬間は3時10分ごろとなります。
次回は2026年3月3日 夕方ごろ
今回の皆既月食は、深夜から未明にかけての遅い時間帯となります。
小さな子供たちや夜更かしがつらいという人には、次回の2026年3月3日、夕方から夜にかけて見られる月食が観測しやすいかもしれません。
オンライン観察会「中継!深夜の皆既月食を見よう」
開催日:9月8日(月)
時 間:午前1:15~4:00
配 信: 富山市科学博物館公式YouTube チャンネル
※雨天・曇天時は中止
※博物館での観察会はありません
皆既食中の月が「赤銅(しゃくどう)色」に見えるのはどうして
皆既月食を見たことがある人なら、「月がまったく見えなくなるわけじゃなく、赤黒く見えるんだ」と思った人も多いのでは?
実はこれは、朝日や夕日が赤く見えるのと同じ理由なんです。
地球の周りには大気(空気の層)がありますが、これが大きなレンズのような役目を果たしています。
虹が七色に見えるように、太陽の光にはいろいろな色の光が混ざっています。この光が大気の中を通過する際、波長(電磁波の波の長さ)の長い赤い光は散乱されにくく、大気を通過することができます。このかすかな赤い光が宇宙空間まで残って皆既食中の月面を照らし、月が赤黒くより遠くまで見えるのです。
ただし、地球の大気中のチリが少ないときには、大気を通り抜けられる光の量が多くなるため、オレンジ色のような明るい色の月が見られます。
一方、大気中にチリが多いと、大気を通り抜けられる光の量が少なくなるため、影は暗くなり、灰色に見えたり、あるいは本当に真っ暗で月が見えなくなったりするそうです。
9月の満月“コーンムーン”とは?
古くから月は、満ち欠けに応じて世界中でさまざまな呼ばれ方をしていました。
日本では…
たとえば、陰暦15日の月を「十五夜」と呼ぶのもそのひとつ。
陰暦16日の月は「十六夜」と書き、「いざよい」と読みます。「いざよう」はためらう・躊躇するの意で、十五夜よりも少し遅い時間に、ためらいがちに出てくる月という意から名づけらました。
十七夜は、月の出を待ちわびて、月を立って待っていたことから「立待月(たちまちづき)」と言います。日本人が月の出を待ちわびている様子や感性がうかがえますね。
アメリカの農事暦による月の名称
最近は“ストロベリームーン”や“ハーベストムーン”などという呼び名を耳にしますが、これは、アメリカ先住民が満月に名前をつけて季節を捉えていたことにちなんでいます。
9月は「Corn Moon(コーンムーン)」で、とうもろこしを収穫する頃という意味。日本でも実りの秋を迎えた9月の満月。空気も澄んできて夜空が一層輝きを増す季節ですね。
(Farmer's Almanac )
1月/Wolf Moon/オオカミが空腹で遠吠えをする頃
2月/Snow Moon/雪で狩猟が困難になる頃
3月/Worm Moon/土からミミズなどが顔を出す頃
4月/Pink Moon/フロックス(Phlox)というピンクの花が咲く頃
5月/Flower Moon/花が咲く頃
6月/Strawberry Moon/イチゴが熟す頃
7月/Buck Moon/雄鹿の新しい枝角が出てくる頃
8月/Sturgeon Moon/チョウザメが成熟し、漁を始める頃
9月/Corn Moon/とうもろこしを収穫する頃
10月/Harvest Moon/収穫時期
11月/Beaver Moon/毛皮にするビーバーを捕獲するための罠を仕掛ける頃
12月/Cold Moon/冬の寒さが強まり、夜が長くなる
【富山市科学博物館】
住所 富山県富山市西中野町1丁目8-31
営業時間 9:00~17:00(入館は16:30まで)