【国の登録有形文化財】花街新潟の残影を令和に伝う、旧割烹有明の建物三棟が新規登録へ
国の有形登録文化財登録に向けて答申が出された「旧割烹有明」
国の文化審議会は7月19日、新潟市に所在する3棟の建造物を含む全国158棟の建造物を、新たに登録有形文化財に登録するよう、文部科学大臣に答申した。
これで同市に所在する国の登録有形文化財(建造物)は40件(129棟)となった。
新規登録の答申がなされたのは、新潟市中央区古町通の「旧割烹有明表棟」「旧割烹有明中棟」「旧割烹有明奥棟」の3棟。
二階の窓が狭い路地に張り出すような造形は、昔ながらの古町の景観を残す
登録文化財制度は平成8年、文化的建造物を、街づくりや観光資源として活用しながら残していく方針のもと文化財保護法が改正され生まれたもの。登録有形文化財の登録基準は、原則として建設後50年を経過し且つ①国土の歴史的景観に寄与しているもの②造形の規範となっているもの③再現することが容易でないもののうち1つに該当するものとされている。
表棟二階大広間
千鳥の透かし彫りを配した欄間
「割烹有明」は明治40年(1907年)に創業。3棟のうち最も古い表棟は明治43年に建造されたもの(中棟は大正13年、奥棟は昭和3年の建造)。表棟と中棟は昭和33年に増築されている。
大正~昭和にかけて華やかだった新潟花街だが、その後衰退の一途をたどり、有明も2016年に廃業して109年の歴史に幕を閉じる。その後2020年に愛宕神社(新潟市中央区)の所有となり、現在は新潟三業協同組合が入居して古町芸妓の控室や芸事の稽古などに使用されている。
窓のすりガラスは明治のもの。割れたら修復不可能か
新潟市文化スポーツ部歴史文化課の説明によると、旧割烹有明の建物は明治大正の上質な料亭建築で、二階の窓が路地にせり出しているなど、古町花街の代表的な建築様式であることから「造形の規範となっているもの」と評価されているとのこと。
中棟にある18畳の座敷には、瘻つき銘木の床柱が、大正期の豪気な文化を伝える
現在、この建物に入居している新潟産業協同組合の阿部毅事務長
記者会見の席上、三業協同組合の阿部毅事務長は「関係性の深いイタリア軒と連携しながら、観光資源としての活用も考えていきたい」とし、ホテルイタリア軒の高野潤総支配人も「イタリア軒で運営する割烹蛍の『芸妓鑑賞プラン』に加え、旧割烹有明も合わせてご案内できればと考えている。合わせてインバウンド需要にも期待したい」と今後の計画を語った。
現所有者である愛宕神社・池田弘宮司(NSGグループ会長)は「愛宕神社も江戸時代から続くお宮として地域の皆様に支えられてきたこともあり、有明をしっかり維持して地域活性化に役立てたい」と話した。
旧割烹有明を所有する愛宕神社の池田弘宮司(NSGグループ会長)