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ピアニスト亀井聖矢、更なる飛躍のステージへ! 東京オペラシティ凱旋は「大切なレパートリーを集め、150%の全力でぶつけます」

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亀井聖矢

2021年7月25日(日)ピアニスト亀井聖矢(かめい・まさや)が東京オペラシティ コンサートホールにてソロ・リサイタルを開く。会場となる東京オペラシティは、2019年、亀井が日本音楽コンクールで優勝した際に演奏した思い出深いホールだ。2年ぶり凱旋となる同ホールでのコンサートへの意気込みを聞いた。

◆「集大成」として臨むソロ・リサイタル

亀井聖矢

――亀井さんは2019年の日本音楽コンクールで優勝された際に、東京オペラシティ コンサートホールで演奏されていますが、今回のリサイタルで再びステージに戻られることになりますね。

日本音楽コンクールのファイナルおよび受賞者記念コンサートは、どちらも協奏曲を演奏しましたので、ソロ・リサイタルという形でこのステージに戻れることがとても嬉しいです。箱型のホールで、弱音の繊細さ、迫力ある響きの豊かさが印象に残っています。

――今回のリサイタルは、ラフマニノフのソナタ第2番、リストの「ラ・カンパネラ」、そしてバラキレフの「イスラメイ」がプログラムとして発表されていますね。選曲のポイントを教えてください。

ラフマニノフは、この5月に初めて本番で演奏したばかりの、最近になって取り組んだもっとも規模の大きな作品です。もともとの1913年版と、1931年の改訂版、そのほかホロヴィッツ版もありますが、より音楽的に洗練され、聴き馴染みのよい1931年改訂版で演奏したいと思います。

「ラ・カンパネラ」は最も長く弾いてきたレパートリーの一つです。YouTubeには10歳の頃の僕が弾いている動画も上がっています(笑)。パガニーニの原曲は元気な印象もあり、この作品を活発に弾く人は多いですね。でも僕はしっとりした感じというか、リストが選んだ嬰ト短調の悲しげな表情を大事にしたいと思っています。

「イスラメイ」は、2019年にピティナ特級グランプリを受賞したときに、セミファイナルの最後に演奏した作品で、その後の僕の人生を変えてくれた作品でもあります。「世界で一番難しい曲」として知られていますね。しばらく弾かずに温めていたので、今回のリサイタルでぶつけようと考えました。

◆超絶技巧のその先へ

亀井聖矢

――いずれも超絶技巧を要する難曲ばかりです。ヴィルトゥオージティ(高い演奏技術)はやはり亀井さんの演奏の大きな魅力ですね。

高い運動性が可能な年代というのはどうしても限られていると思いますし、技巧的な高度さや華やかさは、ある面では大事です。でも、それだけを全面的に押し出すというのではなく、技巧を通じてどういった音楽を表現したいのか、技術の先にある音楽的な仕上がりにこそ重点を置きたいと考えています。

たとえば、ラフマニノフの「ソナタ第2番」は技巧的に書かれているからこそ、スッと先へと簡単には進めない葛藤や、心の複雑さが感じられる演奏にしたい。どんな作品も、ただ派手に技巧的であることをアピールしているのか、それとも音楽的に必然だからこそ置かれた音符なのかということを、きちんと考えなければいけないですね。指が回るだけの薄っぺらい演奏になってはいけませんから。

――音楽的な内容の充実をはかるために、亀井さんはどのようなことを意識しますか?

たとえば、それぞれの作曲家たちが、その時代ゆえに直面していた政治情勢や医療の未発達による苦しみや葛藤があれば、想像力を働かせてその精神に寄り添いたいと考えます。もちろん根底から理解することはできませんが、ラフマニノフの重厚でエモーショナルな和声進行に、そうした思いを感じ取ることができると思います。

◆プログラムの有力候補は?

亀井聖矢

――現段階で(6月中旬現在)発表されているプログラムは、この3作品以外にも「ほか」とありますが、どういった作品をお考えですか?

本番までに、自分の最良と思えるものを決めていきたいと思っていますが、今ひとつの候補として考えているのはラヴェルの作品です。バラキレフの「イスラメイ」は、確かに「世界で一番難しい」と言われていますが、その後ラヴェルが、その難度を超えるものとして組曲「夜のガスパール」の「スカルボ」を作ったというエピソードがよく知られています。おどろおどろしい雰囲気で、僕の大好きな作品です。プログラムにミステリアスな雰囲気が加わって、いいかもしれない。有力候補です。

――「夜のガスパール」については、亀井さんはYouTubeチャンネルで解説動画も公開されていますね。こうした動画はどのような思いで作られているのでしょうか。

動画として公に出すには、発言に責任を持たなければいけないので、歴史的なことや、他の芸術との影響関係など、裏付けをしっかり調べたり、自分自身でも深く考えるようになりますね。それが自分にとって大きな勉強になるのです。僕は作曲もするので、作品分析をするモチベーションにもなります。また、見てくださった方が、作品について知った上でコンサートに来られれば、さらに楽しみが広がるのではないかと思います。動画制作は一石二鳥、三鳥くらいの意味がありますね。

あと何年かして、同じ題材でお話しても、きっと違った内容になると思います。今僕が感じていることの記録でもあり、それをみなさんと共有したいという気持ちもあります。

◆飛躍のステージと、その先の展望

亀井聖矢

――この1年、コロナ禍においてコンサートの数は限られていたと思います。それだけに、本番のステージが持つ意味や価値は大きいですね。

どれだけ長時間練習するよりも、一回の本番のほうが大きな価値がありますね。練習の時は本番をイメージしながら、本番ではいつものように弾くようイメージしていますが、実際には本番にならないと出ない勢いやエネルギー、これまで出せなかった表現が出せることもあります。また、自分の弱点にも気づくことができ、本番の数を重ねることで、自分自身の成長を感じることもできます。

今回の公演は、その中でも大きな飛躍のステージにしたいので、自分の大切なレパートリーを集め、150%の全力をぶつけて、必ず成功させたいと思っています。

――今の亀井さんの「集大成」としてのリサイタル、とても楽しみです。その成功後には、どのような展望をお持ちですか?

ソロのステージを成功させたのちは、協奏曲や室内楽のお話しもいただいているので、そちらのレパートリーも増やしていきたいですね。今はヴィルトゥオーゾ・ピースを集めたプログラムが多いですが、歌心で聞かせるようなレパートリーにも取り組みたいですし、古典派のように音数の少ない作品でも勝負していきたいです。また海外を視野に入れて、国際コンクールへの挑戦もしたいです。自作自演も行いたいですし、他の作曲家による新作初演など、新しい音楽を広めていくという活動も楽しいだろうなと思います。やることいっぱいですね(笑)。

取材・文=飯田有抄 撮影=池上夢貢

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