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アニメ好きなあなたにもきっと刺さる! 今からでもよくわかる“聴くボカロダークファンタジー”『悪ノ大罪』シリーズ入門

アニメイトタイムズ

写真:アニメイトタイムズ編集部

物語性のあるボーカロイド楽曲のなかでも、パイオニア的な作品として知られる『悪ノ大罪』シリーズ。2008年に「悪ノ娘」が投稿されて以降、現在まで愛され続けています。小説やマンガ、舞台でのメディアミックスに加え、2021年には『プロジェクトセカイ カラフルステージ! feat. 初音ミク』でも一部の楽曲が実装されました。

本楽曲群について「ボカロシーンで流行した曲」というイメージの人もいれば「有名な曲は聞いたことがあるけれど詳しくは知らない」という人もいるのではないでしょうか。そこで本記事では、そんな『悪ノ大罪』シリーズを改めておさらい!

シリーズの概要や魅力、おすすめの楽しみ方などをご紹介します。最近ボカロにハマった人、『プロセカ』で楽曲を聴いたことがある人、当時のボカロシーンを追っていた人なども! ぜひ『悪ノ大罪』シリーズの世界をのぞいてみてください。

『悪ノ大罪』シリーズとは?

“シリーズ”と呼ばれているとおり、いくつものボーカロイド楽曲によってひとつの壮大な物語を織りなすのが『悪ノ大罪』。マンガや小説ではなく、音楽のシリーズものという点が特徴的です。

まずは、そんな『悪ノ大罪』シリーズの基本情報をご紹介します。『悪ノ大罪』シリーズにはじめて触れる方はもちろん、昔聴いていたという人もぜひおさらいしてみてくださいね。

作者はmothy_悪ノPさん

『悪ノ大罪』シリーズを手掛けるmothy_悪ノPさんは、2008年からボカロPとして活動しています。同年4月にニコニコ動画にアップされた鏡音リンの「悪ノ娘」と、鏡音レンの「悪ノ召使」が話題となりました。ニコニコ動画での再生回数は「悪ノ娘」が351万回、「悪ノ召使」は515万回を記録しています。

2010年8月には小説『悪ノ娘 黄のクロアテュール』を執筆し、文筆家としての活動もスタート。こちらはボーカロイド楽曲をもとにした、初めての小説でもあります。さらに同年12月、1stアルバム『悪ノ王国 〜Evils Kingdom〜』の発売とともにメジャーデビューを果たしました。

また、鏡音リン・レンや初音ミクだけでなく、弱音ハクや神威がくぽといったボーカロイドの楽曲も次々に制作しています。

七つの大罪をモチーフにした千年に及ぶ群像劇

『悪ノ大罪』シリーズの中心となる7曲は「七つの大罪」がモチーフになっています。「傲慢・嫉妬・憤怒・怠惰・強欲・悪食・色欲」それぞれを司る楽曲があるのです。

さらに7つの楽曲は、主に架空の土地「エヴィリオス地方」を舞台とした物語としてつながっています。曲によって時代や国が異なり、全体で約千年にも及ぶ壮大な群像劇です。ここで、各楽曲に対応した七つの大罪をまとめながら、時系列順に並べてみました。

1.【136年】ヴェノマニア公の狂気(色欲)
2.【325年】悪食娘コンチータ(悪食)
3.【500年】悪ノ娘・悪ノ召使(傲慢)
4.【609年】眠らせ姫からの贈り物(怠惰)
5.【842年】円尾坂の仕立屋(嫉妬)
6.【983年】悪徳のジャッジメント(強欲)
7.【993年】ネメシスの銃口(憤怒)

それぞれ1曲で物語が完結するので、どこから聴いても大丈夫。たとえば「悪ノ娘」は、鏡音リン扮するリリアンヌ王女が治める王国の栄光と没落を描いています。一方で「悪徳のジャッジメント」は、金さえもらえれば黒も白にしてしまう裁判官ガレリアン=マーロンの物語。楽曲ごとに設定や展開、曲調が違います。

<次ページ:物語の入り口になる代表曲を「悪ノ娘」「悪ノ召使」からおさらい>

物語の入り口になる代表曲「悪ノ娘」「悪ノ召使」

『悪ノ大罪』シリーズを代表する曲といえば、「悪ノ娘」と「悪ノ召使」。シリーズの原点であり、mothy_悪ノPさんの世界観をたっぷりと味わえる2曲でもあります。

鏡音リン「悪ノ娘」

架空の国ルシフェニア王国で、14歳にして王女となった少女の物語。「オーホッホッホッホ。さあ、ひざまずきなさい!」という曲の始まり方は、まるで舞台の幕開けのようです。

一国の盛衰と王女の運命をわずか4分半で描いた、映画のような曲。

鏡音レン「悪ノ召使」

「悪ノ娘」のストーリーが、王女付きの召使であるアレン視点で展開されます。

壮大な歴史モノのような「悪ノ娘」に対し、「悪ノ召使」は14歳の少年少女のヒューマンドラマ。同じ物語をなぞりながら、その背景で起きた出来事を知ることができます。

ちなみに、この2曲はmothy_悪ノPさんによる小説『悪ノ娘 黄のクロアテュール』も出版されています。『悪ノ大罪』シリーズとは異なり、「悪ノ娘」にフォーカスしたシリーズです。「悪ノ娘」と「悪ノ召使」の世界にもっと浸りたい人にもオススメ!

『悪ノ大罪』シリーズの魅力は?

2008年から現在に至るまで、大勢の心をひきつけている『悪ノ大罪』シリーズ。多くの人に愛される理由について考えてみました。

中毒性のある楽曲

『悪ノ大罪』シリーズの柱となる7曲は、どれも中毒性の高さが魅力です。

風景が目に浮かぶような世界観を色濃く反映したイントロに、変則的だからこそクセになるリズム、そして耳に残るメロディ。さらに、ストーリーの起承転結に合わせて3回から4回繰り返されるサビは、思わず口ずさみたくなるほど強烈な印象を残します。

〈君は王女 僕は召使〉(悪ノ召使) 〈だけど仕事は頑張らなきゃ 鋏を片手に一生懸命〉(円尾坂の仕立屋) 〈眠りなさいこのgiftで よく眠れるこのgiftで〉(眠らせ姫からの贈り物)

このように、楽曲のテーマやキャラクターの性格などを的確に表現したフレーズにも注目です。「悪ノ召使」を除く6曲は、主人公それぞれのセリフもあります。

「さあ、踊ろうか」(ヴェノマニア公の狂気) 「さあ、ひざまずきなさい」(悪ノ娘) 「さあ、懺悔なさい」(ネメシスの銃口)

曲のスタートやサビの前などにセリフが入り、直後にかっこいいイントロが流れ出す緩急に引きこまれること間違いなし。曲調も様々なので、お気に入りの一曲が見つかるでしょう。

1曲から味わえる濃厚な“読後感”

音楽を聴くと、一冊の本を読み終えたような満足感が得られるのも『悪ノ大罪』シリーズの醍醐味。一曲ごとにストーリーが完結しており、そのすべてに思いもよらない結末が待っています。

“悪ノ”という名前のとおり、主人公たちはみな“罪”を犯します。しかしそれぞれ、悪に手を染める理由があるのです。悲しい過去や大切な人への思いなどが、歌詞やミュージックビデオの演出でほのめかされます。主人公たちの背景に何があるのか、それが七つの大罪とどうつながるのか、考察をしながら聴くのもおすすめです。

さらに、単に出来事を追うだけでなく、主人公の心理描写がされている点も「物語を読んだ」という感覚を強めてくれます。特にわかりやすい例として、「悪ノ召使」の歌詞をご紹介しましょう。

期待の中僕らは生まれた 祝福するは教会の鐘
(中略)
僕が君を守るから 君はそこで笑っていて

1行目は出来事、次の行には主人公(アレン)の感情が描写されていて、まさに小説のよう。キャラクターたちの感情がメロディとともに伝わり、共感したり考えさせられたりするからこそ『悪ノ大罪』シリーズの楽曲は物語として心に残ります。

何気ない歌詞が伏線に

ストーリー仕立ての楽曲だからこそ、伏線回収の気持ちよさがあります。特に、歌詞の一部にトリックを仕掛けるのがmothy_悪ノPさんの十八番。何気ないフレーズが、曲の後半で大きな意味をもつパターンも多くあります。

たとえば、「円尾坂の仕立屋」の序盤に登場するこちらの歌詞。

円尾坂の片隅にある 仕立屋の若き女主人
(中略)
そんな彼女の悩みごとは 愛するあの人の浮気性

一見すると、主人公は“夫の浮気性に悩む仕立屋の奥さん”のようです。しかし曲の終盤、ある歌詞によって恐ろしい真実が発覚します。真相は、実際に曲を聴いて確かめてみてくださいね。

このほかにも、思わず最初から聴きなおしたくなるようなギミックを凝らした楽曲ばかり。スカッとするようでいてゾッとする、そんな伏線回収の快感を味わいたい人にもぴったりです。

<次ページ:シリーズをもっと楽しむには?>

初心者もリピーターも! 楽しみ方ガイド

『悪ノ大罪』シリーズの概要や魅力をご紹介してきましたが「曲が多くて大変そう」「設定が壮大すぎて難しそう」と感じた人もいるのではないでしょうか?

しかしこのシリーズは、幅広い楽しみ方ができるのでご安心ください。ライトに曲を聴くところから、よりディープな楽しみ方まで順にご紹介します。

まずは代表曲をチェック

初めての人ももう一度楽しみたい人も、まずは中心となる7曲をチェックしましょう。一曲ずつ独立しているので、順番は気にしなくても大丈夫。何から聞けばいいか迷ってしまう場合は、シリーズの入り口となる「悪ノ娘」と「悪ノ召使」がおすすめです。

一方で、時系列順に聴きたいという人は以下の順番で視聴してみてください。

1.ヴェノマニア公の狂気(色欲)
2.悪食娘コンチータ(悪食)
3.悪ノ娘・悪ノ召使(傲慢)
4.眠らせ姫からの贈り物(怠惰)
5.円尾坂の仕立屋(嫉妬)
6.悪徳のジャッジメント(強欲)
7.ネメシスの銃口(憤怒)

いくつか聴いていくと「メロディがかっこいい」「ストーリーが印象的」など、心に残る一曲が見つかるはずです。

歌詞・MVを見ながらストーリーを味わう

曲に込められた物語を楽しみたい人は、ぜひ歌詞に注目して二度、三度と繰り返し聴いてみるのがおすすめです。じっくりとストーリーを読み込むことができ、曲のなかに隠された伏線に気づけるかもしれません。

もちろん、ミュージックビデオも必見。映像が加わることで世界観がより分かりやすくなり、物語の解像度もグッとアップするはずです。

ミュージックビデオでは歌詞にない細かいシーンやキーワードが追加されているほか、主人公以外のセリフが登場することも。これによってキャラクターの過去や罪を犯した背景など、考察がはかどります。

関連楽曲をチェック

「『悪ノ大罪』シリーズをさらに深く知りたい!」「mothy_悪ノPさんの楽曲をもっと聞きたい!」

そんな人は、ぜひメインの7曲に関連する楽曲を聴いてみてください。「悪ノ娘」と「悪ノ召使」が対になっているように、実はそのほかの楽曲にも別視点の作品や後日譚などがあります。違う立ち位置から物語を見返すことで、新たな発見があるかもしれません。こちらも気になる楽曲から聴いてみてくださいね。

「グラスレッドの肖像」:「ヴェノマニア公の狂気」関連曲

「リグレットメッセージ」:「悪ノ娘」・「悪ノ召使」の後日譚

「五番目のピエロ」:「眠らせ姫からの贈り物」関連曲

「箱庭の少女」:「悪徳のジャッジメント」関連曲

「最後のリボルバー」:「ネメシスの銃口」関連曲

小説もおすすめ!

『悪ノ大罪』シリーズの壮大な世界観を隅から隅まで知りたい人には、mothy_悪ノPさん自身が筆を執った小説をおすすめします。小説版は全8巻。楽曲ごとのつながりが強まり、ひとつの壮大なストーリーとしてまとめられています。

小説版はもともと2012年に出版されたもので絶版となっていましたが、復刊を求める声の多さから2025年に新装丁で蘇りました。小説を通して、シリーズの世界にとことん浸ってみてはいかがでしょうか?

『悪ノ大罪』シリーズで“聴く物語”を楽しんで

中毒性のある楽曲に、伏線たっぷりのストーリーを盛り込んだ『悪ノ大罪』シリーズはまさに“聴く物語”。繰り返し聴けば聴くほど、その世界に引き込まれるはずです。ダークでありながらもどこか切ないシナリオは、悲劇的な物語が好きな人にぴったり。考察しがいのあるボーカロイド楽曲を探している人にもおすすめです。

壮大な世界観と数多くの楽曲が揃っているからこそ、久しぶりに聴くことで新たな解釈が生まれるかもしれません。昔聴いていたという人も、もう一度『悪ノ大罪』の世界に触れてみてはいかがでしょうか。

【文:藤真唯】

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