決済代行・全東信が破産——飲食店の売上金はどうなる?今すぐやること5選
2026年7月6日、飲食店向け決済代行大手の株式会社全東信(大阪市中央区)が大阪地裁に準自己破産を申請し、同日、破産手続開始が決定しました。負債総額は1,151億6,400万円と2026年最大の倒産規模で、加盟店20万店超の売上代金の行方が注目されています。
「カードの売上金が入金されない」「端末はどうすればいい?」——こうした不安を抱える加盟店経営者のために、今すぐ取るべき対応と使える支援制度を整理しました。
全東信とは?——飲食店に特化した決済代行業者
全東信は2006年9月設立、「全東信決済システム」と呼ばれるクレジットカード売上代金の早期決済代行サービスを提供していました。飲食店を中心とする加盟店20万店超が利用しており、カード会社からの入金を受ける前に加盟店へ立替払いする仕組みで運営されていました。
コロナ禍で飲食店が打撃を受けた2020〜2021年、全東信の売上高も約80億円から約50億円に激減し、2期連続の赤字を計上しました。さらに2024年1月には加盟店契約をめぐる不正事案で社員が逮捕・書類送検される事態となり、信用不安が高まったことで資金調達が困難となり事業継続を断念しました。
売上金はどうなる?——回収見通しと今できる確認
全東信は破産手続中であり、未入金の売上代金が全額回収できる可能性は低いのが現実です。カード会社が立替払い済みの場合は全東信への債権となり、破産財団からの配当に依存することになります。
一部の決済代行・ネットワーク事業者は加盟店への独自救済策を発表し始めています。まずは利用している決済端末・ネットワーク会社に連絡し、どのような対応が取れるかを確認してください。
破産管財人には印藤弘二弁護士(大阪)が就任しています。債権届出期間内に未入金分の債権届出を行うことが、後の配当・貸倒処理・共済申請すべての前提となります。
今すぐやること①:代替決済の手配と未入金額の確認
全東信のカード端末は停止対応が進んでいます。以下を早急に実施してください。
・全東信経由の端末を停止し、代替決済(他社の端末・QRコード決済等)を手配する
・全東信への未入金額をカード売上明細・入金履歴・売掛金台帳等で確認・記録する
・債権届出に備えて契約書・明細書類を保管する
未入金額の正確な記録が、すべての支援手続きの出発点になります。支援制度の多くが「回収困難額の証明」を求めるため、今すぐ書類を整理してください。
今すぐやること②:つなぎ資金を確保する
入金が止まると即座に資金繰りが悪化します。以下の2つを同時並行で動かしてください。
日本政策金融公庫「セーフティネット貸付(経営環境変化対応資金)」
取引先の倒産などで一時的に資金繰りが悪化した中小企業・小規模事業者を対象とする融資制度です。大型倒産時には公庫が特別相談窓口を設けることがあります。最寄りの日本政策金融公庫支店に早めに問い合わせてください。
準備物:直近の試算表・資金繰り表・全東信への未入金額がわかる資料
取引銀行・信用金庫にも早期相談を
現状を早めに共有し、当座の運転資金の融資を相談してください。セーフティネット保証が付けば審査が通りやすくなります(後述)。
セーフティネット保証1号——指定されれば使える「別枠100%保証」
信用保証協会の「セーフティネット保証1号(連鎖倒産防止)」は、大型倒産によって連鎖倒産の恐れがある中小企業を対象に、通常の保証枠とは別枠で100%保証を受けられる制度です。
【重要】利用には「指定事業者」への指定が必要
全東信が経済産業大臣の告示によって「指定事業者」に指定される必要があります。2026年7月8日時点、中小企業庁は「現時点で指定なし・情報収集中」と回答しており、指定はまだ実現していません。食団連(日本飲食団体連合会)が関係方面に働きかけを続けており、指定が実現し次第、申請が可能になります。
指定後の申請の流れ(今から準備しておく)
①市区町村の商工担当課に「認定申請(様式第1)」を提出する
②認定書の交付を受ける
③信用保証協会または金融機関で別枠保証付き融資を申し込む
対象要件の目安:全東信への売掛金等が50万円以上、または取引割合が売上の20%以上の中小企業。指定後に市区町村の商工窓口で詳細を確認してください。
経営セーフティ共済——加入者が使える無利子貸付
中小機構が運営する「経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)」は、取引先の倒産によって売掛金が回収困難になった場合に無利子・無担保で貸付を受けられる制度です(回収困難額と掛金総額の10倍〔上限8,000万円〕のいずれか少ない額)。
全東信の破産は対象となる「倒産事由」に該当します。ただし、全東信が「取引先」として認定され、未入金分が「売掛金債権等」とみなされるかは個別判断が必要です。加入している経営者は中小機構の共済相談室または取扱金融機関に早めに連絡してください。
なお、貸付を受けると貸付額の1/10が掛金総額から控除される点に留意してください。
税務・法務対応——貸倒処理と債権届出
貸倒処理(税務)
回収不能となった売上代金は、貸倒損失または貸倒引当金として損金算入できる可能性があります。いつ・いくらを損金算入できるかは破産手続きの進行と個別の事情によるため、必ず顧問税理士に相談のうえ処理してください。債権届出を済ませておくことが、貸倒処理の前提となります。
債権届出(法務)
破産管財人(印藤弘二弁護士、大阪)へ、裁判所が定める債権届出期間内に未入金分の債権届出を行ってください。届出の事実が貸倒処理・共済・保証制度の「回収困難」の証明になります。届出をしなければ後の各手続きで不利になります。配当(回収)は限定的になる見通しですが、届出は必ず行ってください。
まとめ:今すぐ動くべき5つのアクション
全東信の破産を受けて、加盟店経営者が今すぐ取るべき行動を整理します。
①未入金額を正確に把握し、証拠書類(売上明細・入金履歴・契約書)を保管する
②代替決済を手配し、店舗のキャッシュレス対応を継続する
③日本政策金融公庫・取引銀行に早めに相談し、つなぎ資金を確保する
④裁判所が定める期間内に破産管財人へ債権届出を行う
⑤経営セーフティ共済加入者は中小機構・取扱金融機関にすぐ連絡する
セーフティネット保証1号は、全東信が指定事業者に指定された場合に別枠100%保証の融資申請が可能になります。現時点では未指定のため、まず上記①〜⑤の対応を優先してください。指定の情報は食団連や中小企業庁の最新情報を随時確認してください。