自分から動いてもらう広告 無料に集まるアイデア
年末商戦が近づいてきて、街中もにぎやかになってきました。この季節、いろんな広告やキャンペーンを目にしますが、最近「新しい形の需要」が生まれています。
無料サンプル自販機とは
たとえば神奈川県・海老名市の商業施設では、無料でサンプル商品がもらえる「自動販売機」があり、スマホでQRコードをかざして簡単なアンケートに答えると、無料でサンプルがもらえます。
ただし、自販機ですので、わざわざその場所まで取りに行かなければいけません。
貼る、配るといった「受け身の広告」ではなく、「自分から取りに行く」そんなスタイルですが、このサービスについて、株式会社アドインテAIICOの打木康平さんに聞きました。
株式会社アドインテAIICOの打木康平さん
消費者は、無料で何かをもらえるのであれば、体験したいといったところに繋がってると思います。設置先は、基本的に無償で費用などを弊社負担で置かしていただいている。ただ闇雲に数を配るより、きちんと情報を収集しながら配れるところがメリットになっています。多くの方が受け取るっていうサービスになってくるとやっぱり無料といったところが重要になってくるかなと考えております。
この無料サンプリング自販機は、3年前に4台からスタートし、いまでは全国で300台を超えるまでに広がっています。設置場所は商業施設やスポーツジムなど、立ち寄りやすい場所が中心。無料サンプリング商品はドリンクのほか、コスメなども並んでいます。
「自分から取りに行く」というのがポイントで、利用者側からすれば、無理に渡される広告よりも押し売り感がなく、「わざわざ取りに行く」ことで、むしろ印象に残るそうです。
利用者は無料で試せますが、アンケートに答えないと利用できないので、配る広告よりも、年齢や好みなどのデータを正確に集められるというのもメリットです。
学生生活に溶け込む新しい広告
こうした「自分から動く」形のサービスは、
大学のキャンパスにも広がっています。株式会社スマートキャンパス 北山哲朗さんのお話です。
株式会社スマートキャンパス 北山哲朗さん
大学の中に弊社がコピー機を設置しており、コピー用紙の裏面に広告を入れることで、大学生が無料でコピーを使ったり、プリントアウトができるサービスになっています。今、66大学76キャンパスに83台設置されている。具体的には大学生を採用したい企業の採用広告、スーツやコンタクトレンズ、スマホなどの学生さん向けの商品の販売促進を行いたい広告、大学生に向けて啓発を行いたい官公庁、自治体さんの広告も掲載されています。
大学で使われるコピー機は1枚当たり、通常モノクロだと10円、カラーだと50円かかります。
この「タダコピ」サービスは、コピー機の用紙の裏に広告を入れることで、学生は無料で使えるようになっていますので、学生にとっては節約、企業にとっては学生に確実に情報が届く。そんな仕組みです。
デジタル時代の「紙」需要
全国66大学に広がっているサービスですが、ただ、コロナ禍以降、大学でもリモートが増えましたし、デジタル化がどんどん進んでいる中、コピー機を使う、実物の紙を使うニーズはどのくらい残っているのか。気になったので聞いてみました。
再び、スマートキャンパス 北山さんのお話です。
株式会社スマートキャンパス 北山哲朗さん
試験前になると、出力をしたいというニーズが多く、やっぱり手元で軽く持ち歩ける、書き込めるだったり、紙の需要感じている学生さんも多いのかなと思います。チラシの設置と違って、コピーっていうのは学生さんが主体的に動いて取るもの、出力する紙の裏に広告が入ってくるっていうところで、一定の保存期間を見込むことができるっていうところでご好評いただいて、多くの企業様にご利用いただけました。
「紙」のニーズはまだまだ残っていて、特に試験前や発表準備の時期には、ノートや資料を手に取って見たい、書き込みたいという声が多いそうです。新入生歓迎会のビラ配りや学園祭の案内づくりも「紙」です。大学では紙の需要は根強いので、コピー機を活用した広告の形は成り立っていました。
印刷された紙は授業や試験勉強で一定期間手元に残り繰り返し使われるので、裏面の広告も自然と何度も目に入るというのが、企業側のメリットです。
「無料」という言葉の裏には、ちゃんとした仕組みと需要があるようです。
(TBSラジオ『森本毅郎スタンバイ』取材・レポート:森本茉菜)