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前編:標高730mで出会うアートの冒険「神戸六甲ミーツ・アート2025 beyond」(読者レポート)

アイエム[インターネットミュージアム]

前編:標高730mで出会うアートの冒険「神戸六甲ミーツ・アート2025 beyond」

神戸の六甲山を舞台にした「神戸六甲ミーツ・アート2025 beyond」(以下、RMA)が始まりました。RMAは2010年から始まった現代アートの芸術祭で、今年で16回目の開催です。

最近では来場者が3万人を超える人気ぶりで、現代アートへのファーストコンタクトにちょうどいい、親しみやすい作品が多いです。今年のテーマは「環境への視座と思考」で、61組のアーティストが参加します。


ケーブルカーで六甲山へ


作品は六甲山上の9つのエリアに分散しています。まず、総合インフォメーション(ケーブル山上駅構内、ROKKO森の音ミュージアム前)などで鑑賞パスポートに合わせて公式ガイドマップを入手しましょう。公式ガイドマップには地図以外に、バスの時刻表やランチなどの情報が掲載されており、とても役立ちます。

六甲山は神戸の市街地からもアクセスしやすい身近な山ですが、登ってみると、その険しさと涼しさに驚きます。公共交通機関でRMAを回る場合、標高約730mのケーブル山上駅が起点になります。

駅に着いたら、まずは気温差と海側の眺めを体感しましょう。そして、大きく深呼吸をして、RMAの探検(鑑賞)を始めましょう。 (注目の作品が多いので、レポートを2編に分け、ご紹介します)


六甲ケーブル・天覧台エリア

このエリアには、C. A. P.(芸術と計画会議)、須田悦弘、ナウィン・ラワンチャイクン+ナウィン・プロダクション、山田毅の作品があります。

ナウィン・ラワンチャイクン+ナウィン・プロダクションの作品が、六甲の森の緑色と空の青色を背景に、こちらを見ています。登場人物は、神戸の街の発展に寄与した海外からの移住者や、その支援者などです。

作品を見たら回れ右をして、彼らが眺めている風景を見てみましょう。天気が良ければ、六甲山の山肌に続き、神戸の市街地から瀬戸内海までを一望できます。また、作品の右手の建物にも立ち寄ってください。映像作品などがあります。


ナウィン・ラワンチャイクン+ナウィン・プロダクション 《神戸ワーラー》


山田毅の作品は、コンテナのような小屋、丸ごと1棟です。小屋のドアには「れきし販売所」と表示されており、中に「自動れきしはんばいき」と「れきし」のサンプルが置かれています。

販売される「れきし」は、作家と仲間の調査隊が六甲山周辺で集めた木の実、石などです。添付された調査シートを見ると、調査日、調査場所などがわかります。お値段ですが、破格のワンコインです。美術コレクターとしての第一歩を、RMAで踏み出してみませんか。


山田毅 《自動れきしはんばいき》


兵庫県立六甲山ビジターセンター(記念碑台)、六甲山サイレンスリゾートエリア

このエリアには、岡留優、石島基輝、reiko.matsuno、Michele De Lucchi(ミケーレ・デ・ルッキ)、村上史明の作品があります。

岡留優の作品は、大きな窓のある洋風の別荘の模型です。建物内に作家のアバターがいる点がリアルです。スマホのカメラ機能を使い、定期的に六甲山の別荘(模型)の紹介を配信しています。

訪問した日はとても天気が良く、タオルを首にかけ、よく日焼けした作家が「実は、この建物には玄関がないんです」と教えてくれました。まあ、玄関がなくても窓が大きいので、晴れた日には出入りできますが、雨や雪や風の強い日は、きっと困るでしょう。


岡留優 《別荘》


ミュージアムエリア(ROKKO森の音ミュージアム)

このエリアには、川俣正、やなぎみわ、渡辺志桜里、Artist in Residence KOBE(AiRK)、船井美佐、三梨伸、WA!moto.“ Motoka Watanabe”、北川太郎、さとうりさ、さわひらき、西田秀己、植田麻由、髙橋瑠璃、奈良美智、堀園実の作品があります。

奈良美智の作品は、大きな白色の少女の頭部像です。SIKIガーデンの奥のほうで木々に囲まれ、笑顔で鑑賞者を迎えてくれます。RMAのチラシの表紙にも登場するなど、今年の大注目です。

本作の原型は、ごく小さな手のひらサイズの粘土です。それを、人の背丈を超えるサイズに拡大しているので、表面の指の痕跡が、まるで巨人の手跡のようです。うれしいことに、会期終了後も常設展示されるそうです。


奈良美智 《Peace Head》


堀園実の作品は、地面から突き出した細長い楕円形をしています。表面はザラザラとした白色で、琉球漆喰が使われています。何かの形に似せて作られたわけではありませんが、尾ひれをつけると魚のようにも見え、縦にすると天使の背中の羽根のようにも見えます。

作品の周りの木立には多くの昆虫が住んでおり、森を飛び交う彼らの休憩場所にぴったりです。なお、本作は昆虫だけでなく、人も優しく触ることができます。


堀園実 《風や水を切る》


やなぎみわは、六甲・新池のほとりに「大姥百合」の鋳造作品を展示し、それにちなむ野外公演を行います。公演日は2025年9月27日、28日の2日間のみ。舞台は新池の中に設置された川俣正の《六甲の浮橋とテラス Extend 沈下橋2025》です。

観客席は池をはさんだ対岸に野趣味あふれるベンチが用意されます。やなぎによれば、野外公演は鑑賞するものではなく、目撃するものだそうです。皆さん、ぜひ目撃しに行きましょう。


やなぎみわ 《大姥百合》(オオウバユリ)


トレイルエリア

このエリアには、小谷元彦、林廻(rinne)、nl/rokko project、乾久子、C.A.P.(芸術と計画会議)の作品があります。

林廻(rinne)の作品は、トレイルルートから少し斜面を下った森の中に置かれています。枕が多すぎて寝転ぶ空間が少ないベッドや、脚部が長すぎて座れない椅子などが、木々の合間に見え隠れし、過剰と不足のアンバランスな状態を暗示します。

バランスの崩れたベッドや椅子は、適切なメンテナンスをしないと住空間が機能しなくなること、同じく自然も適切な使い方をしないと、いずれ人々を排除するという問題意識の提起なのでしょう。


林廻(rinne) 《BED》


乾久子は画家ですが、今回は「こどもプログラム ワークショップ」で参加しています。ワークショップの名前は「くじびきドローイング」(くじドロ)です。「くじドロ」のルールは、①会場に用意されたくじを引く、②くじに書かれたテーマで絵を描く、③描いた絵を飾る、④新しいテーマのくじを作ることです。

これを繰り返すと、新しい絵が次々と生まれ、会場の壁や窓が作品で覆われます。子供だけでなく、大人にもチャレンジしてほしい企画です。


乾久子 《ことばが開くことばで開く くじびきドローイング》


少し話題を変えます。RMAは美術館の展覧会とは大きく異なります。特にトレイルエリアにチャレンジする方は、フィールドアスレチックに出かけるつもりで準備しましょう。履きなれた運動靴、水分補給のためのドリンク、虫よけスプレーは必須です。

また、急な坂や未舗装の道があり、街灯は少なめで、日没が近づくと暗いです。場所によっては携帯の電波が十分に届かないので、道に迷わないよう、会場に設置されたマップを有効に使いましょう。


おみやげとランチなど

RMAは、オリジナルグッズが充実しており、中村萌や奈良美智とのアーティストコラボグッズもあります。定番のTシャツやトートバッグは狙い目だと思います。その他に、六甲山ならではのグルメも楽しめます。


ショップにて


グラニットカフェ(六甲ガーデンテラスエリア内)の神戸牛ボロネーゼパスタ (サラダ・ドリンクバー付)


[ 取材・撮影・文:ひろ.すぎやま / 2024年8月22日 ]


 → 神戸六甲ミーツ・アート2025 beyond(レポート 後編)


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