天然酵母「よしこのぱん」丁寧に焼き上げたやさしい味わい お客さまと豊かに紡いだ15年【千葉市】
もっちりと滋味深い食ぱん、やさしい甘さの季節のあんぱん。米粉のシフォンケーキ、べーぐる、スコーン、そして夢中になるおいしさ・おからビスケット。
千葉市にある小さな工房で、天然酵母と国産小麦を使ってぱんやお菓子を焼き上げる石井(いわい)良子さんを取材しました。
素材の持ち味を大切に、丁寧にシンプルに焼き上げたぱんを、今日も心待ちにするお客さまのもとへお届けしています。
※記事中の価格はすべて税込み ※内容や価格は取材時のものです。また、ぱんの大きさ等により価格が変動することがあります。最新情報・詳細はインスタグラムでご確認ください。
月に一度のお楽しみ!「よしこのぱん」をお目当てに訪れるお客さまも
暖かく晴れた日が多かった1月。
月末のある日の午後、レンタル棚と雑貨のお店Tanaya(船橋市習志野台2-3-3)に、大きな袋とかごを携えた石井良子さん(以下、よしこさん)が到着しました。
毎月恒例「よしこのぱん」の販売がスタートします。
ハンドメイド雑貨などを中心に扱うTanayaですが、今から6年前の2018(平成30)年、店主の石森さんは食品類の提供に着手。
以来、手づくり豆腐や新鮮野菜に並んで人気を集めるのが、今回ご紹介する「よしこのぱん」です。
この日、納品されたのは、2種類の食ぱん(全粒粉・黒胡麻)、ライ麦5%のぱん、ロースト人参のフォカッチャ、玄米酒粕のぱん、米粉のシフォンケーキ、酵母のケーキ、おからビスケットなど。
「食ぱん、ライ麦5%のぱんとおからビスケットが定番商品です。あとは季節のぱんや甘いぱんを『おまかせ』で納品していただいています」と話すTanaya店主の石森さん。
ライ麦5%のぱんが大好き!と身を乗り出して話す石森さん、「厚めに切ってトーストすると、中はしっとり、外はカリッと香ばしく、小麦のおいしさを味わうには最高のぱん。私は何も付けずにそのまま食べるのが一番おいしいと思っています」と、力説してくれました。
月に一度の販売日には、よしこさんのぱんをお目当てに来店するお客さまも多く、「今月はいつ入りますか?」「何時ごろに納品されますか?」などのお問い合わせが相次ぐことも。
お客さま同士、おすすめのぱんやおいしい食べ方を教え合って盛り上がる光景も見られるとか。
委託販売先や納品日、イベント出店情報などはインスタグラムにて発信されているのでぜひこまめにチェックしてみてくださいね。
定番人気のぱん、季節のぱん、焼き菓子たち。心にも栄養がゆきわたるような「よしこのぱん」の品揃え
千葉市のご自宅に工房を設け、ホシノ天然酵母や自家製酵母、国産小麦、自然塩など「自分がおいしいと感じたものを使って」ぱんやお菓子を焼くよしこさん。
庭のよもぎや無花果、また、畑で自ら育てた野菜たちも、シフォンケーキ、あんぱん、フォカッチャなどに姿を変えて登場します。
「どうなるかな?やってみよう!というのが好きなんです」と、はにかむよしこさん。
人参、大根、ほうれん草、春菊など、旬の野菜の葉を刻んで炒めて生地にたっぷり練り込んだ「葉っぱん」は、この冬よく焼いているぱんのひとつ。
「それぞれの葉っぱの特長が活きた、まったく風味の異なるぱんが焼き上がります。中でも人参の葉はジェノベーゼにしてもおいしい。薬効もあると聞いたので、畑で葉物が採れる時季、特に葉物がおいしい冬には、これからもたくさん使おうと思います」
こちらは、前述の畑の写真にもあるビーツ(茎が赤むらさき色の丸い根菜)のケーキ。
この色合いから想像するに、ビーツってどんな味…?
いや、実は意外と、まわりとうまく調和しているんです。
おそるおそる踏み入れた未知の世界で、これがビーツ?と思ううちに馴染みあるショウガの香りと出会い、そこへチョコチップがやって来てさらなる安心感を得る…
ふんわり、やわらかな生地はやさしい甘さ。数日後には「また食べたいなぁ」と思うであろう、あとを引くおいしさでした。
国産強力粉、国産全粒粉、酵母、粗糖に自然塩と、上質かつシンプルな材料でつくられているからこそ、奥行きのある清らかな風味を味わうことができる食ぱん。
この愛らしい姿、思わず手に取りたくなりませんか?
季節のくだものを白あんと合わせて包み込んだ、よしこさんのあんぱん。
「バリエーションがあるとおもしろいかな、と思って作り始めました。白あんは、どんなものと合わせてもおいしいお味を作れるなぁと思います」
取材時、店頭に並んだのは、りんごのあんぱんでした。お砂糖を使わず、ほんの少しの塩とシナモンで煮たりんごと、白あん。
作り込みすぎない、自然な甘みのあんぱんは、きっと他では出会えないやさしく澄んだ味わいが魅力です。
他にも、ここではご紹介しきれませんが、米粉のシフォンケーキ、各種こっぺ、スコーン、べーぐる、ぷちぱん、マフィンなど優に100を超えるレシピをお持ちのよしこさん。
「庭や畑で採れたものを取り入れてみたり、今日はこの素材があるからこんなぱんを焼いてみよう、あの方はこういうぱんを喜んでくださるかな、と、長くお付き合いのあるお客さまたちのお顔を思い浮かべたりしながら、日々、いろいろ作っています」
「よしこのぱん」を紐解く。食べるひとを想う、美しく静かな存在感
今からおよそ20年前、天然酵母を使用するパン教室に通いながら、友人と移動パン店を始めたよしこさん。
「そのころはまだ世の中に『天然酵母』という言葉すらあまり普及していなかったように思います」
時間をかけて発酵させ焼き上げる、そのおもしろさに夢中になったよしこさんですが、「(広く市販されているパンとは違う)天然酵母のパンの良さみたいなものをわかっていただくのはなかなか難しいな、とも感じました」と、振り返ります。
それでも、「当時ぱんを購入してくださっていたお客さまとは、今もお付き合いがあります」と、顔をほころばせて話すように、ご近所さんへの配達をはじめ、店舗への納品、イベント出店など、活躍の場を広げているよしこさん。
昨年2023年8月には、「よしこのぱん」として独立して、15周年を迎えました。
「もうずいぶん長い間ぱんを焼いてきましたが、今も、ぱんを焼くことがとっても楽しい。つくることが大好きなんです。この気持ちを大切に、ずっと続けていけたらいいなと思います」
思わず笑みがこぼれる「顔ぱん」の中には豆乳カスタードクリーム。
「アレルギーがあるお子さんのために、卵や乳製品を使わないものを探している方々がいらっしゃることを知り、豆乳カスタードクリームを作るようになりました。ココアパウダーとはちみつで描く顔も、最初はひどい出来だったんです」と笑いながらも「お子さんをはじめ多くの方に喜んでいただけるのがうれしいです」と、やさしい表情を見せます。
ご自身の「好き」を軸にしながら、お客さまを想う心を大切に、ぱん作りを続けてきたよしこさん。
パンは元来、外国文化から伝わったものですが、よしこさんが焼き上げるのは「カタカナではない感じが自分の中にあって」、ひらがな表記の「ぱん」なのだと話します。
素材の滋味を引き出し、食べるひとへの優しさを内包した「よしこのぱん」は、何にも代えがたい、穏やかで清々しく静かな生命力に満ちているように思います。
どこかで「よしこのぱん」に出会ったら、ぜひ手に取って味わってみてくださいね。
よしこのぱん インスタグラム/@yoshiko335 HP/https://yoshikonopan.pupu.jp/ ※委託販売先や出店情報はインスタグラムをご参照ください。