【検証】逗子・葉山ごみ処理広域連携の「ずれ」——22億円に膨らんだ事業はどこで歯車が狂ったのか?
序章:二つの自己像と、一本の境界線
1889年の横須賀線開通でJR逗子駅が設置されると、逗子市は鎌倉・横須賀と都心を結ぶ鉄道と道路の結節点として、人と物の流れを受け止める「都市への玄関口」の性格を強めてきました。
一方、鉄道が通らなかった葉山町は、逗子駅と京急バスを頼りにする別荘地として発展。葉山御用邸を擁する歴史も重なり、「静かな保養地」という自己像を育ててきました。
生活圏を共有しながらも、独立した自治体として別々の歩みを続けてきた両市町。その双方が直面する人口減少や環境対策という共通の課題に対し、鎌倉を含む3市町で行政の垣根を越えようとしたのが、「鎌倉市・逗子市・葉山町ごみ処理広域化実施計画」でした。
しかしこの計画は、着工後の条例対応や契約条件の見直し、建設コストの高止まりなどにより、次第に足踏みを強いられることになります。
JR逗子駅に加え、2020年には「逗子」と「葉山」の両方を冠する駅名となった京急「逗子・葉山駅」という、ひとつの玄関口を共有する隣町同士が、なぜここまで主張を違え、事業が停滞し、一時は先行きが見通せない事態にまで陥ったのか。
6人の証言、両議会に提出された資料と時系列を突き合わせながら、その背景と修復の糸口を追います。
1. 「レールへの相乗り」と「ゼロベース」の違い
まず、今回の計画がどのような設計のもとに始まったのかを、簡単に振り返ります。
計画の基本形はシンプルです。逗子市と葉山町で生ごみを分別回収し、葉山町に新設するクリーンセンターで堆肥化することで逗子市の焼却炉に余裕を生み、その余力で鎌倉市の可燃ごみを受け入れる。
自前の焼却施設を持たない鎌倉市・葉山町と、“持つ”逗子市が、役割を分け合いながらごみ処理を共同で担う──そんな2市1町の広域連携を前提に設計されたプロジェクトでした。
逗子市議会でこの問題を繰り返し取り上げてきた逗子市議・高野たけし氏は、本事業がつまずいた要因のひとつに、そもそもの「立ち上げ方」の違いを挙げています。
「生ごみの処理に関していえば、ゼロベースで施設を立ち上げて、かつそこに向けて事務方の交渉を行っていくことになりますから、今までの連携とは全く状況も違いますし、ハードルも変わってくるんだなと」
逗子市と葉山町は、これまでも可燃ごみ、し尿・浄化槽汚泥(2017年度開始)、容器包装プラスチック(2020年度開始)の共同処理を行っており、ごみ処理広域連携の実績自体はありました。
ただし、それはいずれも「相手のレールに乗る」かたち——すでにある施設の空き容量に、もう一方の自治体のごみを受け入れてもらうスキームです。
自治体が行う事業の源泉は、言うまでもなく税金です。人口減少と財政縮小を背景に、必要な“箱”を各自治体ごとに整備することが非効率になりつつあるなか、広域連携の重要性は高まってきています。
そのうえで高野氏は、「大切なのは、本来単独でやった場合と、広域連携でやった場合のメリットがどこにあるかを見ること」と指摘します。さらに、“全体最適”の視点から、次のように吐露しました。
「それぞれのメリットを追求しすぎてはいけないのかなというのが率直な感想です。税金を預かって事業をする立場ですから、どうしても自分たちの自治体にメリットが多く来るように考えがちなんですけれども、そればかりを追求しちゃうとうまくいきません――この件で感じた実感です」
既存施設への「レールへの相乗り」から、ゼロベースで施設そのものを設計し直す段階に踏み込んだことで、双方のメリットを分かつ線引きが、これまでとは比べものにならないほど難しくなっていたことが見えてきます。
2. 工期遅延はどこで決まったのか──がけ条例と下請け離脱、そして「間に合う」という判断
第2章の要点本事業は、がけ条例対応などによる手続きの長期化で実施設計が止まり、工期が最終年度に集中した。とりわけ、2024年8月の下請・躯体業者の離脱が、事業の流れを変える転換点だったと見られる。遅れそのものよりも、行政側の「遅延を遅延と認める判断」の遅れが、不信と混乱の土台になった。
葉山町にとって、ごみ処理をめぐる歴史は一筋縄ではありませんでした。
2006年、横須賀市・三浦市・葉山町の2市1町は、ごみ処理施設の共同整備と広域処理で合意しましたが、2008年の町長選で「ごみの独自処理」を掲げる町長が当選し、葉山町は協議会から脱退します。その後、横須賀市と三浦市は、この離脱は民法上の「信義則違反」にあたるとして提訴しました。
一度は広域連携に乗りながら、“政治判断”の転換で訴訟まで経験したことがある。この記憶が、今回の広域化計画に向き合う葉山町の構えにも、少なからず影を落としているように感じます。
時を経て2016年、鎌倉市・逗子市・葉山町は、将来的な焼却能力の不足解消と環境負荷の低減、コスト抑制をめざして、ごみ処理広域化実施計画の検討に入ります。2019年11月に素案が公表され、市民説明会やパブリックコメント、審議会での議論を経て、2020年8月3日に「鎌倉市・逗子市・葉山町ごみ処理広域化実施計画」が策定されました。
葉山町の旧クリーンセンター敷地内に老朽化した既存施設を解体し、新たな施設を建設する——本稿で扱う生ごみ処理施設の再整備事業は、この実施計画の中核です。
2-1. スタート時点で見えていた「3年計画」
2022年1月葉山町は再整備計画のプロポーザルを実施(応募4社、3社辞退)。共和化工株式会社(東京都。以下、共和化工)と仮契約。2022年2月葉山町と共和化工が15.84億円で請負契約を締結。工期は2022年2月10日〜2025年2月28日と決定。
本事業の自治体間調整を担ってきた逗子市役所・資源循環課の担当者は、当時の印象をこう口にします。
「共和化工さんに決まった時には、正直安心したんですよ。実績がある会社だし、悪い評判も聞いたことはなかったですしね…」
ここまでは、「実績のある事業者と3年の工期を前提に、計画通り進んでいくはずの事業」として、各自治体も認識していたと言えます。
設計と施工を一括で発注するデザインビルド方式を採用したことで、工期短縮やコスト抑制への期待もありましたが、のちにこの方式の「見えづらさ」が、遅延と負担の線引きをめぐる火種にもなっていきます。
2023年、工期2年目に入り、本事業の雲行きは徐々に怪しくなっていきます。
2-2. がけ条例と設備選定がもたらした“設計ストップ”
神奈川県の「がけ条例」によって、既存の崖の一部に新たな擁壁設置が必要だと判明。崖の近くに建物を建てる際、安全な擁壁の設置や建物の後退配置などを求める条例で、既存の擁壁が基準を満たさないと補強や作り直しが必要になり、工期やコストを押し上げやすい仕組みです。
加えて、生ごみと袋に分ける破砕袋機の選定にも時間を要しました。その結果、2023年8月頃まで、実施設計が事実上ストップしていたことが分かっています。
2023年9月、共和化工から葉山町に対し、工期の見直しが必要であるとの打診があり、工程全体が大幅に後ろ倒しとなりました。葉山町は減額補正を議会に提出しつつ、この時点では「2025年2月末完成」という工期自体は維持すると説明しています。ただし、工事の大半が最終年度に集中する、極めてタイトなスケジュールへの組み替えは避けられませんでした。
2024年1月葉山町と共和化工が工程を見直し、契約変更。
共和化工は4度にわたり工程変更を申し入れており、まちも受け入れざるを得なかったという構図です。
この時点で、工期の「圧縮」はすでに始まっていましたが、現場と議会の多くはまだ「対応可能な範囲」と見ていたことが、後の聞き取りから見えてきます。
しかし、さらに苦難は続きます。
2-3. 2024年8月──多くの関係者が挙げる“転換点”
「一回、業者が逃げた…逃げたというのは変だけど、中断したじゃないですか。あの時、議会では『いやまずいぞ』っていうふうになって、でもそれでも、まちは『何とか業者を見つけますので、何とか間に合わせます』って言ってたんですよ」
「クリーンセンター再整備に関する特別委員会」で委員長を務める葉山町議会議員・金崎ひさ氏はこう話し、つづけます。
「まちの“間に合わせたい”という願望が、相手(共和化工)の言うことを耳に入らなくさせて、それで遅れたんじゃないかと私は思っています」
2024年8月共和化工から葉山町へ「基礎工事の下請・建物躯体業者が離脱」と報告。
取材したうち、逗子市役所・資源循環課の担当者を含めた4人が、この「2024年8月」を、本事業停滞のターニングポイントとして挙げました。
逗子市議・高野氏は、こう振り返ります。
「逗子市の担当者は、発注の当事者でない部分で、遠慮があったんじゃないかなと思うんです。葉山町側が工期の延長を判断するのが遅かったなかにあって、事務連絡の連携がうまく機能していなかったんじゃないかなという反省点があります」
逗子市議会で本件を厳しく追及してきた逗子市議・桐ケ谷一孝氏も、こう証言します。
「私が事業が遅れているんじゃないかという情報をもらったのが、2024年9月の初旬。当時、仲介者を通して葉山町の現場の担当者にお会いして、『順調なんですか』と聞いたら、『まあ順調です』というお話があったんですね。実際はもうその時には、8月末に3週間中断されていて、2ヶ月遅れることが葉山では分かってたはずなんです。その説明は逗子側にはなかったですからね」
再び金崎氏です。
「遅れる理由がわからないから、共和化工さんから資料が出ないから──だから『頑張ってくれると思ってた』だなんて、まちは言い逃れが多いんですけども、危機管理ができてないんですよね」
2024年11月、建物躯体業者が見つかり、生ごみ資源化処理施設の工事を再開しましたが、この時点で当初予定より約4か月遅れ。契約工期(2025年2月28日)には間に合わないことが、ほぼ確定しました。
ここで共通しているのは、「中断」と「遅延」という事実そのものよりも、
葉山町から逗子市へ、どこまで情報共有されていたのかどのタイミングで「間に合わないかもしれない」と判断を切り替えるべきだったのか
という点です。
工期そのものの遅れより、「遅延を遅延として認識する判断」が遅れたことが、のちの混乱につながっていきます。
2-4. 2024年11月──逗子が「見送り」を正式表明
「間に合う」と見ていた前提が崩れ、両自治体の動きは一気に慌ただしくなります。
2024年11月18日逗子市役所の担当部長と課長が葉山町に来庁、「2025年3月からの生ごみ収集を見送る方針」と伝達。2024年11月25日葉山町長と逗子市長が会談。逗子市は「2025年3月からの生ごみ収集見送り」を正式表明。
そして2024年11月29日、逗子市はプレスリリースを発表。
2025年3月に予定されていた施設稼働にあわせて準備を進めていた生ごみの分別回収を、無期限延期とする方針を公表しました。
3. 逗子の「一線」と、膨らんだ工事費——環境優先の葉山と、契約・責任を重視する逗子
第3章の要点逗子は工期延長と所有権・費用の不透明さから、「生ごみを入れない」という一線を引いた。葉山は環境メリットを優先し、追加負担を抱えながらも早期の分別開始をめざした。デザインビルド方式と1.4倍に膨らんだ工事費・補助金減額が、逗子側の「金額と責任の見えない共同事業」への警戒と不信を強めた。
事態が深刻化していくなかで、逗子市は2024年11月、「一線」を引きました。
工期を延長して2025年8月にクリーンセンターが稼働したとしても、「生ごみを入れない」という“政治判断”です。
3-1. 「生ごみを入れない」判断と、その裏側
逗子市議・桐ケ谷氏は、この判断を明確に支持します。
「『入れない』って判断した市長を私は支持します。その理由のひとつが、葉山町のクリーンセンターの所有権がどなたのものなのか、逗子にまったく示されていなかったことです。お金で揉めてて折り合いがついてないわけですから、共和化工がいきなりガチャッと鍵をかけちゃう恐れだって、考えられないわけじゃない。その状況でスタートするなんて、無責任なことは絶対できないと思います」
ひるがえって葉山町は、施設が未完成でも生ごみ分別を予定どおり始めることを選びました。クリーンセンター稼働までは民間業者への委託でつなぎ、「逗子市には迷惑をかけない」として、共同で委託する案も提案しています。
葉山町議・金崎ひさ氏は、こう内情を明かします。
「逗子市さんは何度も市民説明会を開いて、翌月からスタートかと思うぐらい早く市民に知らせてたじゃないですか。それに比べたら、葉山町って意外と準備が遅かったんですよ。ですから『延期になりました、ごめんなさい』で、今まで通り分別なしでよかったと私は思っていたんです。だけどまちは『計画通り3月から分別収集します』『民間で生ごみを自然堆肥化できるような施設を探します』と。
私は議会で質問したんです。『逗子さんは、自分ちで燃やせばすむものを、よそに委託して余計なお金をかけるのが嫌だと思っていらっしゃるんじゃないの』と。そしたら『いいえ、逗子には迷惑をかけません。逗子の生ごみを分別して出していただいたら、本来の葉山で処理する費用はいただくけど、それをオーバーしたものは葉山が出します』と。じゃあなんで逗子は分別開始しないんですかって聞いたら、『一生懸命説得したんだけどダメでした』と」
葉山町は、追加負担が発生しても「環境面のメリットを一日も早く実現する」ことを優先し、逗子市に迷惑をかけない形での民間委託案まで用意した——それでも逗子市は動かなかった。
その理由について、逗子市役所・資源循環課の担当者は、以下2点を挙げています。
生ごみ資源化処理施設の工期が延長されたこと(竣工時期も不明)。11月15日の時点で、次年度当初予算要求の提出期限を超過していたこと。かりに葉山町が提案する民間事業者への生ごみ資源化処理委託を行う場合、事務委託に関する規約上、市町が協議して定めることとなっているが、葉山町から協議に関する資料が提出されておらず、11月15日まで協議は行われていなかった。
それにくわえ、委託する場合、量、費用、委託先、運搬費、期間、資源化方法等を事前に決める必要があります。処理単価がいくらになるかも分からないまま開始はできない、というのが逗子市側の判断です。また、「あの時点では、委託先が決まっておらず、資源化でなく焼却の可能性もある、とも聞いていました」と、担当者は補足します。
葉山町は「環境優先で見切り発車も可能」と捉え、逗子市は「条件が見えない限り動けない」と捉えた——ここで意思決定のOSの違いがはっきり表れました。
なお、もうひとつの当事者である鎌倉市は、2025年12月の時点で、松尾市長が「葉山町の責任を問わない」との立場を表明し、この問題からはいったん距離を置いています。
3-2. 生ごみ袋と倉庫代——逗子が「損害賠償」を口にした理由
工期延期は、逗子市と葉山町との間に、別の火種も生み出していました。
逗子市は、2025年3月から生ごみの共同処理が始まることを前提に、生ごみ専用袋を前倒しで発注し、その保管のために倉庫も1年分借り上げていました。ところが施設稼働が遅れたことで、袋は使えないまま在庫となり、倉庫料や収集体制のキャンセルに伴う費用などの支出が生じています。
逗子市議会では、こうしたコストを「葉山町側の工期遅延に起因する損害」と位置づけ、市民負担とすべきではないとして、葉山町への損害賠償請求を求める意見が出されています。現在、これらの扱いが両市町の代理人弁護士による協議の主要な論点のひとつになっており、4章で触れる「6つの壁」のひとつとしても位置づけられています。
3-3. 当初15億8,400万円が22億1,200万円に——膨らんだ工事費とデザインビルド方式
逗子市の慎重姿勢をさらに強めたのが、工事費増額の問題でした。
2025年1月共和化工から葉山町への請求が、当初契約15.84億円から約6.28億円増の22.12億円に。内訳:物価スライド約5.31億円+増工事約9,600万円。
※2025年9月1日の「クリーンセンター再整備に関する特別委員会」に提出された資料で、「増工事約8,400万円」となっていましたが、金額変更の経緯は明かされていません。
契約額がおよそ1.4倍に膨らんだことに対し、葉山町議・金崎氏は、強い言葉でこう語ります。
「当時としては安い金額だったらしいですけど、それで落としておいて、あとで6億を加算して請求するなんて、とんでもないでしょ。それは入札の方向としてまずいでしょって。そういう、制度の“悪用”をね」
公共工事の物価スライド自体は、この案件に固有の話ではありません。建設資材や人件費の高止まりによって、全国各地で、入札不調や当初計画の見直しといったケースが起き、地域課題となっています。
逗子市内でも、JR東逗子駅前の複合施設整備事業が、「物価および資材の高騰等が続いている社会情勢」を理由に当面休止とされました。兵庫県豊岡市の文化会館や東京都中野の中野サンプラザの再開発でも、同様に建設費等の高騰が大きな議論を呼びました。
問題は、「物価が上がったから増えました」という一言で済ませられない点にあります。
葉山町側で逗子市および共和化工との調整実務を担っている葉山町役場・環境部の担当者は、こう振り返ります。
「通常であれば発注する側が、いろいろな仕様をガチガチに固めて、その指示通りに工事をするので、あまり揉めることはないんですけど、“設計・施工一括発注方式”——いわゆる“デザインビルド方式”(※)でやっていますので、詳細設計についても事業者にお任せする、民間事業者の発想やアイデアを重視する発注の仕方でした。それが裏目といいますか、工程管理の中で知らずうちに出っ張ってしまう設計や工事内容をとってしまうことがありました」
※建物の「設計」と「工事」を別々に発注せず、まとめて1社に任せる発注方式。事業者の自由度が高い反面、追加工事や費用の妥当性を行政がチェックしにくいという弱点もある。
自治体と事業者との責任の線引きがあいまいなまま工事が進み、結果として「15億8,400万円」が「22億1,200万円」として請求される——このことは、逗子市の警戒感を、いっそう強める結果となりました。
3-4.逗子・葉山・共和化工 - それぞれの立場
<!-- 見出し -->
<!-- 逗子市 -->
逗子市
主張
工期延長分は負担しない/責任の線引きが見えるまで新施設には生ごみを入れない
理由
延期は葉山町×共和化工の契約内の問題、発注者でない逗子が負担する筋合いはない/市民に説明できない条件では議決が通らない
背景
生ごみ袋の前倒し発注や倉庫代など準備コストはすでに発生/市民・議会に丁寧に説明してきたとの自負/過去に財政難を経験
解説
契約の筋・財政リスクを優先/老朽化した現ごみ処理施設の炉の負担踏まえ、広域連携は進めたいが、責のない支出はしないスタンス
<!-- 葉山町 -->
葉山町
主張
環境メリットを早く実現したい/増額分は協議のうえ一定負担も検討
理由
ごみ減量・カーボンニュートラルなど環境目標を前に進めたい/デザインビルドで仕様を任せた面もあり、全てを業者責任とは言い切れない
背景
施策として“環境にやさしいまちづくり”をめざす/過去にごみ処理の広域連携から離脱し訴訟を経験
解説
環境・広域連携・政治的信頼を同時に守ろうとし、共和化工・逗子・町民の三正面作戦の状態/増額をどこまで飲むか判断が揺れる
<!-- 共和化工 -->
共和化工
主張
当初契約額に加え、設計変更・物価高騰分も支払われるべきとの立場/まちに対し繰り返し「遅れる」旨伝えたが、受け入れられなかったと主張
理由
資材・人件費高騰やがけ条例対応・追加工事で実費が増加/赤字工事にはできない民間の論理
背景
下請業者の離脱等により工期が遅延
解説
都内に本社を置く環境系プラント商社で、自治体案件を多く手掛ける/まちからの情報公開が限定的、かつ取材に応じてもらえず、認識や方針など不明な点が多い
3-5. 「専門家」は機能したのか——補助金減額というかたちで表れたツケ
葉山町議・金崎氏は、事業の規模と複雑さに比べて、葉山町側の体制が脆弱だったのではないかと疑問を投げかけます。
「実務的に難しい話ですから、コンサルを入れればよかったんです。そうはせずに、“専門的知見を持った人”という人物を民間から臨時雇いしてるんです。にも関わらずこうなった。その人の役割が一体何なのって私はしょっちゅう議会で質問してるんですよ。でも『専門家が、その人がいるから役に立ってます』っていう返事しかこないんですよ」
さらに、工期遅延は、目に見える「損失」としても表れていると、金崎氏は指摘しています。
「令和6年度の決算で、工事が遅れたことによって、見積もりの金額よりも国の補助金が1000万円下がってるんですね。出来高払いで3000万円分の工事が遅れたのでその3分の1として1000万円。これ、まちの責任でしょう。町長責任でしょうと思うわけ。8月までに令和7年度の補助金申請ができるんですが、業者は『確約はできません』って言ってるのに、まちは『できるだろうできるだろう』って先伸ばしちゃったもんだから…補助金申請が間に合わなかったのよ」
他方、工期延長後の工事そのものは順調に進み、2025年8月、クリーンセンターはついに稼働開始しました。
2025年3月共和化工が葉山町へ、「工期を2025年7月31日まで延長」とする契約変更案を提出。請負金額は変更せず、別途増額を検討。2025年7月葉山町と共和化工は、請負代金(当初契約額)の支払い完了と同時に施設を引き渡す旨の書面を締結。2025年8月新クリーンセンター稼働開始。
4. 「不信」の連鎖——環境とお金と情報のずれ
第4章の要点葉山は環境優先で「仮の条件でも始める」、逗子市「金額と責任が確定するまで動けない」と判断が割れた。判断の基準、資料の作り方、議会との距離感といった「行政文化」の違いが積み重なり、不信を生んだ。葉山・逗子・共和化工の三者がそれぞれの「正しさ」を抱えたまま、三者平行線の構図が固定化。
クリーンセンター稼働開始にあわせ、葉山町は分別した生ごみの新施設への搬入をスタートしました。その成果について、葉山町役場・環境部の担当者はこう話します。
「可燃ごみとして集めたごみの総量が、前年度比20%くらい下がっているんですね。まちがめざす“環境に優しいまちづくり”に、実績として貢献していることを町民にはしっかりお伝えして、感謝をするとともに、『分別をすることによって、まさに皆さんがまちづくりに貢献しているんですよ』ということを丁寧に情報提供する。そこが一番大事なところかなと思っています」
一方の逗子市は、2024年11月に決めた方針の通り、生ごみの分別回収には踏み切らず、市内施設で、他のごみとあわせて従来通りの処理を続けていました。
4-1. 「一日も早く」か、「条件が見えない限り動けない」か
逗子市役所・資源循環課の担当者は、生ごみ分別開始と新クリーンセンターへの搬入に必要な前提条件を、次のように説明します。
「葉山町と共和化工との協議により、処理施設の工事請負金額が確定した後、逗子市と葉山町が生ごみ処理負担金(資本費等)の協議を行い、負担金を確定することが必要だと考えています」
「物価スライドによる増額分」について、逗子市側が具体的な金額を把握したのは、2025年1月31日の「クリーンセンター再整備に関する特別委員会」の資料を通じてだったと言います。
また、当初契約額のみを完済したうえで新施設の利用を開始し、増額分については別途協議を継続するという葉山町の方針に対し、逗子市の考え方は根本から異なります。担当者は、こう続けます。
「処理施設の資本費については、施設が完成済みなので、スタート時点で確定されていなければいけないと考えます。今後いくら増額するのか分からない状態では、共同処理をスタートすることはできません。また、生ごみ資源化経費の単価(18.9円/kg)についても、将来いくらに増額するのか不明のまま見切り発車はできません。市議会からも強く指摘されており、市議会で議決が得られるとは考えておりません」
さらに、物価スライド分に対する逗子市のスタンスについて、次のように説明します。
「施設の工期延長に起因して発生した物価スライドによる増額分については、本市の責任によるものではないため、市は負担する考えはありません(ただし、工事延長に起因しない物価スライド分については、これのみではない)」
葉山町役場・環境部の担当者は、優先順位の違いを率直に認めます。
「私たちが重要視しているのは、お金の問題はありますけれども、生ごみの分別をすることによって、燃えるごみを減量化すること。繰り返しになりますが、“環境に優しいまちづくり”、地球環境に寄与するというところなんです。<中略>だからこそ、一日も早く逗子さんも葉山町と同じように生ごみを分別して出していただきたい。うちはもう生ごみ分別の処理の準備ができていますので、と」
続けて、こうも語ります。
「我々はあくまでも環境面を重視しているんですが、逗子はどちらかというともう少し現実ベースです。お金の問題、責任分担、そこをどうやって解決するかが課題というところですね。<中略>共和化工さんとの間で合意が図られなくても、細かい話になっちゃうんですけれども、この処理費等については概算で仮に単価を設定していて、協議が整って精算方式も取ることができるので、見切りでスタートすることもできるんですよ。しかし逗子市さんとしては、新たにスタートすることなので、そこはきっちりと整理をしてからじゃないとできないとおっしゃる」
4-2. 行政文化とオペレーションの違い
なぜここまで方針が違ってしまうのか──。
葉山町役場・環境部の担当者は、その背景にある「行政文化」の違いをこう整理します。
「同じ自治体ですので、当然同じ法律の中で動いているんですけれども、『企業風土』というほどのものではないんですけど、考え方──例えばその議会との関係もそうかもしれませんし、相違があります」
風土や文化だけの話ではありません。自治体ごとに、条例や制度設計も異なります。ごみ行政で見れば、収集方法も収集品目も、逗子市と葉山町とではそもそもの前提が違います。もちろん、鎌倉市も同じではありません。
葉山町は、燃やすごみ・プラスチックごみ・容器包装プラスチックを戸別収集していますが、逗子市は、多くの自治体で一般的なステーション収集を採用しています。
逗子市議・桐ケ谷氏は、両自治体の「情報の見せ方」の違いを問題視しています。
「私はときに本会議場でも“隠蔽”という言葉を使ってますけれども、我々が逗子市の資源循環課からもらう資料と、葉山からもらう資料とでは内容が違うんですね。逗子の資料は面談記録をしっかり持っていて、『こういった発言をしました』『葉山からもこういった発言がありました』とかっていうのを、事細かに我々に返されるんですね。それに対して葉山の資料を見ると、箇条書きなんですよね。例えば『共和化工の副社長の来訪があった』とか。中身が全く明記されていない」
そうした「作法」の違いが積み重なることで、ずれが大きくなり、その一部が“隠蔽”というパワーワードで表現されることになります。
本事業が順調に進み、予定どおり2025年3月にスタートしていれば、こうした違いは“自治体ごとの個性”として水面下にとどまっていたかもしれません。ところが工期の遅れによって想定していたスケジュールが崩れ、その調整のためにより緊密な協議を重ねざるを得なくなったことで、もともと各自治体に内在していた前提の違いが、一気に「ずれ」として噴き出しました。
首長同士のトップ会談の場でも、このずれは露呈しました。2024年11月25日の面談の場で、遅延に関する謝罪の有無をめぐり、葉山町長は「謝罪した」とし、逗子市長は「謝罪とはとらえてない」と、のちの議会で認識の相違が露わになりました。
同じ場面を共有しながら受け止め方が分かれた事実は、両自治体の溝の深さを象徴すると同時に、自治体同士や民間事業者との「連携」が本質的に抱え込んでいる難しさをも映し出しているように思えます。
4-3. 三者それぞれの「正しさ」が、交わらない
食い違いは、逗子市と葉山町の間だけの問題ではありません。葉山町と共和化工との間でも、金額や前提条件をめぐってギャップが生じたままです。
当初契約は15億8,400万円。それに対して共和化工側の請求は22億1,200万円(約6.28億円増)にのぼります。内訳は、おおむね次のように整理されます。
物価スライド分:約5.31億円増額工事分 :約9,600万円
ところが、その前提となる条件設定から、すでに両者の認識は分かれています。
物価スライドの基準日
葉山町:2024年12月25日共和化工:2024年4月1日
増額工事分(試算)
共和化工:約9,600万円葉山町 :約1,600万円(公共単価を基に算出)
延期は誰の責任に起因するものとみなすのか。物価スライドはいつ時点を起算日にするのか。どこまでを「当初契約の範囲」と捉え、どこからを「追加工事」と整理するのか──。
論点が折り重なるたびに、争点も増えていきました。
増額工事の扱いをめぐり、葉山町議・金崎氏は、まち側の対応にも疑問を呈します。
「共和化工の明細とまちの試算には大きな隔たりがあったので、『何でこれだけ違うんですか。事前の見積もりは?』って議会で聞いたら、まちは『急ぐあまり見積もり取ってない』んだって」
葉山町から見れば、「何にいくら支払うべきか」を、いまだに十分に詰め切れていません。
逗子市から見れば、「いくら増えるか見通せないものには乗れない」との立場になります。
共和化工から見れば、「実際にかかった工事費は回収しなければならない」との事情があります。
三者それぞれに、自分たちなりの「正しさ」と事情があります。しかし、その「正しさ」が同じ地点で交わらないまま、時間だけが過ぎていきました。
事態の早期解決のために、逗子市側にできること──あるいは、すべきことはないのでしょうか。
逗子市議・高野氏は、現状をこう語ります。
「待つしかない。もちろん進捗確認はしていくし、情報は求めてはいくんでしょうけど、今はそれをしながらも、待つしかない」
逗子市議・桐ケ谷氏も、同じ考えです。
「“待つ身”でいるしかないのかな。ここで例えば、逗子市長がシェイクハンド(握手・介入)をすると、逆にいろんな条件付けられたり、例えばそれが費用だったりとか、供用開始の日だったりってことになるので、言うべきことは言って、あとは毅然として待っているべきだと思います。市が“関与する”ということは、市民に対して『逗子にも瑕疵があったの?』っていうような、間違ったメッセージを送ることにもなりかねないので」
逗子は毅然として待つ──ここにも、逗子市長の“政治判断”がありました。
5. もうひとつの“政治判断”と残された「6つの壁」——「住民監査請求」のリスクをはらむ政治決着
第5章の要点物価スライド分を逗子に請求しないという首長同士の政治決着で、自治体間の最大争点が整理。ただし葉山では、議会の議決や町民への説明は追いつかず、住民監査請求のリスクが残った。2026年度逗子の生ごみ搬入に向けて、自治体間では「単価」「損害賠償」「堆肥と搬入オペ」など6つの壁、葉山と共和化工とでは増工事・物価スライドを巡る交渉が続く。
筆者がこの問題を意識するようになったきっかけは、2025年5月に行った逗子市の桐ケ谷市長へのインタビューのときでした。
2025年6月2日
湘南人に『逗子市長にインタビュー -逗子市長 桐ケ谷さとるの現在地』掲載
市長の到着を応接室で待つあいだ、同席していた職員と世間話をしていました。そのなかで、「この次は、葉山町の山梨町長にもインタビューさせていただくんです。逗子と葉山は、ごみ処理など広域で連携されていますよね。やっぱり隣町同士、仲がいいんですか?」と、なにげなく水を向けました。
相手は少し言葉を選びながら、苦笑いしてこう答えました。
「もともとはそうなんですけど…今はちょっと、なんというか、“ギスギスしている”というか…」
そのとき、報道で見ていた「クリーンセンターの工期遅延」という出来事のニュアンスが、腑に落ちた感覚がありました。
想像以上に根の深い軋轢があるのではないか——そう感じ、続いて行った山梨町長へのインタビューのなかでは、この問題を質問票の中核として位置づけています。
2025年7月3日
湘南人に『葉山町長にインタビュー -葉山町長 山梨たかひとの現在地』掲載
5-1. 「物価スライド分は請求しない」というトップ会談合意
クリーンセンターは2025年8月に稼働を開始しましたが、筆者が本格的にこの問題の取材を始めた同年9月時点でも、葉山町と共和化工は、まだ交渉のテーブルにすらついていない状況でした。
そんななか、この問題が突然、大きく動いたのが2025年11月でした。
2025年11月11日首長同士のトップ会談で、逗子市と葉山町は次の2点で合意。工事費のうち、物価スライドによる増額分(資本費)について、葉山町は逗子市に負担を求めないこと。工期延長に伴う逗子市側の損害(ごみ袋倉庫代など)については、両市町の代理人弁護士同士の協議に委ね、法的整理を進めること。
これにより、「物価スライドによる工事費増額分をどのように按分するか」という、両自治体最大の争点について、解決の道筋が示されました。
一方で、両者の関係が完全に修復したとは言えない状況が見受けられます。
2025年11月14日頃、「ちかぢか両首長が共同記者会見を行う」という情報が、報道各社に伝えられました。これは、山梨町長の側からの提案だったといいます。市民・町民からの見え方を意識し、「協力してこの問題の解決に臨む」という姿勢を示したい——。
しかし、この共同会見は逗子市側の要望で直前にキャンセルとなりました。逗子市長はその理由について、「葉山町側の整理がまだ詰めきれていない」と判断したためだとしています。
5-2. 議会を経ていない「政治判断」と、住民監査請求のリスク
筆者が葉山町役場で環境部とクリーンセンターの担当者に話を聞いたのは、2025年12月19日でした。担当者は、逗子市との協議の現状について、次のように説明しました。
「6月の補正予算に経費を計上して、もともと準備期間が4か月必要だったので、11月の頭からごみを入れる努力をすると逗子市の市長さんもおっしゃっています。それに向けて、ちょうど今日の午後に逗子に行って、イニシャル・ランニングコストの協議を始めるところです」
山梨町長が「物価スライド分を逗子市に請求しない」と判断したことで、逗子市側との協議のハードルは一定下がったとも言えます。しかし、この判断は議会の議決を経ていません。12月の「クリーンセンター再整備に関する特別委員会」では、複数の議員から厳しい指摘が相次ぎました。
環境部の担当者も、住民の受け止め方に懸念を示しています。
「住民の方がどの程度納得感を持たれるのかは、難しい部分かなと思います。何かアクションを起こされるリスクは——当然、住民監査請求(※)であるとか、ゼロではないと思います」
※自治体の住民が、「税金の使い方に無駄や違法があるのではないか」と感じたときに、監査委員に調査と是正を求める制度。
葉山町長の“政治判断”が、いかにリスクをはらむ重たいものだったのかが伺えます。
5-3. 6つの壁と、くすぶる町民への説明責任
この問題について、まちとして、町民にはどの程度説明がなされているのでしょうか。
葉山町役場・環境部の担当者は、現在の情報発信の状況について、こう話します。
「共和化工さんや逗子市さんとの話は、なかなかセンシティブな部分もあるので、まだ決定していないところもあります。ですので今、情報発信という形でしているのは、議会を通して皆さんに、その情報から取っていただくぐらいです。一般町民の方に向けた広報として出せるところまで、まだ至っていません」
くわえて、2026年度からの逗子市の生ごみ搬入開始に向けては、現場に「実務の壁」も残されています。担当者は、整理すべき課題として次の6点を挙げます。
資本費(イニシャルコスト)単価の確定処理費(ランニングコスト)単価の確定ごみ搬入の平準化(週初めへの集中回避)年末年始の受け入れ体制(稼働日数の違いの調整)延期に伴う逗子市側の損害賠償(ごみ袋倉庫代など)の整理生成された堆肥の配分・受け渡し方法の確立
なかでも「平準化」は、市民生活に直結する課題です。逗子市は週4日のペースで生ごみ収集を行う計画ですが、クリーンセンター側の処理能力には限りがあり、葉山側は「週の前半に搬入が集中しないよう調整してほしい」と求めています。
さらに、現場では想定外の“技術的な悩み”も生じています。クリーンセンターの担当者は、次のように話します。
「贅沢な悩みかもしれないんですけど、おかげさまで処理はうまくいっていますが、もっと出てくると思っていた堆肥が出ていない。中でぐるぐる回っているだけで、町民にお配りできるほどのものが出てきていないんです。<中略>気温の影響も考えられるので、一年通して回してみないとなんともいえないところはありますが、現場としては日々工夫しながらやっていかなきゃいけない状況です」
環境負荷の低減という意味では望ましい方向に進んでいる一方、「見える成果」としての堆肥が町民の手元に届かないジレンマも、現場にはあります。
5-4. 共和化工との「二段階の交渉」と、平行線の構図
葉山町と共和化工との協議について、葉山町役場・環境部の担当者は、「まずは増工事分を年内にまとめ、その後、年度内(2026年3月末まで)に物価スライド分の協議に入り、2026年度中の合意をめざす」という目標を2025年11月時点で双方が共有していたと話しますが、12月半ばの段階でも増工事分の合意は見通せていませんでした。
筆者が「最終的にはどちらかが折れる、あるいは双方が折り合うしかないのではないか」と問うと、担当者は次のように答えました。
「合意するには、先方の要求金額をうちが飲むのか、うちの査定金額に先方が納得するのかしかありません。先方は民間企業で、実際に払った金額を回収しないといけない。まちは町民に説明できる妥当な金額、公共工事の単価に基づいて積算した結果として『ここまでは払えるが、それ以上は不当な支出になる』というラインがあります。その基本的な考え方は、お互いに譲れないところです」
2025年6月に行った山梨町長へのインタビューのなかで、町長は「第三者の話を聞く」可能性に言及していましたが、現在、葉山町から神奈川県の紛争審査会(※)に申し立てる予定はないと、担当者はいいます。
※自治体と民間事業者などのあいだで、契約や負担をめぐってトラブルになった際、裁判の前段階として県が設けている第三者機関。
「まちのスタンスとしてはドライなんですけれども、若干工期は延びましたけれども、当初契約した金額をお支払いして施設も稼働しているので、一区切りついている認識です。ただ、共和化工さんは、それではお金が足りないというところで、もし審査会に出るとしたら共和化工さんなんですが、どうなんですかね、その辺の動きは、私もちょっと測りかねないと思います。
私どもは2025年11月10日に共和化工さんとお会いをしています。その時には山梨町長も出席して、先方は副社長さん、あと双方の代理人も入って、ちょうどこの場所で協議をしたんですけれども、その段階では共和化工さんも、当事者同士で解決に努めていくと言っていました。司法の場に出たりとか、審査会に出る予定はない、と」
6. 結び:続いていく協議と、残された線引き
2025年11月29日、クリーンセンターでは「はやま環境フェス」が開かれていました。
親子連れや若い世代が施設見学ツアーに参加し、ワークショップやステージを楽しみながら、新クリーンセンターを「環境学習の場」として体験していく。センターのInstagramも開設され、ごみ処理に関する広報やイベント情報が、日々発信されています。
葉山町では、クリーンセンターをまちの新たな拠点とした“新しい日常”が、すでに始まっています。
その一方で、足元では、共和化工との協議が、いまだ出口の見えないまま続いています。
実際に支払った工事費を回収したい民間企業と、不当な公金支出にはできない自治体とのあいだで、金額の隔たりは埋まっていません。
本稿の執筆にあたり、共和化工に対して、2025年9月9日および21日、12月11日の3回にわたり、会社HPのお問い合わせフォームを通じて取材の申し込みをしましたが、現時点までに回答は得られていません。
「静かな保養地」と「都市への玄関口」という二つの自己像は、逗子市と葉山町の間に、一本の境界線を描いてきました。クリーンセンター再整備事業は、その境界線を越えてレールを共有しようとした試みでしたが、いま引き直されているのは、費用、責任、情報公開といった、別の線引きです。
広域連携は、コスト削減のロジックだけで動く仕組みではありません。
どこまでを「一緒に引き受けるか」、どこからを「それぞれのまちの選択」として残すのか。その線をどのように引き直すのかという問いが、いまもクリーンセンターの周囲をめぐり続けています。
その問いを抱えたまま、ひとまずこの取材を終えたいと思います。