楽しい時間はなぜ早く過ぎてしまうの?
ふらっと こども電話相談室
2024年6月12日放送
TBSラジオで長年親しまれた名物企画「全国こども電話相談室」(1964年~2008年)のコンセプトを受け継いだコーナーです。パンサーの向井慧が「電話のおにいさん」となって、毎回、様々な質問に合わせた頼もしい先生をお呼びしています。今回の質問は・・・
Q. 楽しい時間はなぜ早く過ぎてしまうの?(東京都 ゆいちゃん 9歳 小学4年生)
(回答した先生)金井真紀さん/文筆家、イラストレーター
向井おにいさん:ゆいちゃん、今日は何をしてましたか。
― 本を読んでいました。
向井おにいさん:ほおー。なんの本ですか。
― 「カービィのちいさなの世界」という本を読んでいました。
向井おにいさん:ゆいちゃん、本を読むのは好きですか?
― 好きです。
向井おにいさん:いつ頃から、本を読むのが好きだなって思ったことがあります?
― 5歳か3歳くらいのときから読んでいます(笑)。
向井おにいさん:ゆいちゃんが最初に本を読んだきっかけって覚えてます?
― うーん、お友だちに本をもらったので、それを読んだら面白かったからです。
向井おにいさん:ふうん、そうなんだ。本を読むのが好きなゆいちゃんですが、今日は聞きたいことがあるんですよね。
― はい。えー、楽しい時間はなぜ早く過ぎてしまうのだろうか。・・・です(笑)。
向井おにいさん:いいねえ、疑問ぽいね(笑)。確かにそうだよね。これ、どういうときに思いましたか?
― 学校や怒られているときは時間が長いのに、遊びに行っているときは時間が少ないと思ったからです。
向井おにいさん:そうだよねえ。本を読んでるときはどう?
― あー、早く過ぎます。
向井おにいさん:じゃあ、金井先生、お願いします。
金井先生:はい。ゆいさん、こんにちは。今日は質問してくれてありがとうございます。とってもいい質問だったのですごく嬉しかったです。
― はい。
金井先生:「どうして楽しい時間は早く過ぎちゃうか」っていうことは結構いろんな人が研究しているみたいで、それによりますとですね、楽しいときはほかのことはあんまり考えないで、楽しいことで頭の中がいっぱいになってるみたいなんですね。でも、つまらないときは楽しいことで頭がそんなにいっぱい膨らまないから、頭の中に隙間ができて、その隙間のところで「今、何時かな?」とか「あと何分かな?」とか考えちゃう。それでなんか早く感じたり遅く感じたりするらしいんですね。
― はい。
金井先生:私、この質問を聞きましてですね、すごっくいい質問だなって思ったのは、ゆいさんは何の時間が早く過ぎて何が遅く過ぎるかっていうことを考えていくと、ゆいさんってどういう人かっていうのがわかっちゃう、すごい秘密の質問だって、思ったんですよ。
向井おにいさん:ほおー。
金井先生:さっき教えてくれたのだと、時間が早く過ぎるのは遊んでいるときと本を読んでいるときですけど、遊びの中でも早く過ぎるものとそうでもないなっていうものがあったりしますか?
― はい。
向井おにいさん:さっき言ってたカービィのゲームをしてるときって、やっぱり「あれ、あっという間にこんな時間!」って感じることはある?
― はい、あります(笑)。
金井先生:でも、読んだ本がもしつまらなかったら「あれ、今日はちょっと時間が遅いな」みたいになりませんか?
― はい、あります。
向井おにいさん:そうか、好きな本の中でも時間の早さの感じ方が違うものがあるっていう。
金井先生:そうですよね。たぶん学校の授業でもすっごく早く時間が過ぎちゃったっていうのもあるし、なんだ全然時間が過ぎないなあっていうのがあると思うんですけど(笑)。
― はい。
金井先生:体育の授業はどうですか?
― 早いですねえ(笑)。
金井先生:あ、早いですか。私、体育が苦手だったから、すごく遅く感じましたけど(笑)。ゆいさんは体育が好きなのかな。
向井おにいさん:やっぱり人によって違いますよね。逆に、時間が遅いなあっていう授業はあります?
― ・・・算数。
金井先生:ああーっ、算数! 遅いですよね(笑)。
向井おにいさん:時間が経つの遅いよねえ(笑)。
金井先生:たぶん、算数の時間が早く感じる人もいると思うんですよね。そして体育が遅く感じる人もいる。だから、いろんな人によって違いがあるっていうことが見えてくる。
― はい。
金井先生:あと、この「時間が早く過ぎるか、遅くすぎるか」ってすごいなと思ったのは、いくら口では「楽しかった」「つまらなかった」って言っても、時間が遅く過ぎてるか早く過ぎてるかを感じるのは自分だけなので、本当の気持ちは自分だけが答えを知ってるってことになるんですよね。これ、すごいなあと思って。
― はい。
向井おにいさん:本当に自分が好きなものとそうじゃないものを明確に理解する大きな疑問ということですね。
金井先生:そうなんですよ。ほかの人に影響されないで自分だけが答えを知っている本当の気持ちだから、ぜひゆいさんもこの疑問をすごく大事にしてもらいたいなあと思いました。
― わかりました。
向井おにいさん:うん、そうですね。今は算数の時間が長いなと思っても、もしかしたら1年後にはすごく短く感じてるかもしれない・・・。
金井先生:可能性もありますよね。
向井おにいさん:そうなると、ゆいちゃんは算数のことを好きになってるんだって。
金井先生:そう! 変化も楽しいかもしれないですね。すっごい、いい質問です、本当に。
向井おにいさん:ちなみにゆいちゃん、今しゃべってた時間がだいたい10分ぐらいなんですけど、ゆいちゃん的には早く感じました? 遅く感じました?
― ・・・早かったです。
金井先生:よかったあ(笑)。
向井おにいさん:よかった、よかった。無理やり言わせたみたいになってしまいましたけど(笑)。
金井先生:本当の答えはゆいさんだけが知ってますから(笑)。
(回答者プロフィール)金井真紀さん。文筆家でイラストも手がけています。「おばあちゃんは猫でテーブルを拭きながら言った 世界のことわざ紀行」(岩波書店)、「聞き書き 世界のサッカー民 スタジアムに転がる愛と差別と移民のはなし」(カンゼン)、「日本に住んでる世界のひと」(大和書房)、「パリのすてきなおじさん」(柏書房)、「マル農のひと」(左右社)など、面白そうな人を訪ねて書いた本がたくさんあります。