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「大量絶滅」実は5回も起きていた…恐竜だけじゃなかった 専門家に聞く五大絶滅事変「ビッグファイブ」とは

コクリコ

「大量絶滅」実は5回も起きていた…恐竜だけじゃなかった 専門家に聞く五大絶滅事変「ビッグファイブ」とは

絶滅と進化は非常に“近しい”現象ーー国立科学博物館で開催の『大絶滅展』総合監修・矢部淳さんはこう語る。「大量絶滅」事変(通称:ビッグファイブ)から、生命の壮大な歴史、変化を乗り越え生き残る「強さ」とは何かを学べる解説。

【写真とコメント】福山雅治さん「大絶滅展」スペシャルナビゲーターに就任

「どうして恐竜は絶滅しちゃったの?」と子どもに質問されたら、あなたはどう答えますか?

地球に生命が誕生してから40億年、その間に何度も“絶滅の危機”がありました。実は、恐竜が滅びたのは5回目の「大絶滅」。その前に多くの生物が消える「大絶滅」が4回も起きているのです。

この「大量絶滅」事変(通称:ビッグファイブ)はどうして起きたのか?

気になるギモンを、国立科学博物館で開催される特別展『大絶滅展』(2025年11月1日~)の総合監修・矢部淳(やべ・あつし)さんにインタビュー。史上最大の絶滅や、恐竜時代への大変革の裏側を掘り下げます。

この記事で、展覧会の「化石」や「進化の展示」が何倍も面白くなること間違いなし。子どもと一緒に生命の壮大な歴史と、変化を乗り越え生き残る「強さ」を学ぶきっかけにしてください。

「生命の歴史」化石や地層から探り出す

──「生命史」とはどのような学問でしょうか。

国立科学博物館 生命史研究部 進化古生物研究グループ長 矢部淳さん(以下、矢部さん):「生命史」とは地層やそこに残る化石をもとに、生命の歴史を考察する学問分野です。生き物がいつぐらいに地球上に現れ、進化し、絶滅したのか。また、彼らはどうして進化したのか、そして絶滅したのかなどを考えます。

──生命史を学ぶようになったきっかけを教えてください。矢部さん:僕は中学、高校生のころから地学に興味をもっていました。火山活動や地震がどのようなメカニズムで発生するのか、というようなことに関心があったんです。

過去の火山活動や地震の影響は地層に残るので調べていくと、さまざまな生き物の痕跡も見つかります。地面の歴史とかつて生きていた生物たちは深く関わり合っているというところに面白さを感じ、生命史を学ぶようになりました。

我々は今、自分の目に映っている世界が全てだと思いがちです。しかし今の世界ができあがるまでには、たくさんの生き物のヒストリーがあるのです。

「こういう生き物がいたから、今こういうふうになっているんだ」など、今を見るだけではわからないことがあると気づかせてもらえるのが、生命史の魅力だと思います。

▲「生命史」は、地層やそこに残る化石をもとに、生命の歴史を考察する学問。写真はペルム紀の木生シダ「ティエテア」の幹断面。(矢部さん私物)

矢部さん:実は化石や鉱物に関心があるというお子さんは多いのですが、その興味・関心が学校教育になかなか繫がりづらいというのが、今の僕ら研究者の課題です。

たとえば、とても残念なことに、理系で地学を専攻できる高校は少なくなっています。

中学、高校になるとどうしても受験にフォーカスを当てた教育が中心になり、子ども自身が純粋に興味・関心のあることを学び続けるのが難しい状況もあると感じます。

今回の『大絶滅展』で、今、化石や恐竜などに興味のあるお子さんはもちろんですが、昔、好きだったという人たちにもぜひ足を運んでもらえたらと思っています。

「大絶滅」と「絶滅」の違いは?

──『大絶滅展』では、これまで地球に起きた5回の大絶滅、“生命史のビッグファイブ”に焦点を当てます。そもそも「大絶滅」とはどれくらいの規模を指すのでしょう?矢部さん:「絶滅」とは、ある生き物が全くいなくなって子孫を残さないという事象を指します。実をいうとこの「絶滅」という事象は、普段からいろいろなところで起こっています。

種自体に寿命のようなものがあることに加え、種ごとの生き残り競争が常にあり、何かがいなくなれば、別の何かが出てくるのです。

一方、「大絶滅」は正確に言うと「大量絶滅」。これは普段起こっている絶滅とは全く異なり、同時に何十種類、何百種類もの生き物がいなくなってしまう現象を指します。

絶滅の割合に明確な定義はありませんが、その時期に生きていた生き物の7~8割がいなくなる場合があります。

大絶滅は局所的に起こるものではなく、世界で同時期に起きる場合が多いので、調査対象はおのずと世界中ということになります。

【エピソード1】海の環境の多様化

▲アノマロカリス 1回目の大量絶滅が起きる前のカンブリア紀に生息していた。

──それでは“ビッグファイブ”、それぞれの「大絶滅」について教えてください。矢部さん:1回目の大絶滅は今から約4億4400万年前、オルドビス紀末に起きた大量絶滅です。

この時代は陸にはまだほとんど生き物がおらず、海にいました。火山活動の影響を受けて地球全体が寒冷化し、海水準が大きく低下したことで浅海に棲む生物が大量に絶滅しました。

火山活動が起きると空気中に粉塵(火山灰)が舞い、太陽光を遮ります。すると、地球が寒冷化します。

火山の噴出物はガスが最も多いのですが、ガスの主成分はCO₂(二酸化炭素)、いわゆる温室効果ガスなので、地球は次第に温暖化して乾燥。また海中には循環がなくなり、酸素不足が起こるのです。

【エピソード2】陸上生態系の発展

▲ダンクルオステウス デボン紀後期に生息していた大型の板皮類。

矢部さん:1回目の大絶滅のあと、陸上の植物が多様に進化しました。やがて、植物の登場から1億年近くたったころ、とうとうワッティエザという、高さ8mにまでなる最古の高木植物が各地に広がったのです。

▲ワッティエザ 高さ8mにもなった最古の高木植物。

矢部さん:ワッティエザの登場で陸上に初めての森ができました。高木が根を張り、繁茂することで土壌がつくられます。

しかしこの土壌は、雨が降ることで海の中に流れこみ環境変化を起こしました。それに加えて、大規模な火山活動が発生したことにより気候が寒冷化。

これが2回目の大絶滅で、今から約3億8000万年前~3億6000万年前、デボン紀後期に起きました。

【エピソード3】史上最大の絶滅

▲ディメトロドン 約2億8000万年前に生息していた大型の捕食者。恐竜ではなく哺乳類に近い仲間。

矢部さん:3回目の絶滅は約2億5000万年前のベルム紀末、シベリアで起こった大規模火山活動に起因するもので、「史上最大の絶滅」と言われています。

この火山活動は規模が非常に大きく、富士山の1万倍ぐらいの規模の噴出物が生じ、その活動は100万年ほど続きました。

これだけひどいことが起こった結果、陸も海も多くの生き物が絶滅し、一方で恐竜や魚竜、哺乳類に繫がる生き物は生き残りました。ただしこの影響は大きく、絶滅事変後も500万年ほどは生き物が非常に乏しい環境が続いたようです。

【エピソード4】恐竜時代への大変革

▲レドンダサウルス ワニ類に似た大型の肉食性爬虫類

矢部さん:3回目の絶滅後、生き残った爬虫類の仲間が台頭します。北アメリカ大陸に生息していた大型の肉食性爬虫類、レドンダサウルスがそのひとつの例です。

身体全体がワニ類に似ていて、全長は6mほどあったようです。レドンダサウルスとその仲間(フィトサウルス類)は大いに繁栄しましたが、約2億100万年前の三畳紀後期、超大陸パンゲア(※)の分裂を引き起こした火山活動が原因で4回目の大絶滅が起こります。

(※超大陸パンゲア:3億~2億年前ごろに存在した巨大な大陸。大陸地殻のほとんどが集まって超大陸を形成していた)

この4回目の大絶滅でレドンダサウルスとその仲間が絶滅。代わって生き物の中心になったのが、皆さんもよくご存じの恐竜です。

【エピソード5】小惑星の衝突

▲ティラノサウルス 白亜紀末期に北アメリカ大陸に生息していた大型の肉食性恐竜。

矢部さん:ジュラ紀、白亜紀にかけて繁栄した恐竜たちが滅びたのが、約6600万年前の白亜紀末に起きた5回目の大絶滅です。

これはよく知られているとおり、直径約10kmの小惑星の衝突によるもので、現在のメキシコ・ユカタン半島にそのクレーターが現存しています。この小惑星衝突により、中生代型生物が絶滅しました。そしてここから、哺乳類が変化していく新生代となります。

絶滅と進化は、非常に“近しい”

矢部さん:ビッグファイブを辿っていくとお気づきかと思いますが、「大絶滅」があっても全部の生命が地球上からいなくなるというわけではありません。わずかに生き残った者が、その後の世界で繁栄するという繰り返しなのです。

こう考えていくと、我々が今生きている世界というのは、このビッグファイブを経て生き残った者たちが作った世界であり、ビッグファイブが起こらなければ、今の世界もなかったということが言えると思います。

▲「ティエテア」の幹断面を手にした矢部さん

──「絶滅」と「進化」は、密接な関わりがあるのですね。矢部さん:生態系をピラミッドに例えると、より頂点に近いところにいる生き物のほうが、環境の変化を受けやすいと言われています。

生き残りには環境への適応力が関係していて、あるものは絶滅し、あるものは生き残る。絶滅した生物が占めていた空間(生態的な地位)がぽっかりと空くと、そこに入り込むものが出てくる。

新しい場所ができることで、進化の機会が生まれます。

ですから絶滅と進化は、非常に“近しい”現象だと言えるでしょう。「大量絶滅があるから、進化が促される」と考えることもできますね。

【特別展『大絶滅展』総合監修の矢部淳さん(国立科学博物館 生命史研究部 進化古生物研究グループ長)に、お話を伺う連載は前後編。今回の前編に続き、次回の後編では、展覧会の見どころや、現在起こっている絶滅についてお聞きします】

特別展「大絶滅展─生命史のビッグファイブ」

■会期
2025年11月1日(土)~2026年2月23日(月・祝)

■会場
国立科学博物館
〒110‐8718 東京都台東区上野公園7‐20

■開館時間
9時~17時(入館は16時30分まで)

■休館日
月曜日、11月4日(火)、11月25日(火)、12月28日(日)~2026年1月1日(木)、1月13日(火)
ただし、11月3日(月・祝)、11月24日(月・休)、1月12日(月・祝)、2月16日(月)、2月23日(月・祝)は開館

■主催
国立科学博物館、NHK、NHKプロモーション、読売新聞社

■協賛
セブン−イレブン・ジャパン、光村印刷、早稲田アカデミー

■協力
国立極地研究所、産総研地質調査総合センター、ブリッジリンク

■お問い合わせ
050-5541-8600(ハローダイヤル)
03-5814-9898(FAX)

福山雅治さんが展覧会スペシャルナビゲーターに就任!

▼展示:展示映像の一部にナレーターとして出演。さらに、第二会場では福山さんが世界各地で撮影してきた絶滅の危機に瀕している動物たちの写真を展示します。

▼音声ガイド:展覧会の音声ナビゲーターも務めます。大量絶滅をめぐる生命進化の軌跡をご案内します。

▼関連番組:NHKスペシャル『ホットスポット 最後の楽園 season4』(仮)/年末年始にNHK総合にて放送予定

福山雅治(Fukuyama Masaharu)

1969年2月6日生まれ。長崎県出身。1990年、シンガーソングライターとしてデビュー。以降音楽活動、俳優、写真家、ラジオパーソナリティなど幅広い分野で活躍。地球上に残された独特の自然環境や、絶滅に瀕した貴重な生きものたちに最先端の特撮技術で迫る、NHKスペシャル『ホットスポット 最後の楽園』シリーズの番組ナビゲーターを務める。

□音声ガイド料金(税込)/収録時間 約30分(予定)
●会場レンタル版:展覧会会場入り口にて、専用ガイド機をレンタルできます。
貸出料金:お一人様1台 650円(税込)
●アプリ配信版「聴く美術」(iOS/Android)
配信期間:2025年11月1日~2026年2月23日(予定)/販売価格:800円(税込)
※配信期間中に限り回数制限なし。会場外で聴取可能。
※ボーナストラック収録予定

【福山雅治さん写真とコメント】を見る>>「関連記事」へ
「【写真とコメント】福山雅治さん「大絶滅展」スペシャルナビゲーターに就任」よりご覧いただけます

取材・文/木下千寿
撮影/市谷明美

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