自転車でぶつかったら「9,300万円の賠償金」ってホント!? …親子で知っておくべき「お金の知恵」で賢い生き方【専門家が解説】
子どもへ「お金のしくみ」どう教える? 3つの「お金の知恵」を金融教育の専門家が解説。賢い消費者になる秘訣から保険とリスクの関係、将来の金銭感覚を育む方法とは?
【画像】一生使えるお金の知識が身につく・生き抜くちからを育むのに必要なのは?電子マネーが当たり前になり、お金との付き合い方が大きく変わっています。便利なキャッシュレス決済が広がる一方で、お金のトラブルも増えているといいます。
学習指導要領の改訂で、子どもたちに金融教育が義務化されるようになりましたが、子育て世代の「お金のことをどう教えたらいいかわからない」「我が子の将来が心配」といった不安な声は尽きません。
そんなお悩みに答えてくれる、金融教育の専門家に「知っておくべきお金の知恵」を伺いました。
25年にわたって経済教育を行い、『動く図鑑MOVE お金と経済』の監修も務める泉美智子先生(子どもの環境・経済教育研究室代表)が、「いま、知ってもらいたいお金の話」を解説。
「これならできそう!」というヒントが満載ですよ!
お金についてのばくぜんとした不安
▲小中学校では金融教育が義務化されたけれど……。 写真:アフロ
──2022年に学習指導要領が改訂され、小中学校で金融教育が義務化されました。「なぜ義務化?」と考えると、今必要なことが見えてきそうです。泉さんからご覧になって、子どもたちに一番知ってもらいたいお金と経済のことは何でしょうか。
泉美智子先生(以下、泉さん):子どもたちがお小遣いをもらい始めるのが、だいたい小学3~4年生です。そんな子どもたちに「どうしたらお金と経済のしくみに興味を持ってもらえるかな」とずっと考えながら活動を続け、あっという間に25年がたちました。
私は学校やPTAなどから招かれて、全国でセミナーを開いています。最近は、小中学生が「将来で一番心配なのは老後資金」と言うんですよ。
国も金融機関も、老後資金のために、と家計管理や投資の必要性を説くので、親も子もばくぜんとした不安にかられてしまっているのです。一番困っているのは、金融教育をしなければならない先生たちです。
今の世の中、お金がないと生きていけません。でも、お金や経済のしくみは、国語や算数のように段階的な勉強法がありません。どう学んだらいいかわからないまま、学校を卒業して社会に出てしまうのがふつうです。
だからといって、一足飛びに老後資金について悩むのはどうなんでしょう? その前に、親子でできることがあるんですよ。では、親と子が一緒に学べる「お金の知恵」を3つご紹介しましょう。
【お金の知恵①】親子で賢い消費者になる
泉さん:例えば、ペン1本にしても値段が違います。「値段はどうやって決まっているの?」と考えると、材質やデザイン、作る過程の違いなどから値段が決まることに気づきます。
こんなちょっとした疑問は生活の中にたくさんあり、そこから経済のしくみを知ることができます。親子で一緒に会話しながら考えられるといいですね。
──『動く図鑑MOVE お金と経済』の目次を開いてみると、さまざまな問いかけがありますね。
泉さん:「ものの値段はどうやって決まる?」という項目がありますよね。ページを開くと、写真やイラストがふんだんにあって考える手助けをしてくれます。
目次には、身近なのに知らなかった発見がたくさんあるでしょう。「これ、どういうこと?」と気になる項目があったら、そのページを開いてみましょう。
子どもによって、興味のあることが違います。だから、気になるページから好きなように読んでいいんですよ。
【MOVE「お金と経済」 目次】
お金ワールドへようこそ!/もくじ/この本の使い方/用語集
■1章 お金をはらう
お金の流れを知ろう ❶野球場へ行こう! ❷おこづかいはどこへ行く? ❸なぜテレビは無料で見られるの? ❹楽しむためにはらうお金 /みんながはらう税金/日本の税金の種類/学校でかかるお金/わたしたちがくらすまち/まちの公共施設をさがそう/すてたゴミはどこへ行く?/家庭でかかるお金/将来、どんな家に住む?/ローンってなんだろう?/目に見えないお金のかたち/地域通貨・ゲーム内通貨/おこづかいの使い方/なんのためにお金を使う?
■お金コラム 世界のいろいろな税金/都道府県のお金/税金の使い道はだれが決める?/暗号資産のしくみ
■2章 お金をかせぐ
仕事ってなんだろう?/いろいろな職業 ❶会社員としてはたらく/給与明細書を見てみよう ❷公務員としてはたらく ❸自営業ではたらく ❹農業・林業・漁業ではたらく ❺有名人としてはたらく/仕事を「つくる」
■お金コラム 世界の有名な大富豪たち
■3章 お金でそなえる
お金で「そなえる」 ❶社会でそなえる(公的保険) ❷個人でそなえる(民間保険) ❸子どもの事故と賠償金/お金を「ためる」 ❶銀行・ネット銀行のしくみ ❷お金をためる(貯金・預金)/お金を「ふやす」 ❶お金をふやす方法は? ❷株式投資にくわしくなろう ❸いろいろな投資 ❹小学生からできる投資
■お金コラム ギャンブルで一攫千金!?
■4章 お金を知る
お金を知る ❶世界のいろいろな通貨 ❷硬貨のひみつ ❸お札のふしぎ ❹日本銀行ってなんだろう?/経済を知る ❶世界のいろいろな通貨 ❷硬貨のひみつ ❸お札のふしぎ ❹日本銀行ってなんだろう?/経済を知る ❶モノの値段はどうやって決まる? ❷景気ってなんだろう? ❸景気を安定させるには? ❹世界の経済を知ろう ❺行動経済学ってなに?/お金を守る/自分のお金を守るには
■お金コラム 日銀総裁ってどんな人?/世界のニセ札事件簿/貧困・格差ってなんだろう?/ぜったいにダメ! 闇バイト /幸せってなんだろう?
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泉さん:親子で楽しく一緒にあれこれ話し合いながら、お金について考えましょう。そして、まずは自分たちが上手に買う物を選べる賢い消費者になることが、経済のしくみを知る第一歩です。
──図鑑についているDVDもリアルでわかりやすくて、新鮮な発見がたくさんありました。
泉さん:私も、小学生のお子さんたちと一緒に見ましたが、「これ知ってる!」「こんなことあるんだ!」と会話が盛り上がりました。楽しく学べますね。
【お金の知恵②】保険をかければ安心? リスクの取り方
──図鑑『お金と経済』の「お金でそなえる」のページに、自転車に乗っていた高校生が警察官にぶつかってしまい、約9,300万円もの賠償金が発生したというお話がありました。
▲『動く図鑑MOVE お金と経済』より(イラスト:田中六大)
泉さん:この例から「そなえる」について考えられることは、2つあります。1つ目は、歩いて目的地に行っていれば、誰かにぶつかることはなかった。自転車なら早く行けますが、事故を起こす可能性もあります。つまり「リスクを取った」のです。
リスクとは、ラテン語の「勇気をもって試みる」からきています。安全な方法を取るか、リスクを取るかを考えることができますね。
2つ目は、保険をかけたから安心なのか、という点です。
アメリカで、交通事故が多いためエアバッグの装着を義務づけた州がありました。すると、死亡事故は減ったけれど、事故そのものは増えたのです。
「エアバッグをつけたから安心」とスピードを出す運転手が増えたために、事故を減らすことができませんでした。
「保険をかければ安心なの?」「そなえるってどういうこと?」と、この事例ひとつをとっても、親子でいろいろな意見を交わすことができそうです。
【お金の知恵③】金銭感覚の身につけ方・お金と時間軸
──子どもに金銭感覚を身につけさせるには、どうしたらよいのでしょう。
泉さん:将来、子どもが自立するためには「自分で選択ができる人」に育てることが大切です。今、電子マネーが日常化していますが、子どもにはまず実際にお金を使うことを体験させましょう。失敗したり、成功したりする経験が大切です。
例えば、500円のお小遣いをもらったら、50円は使い残すようにします。1年たったら600円貯まりますから、もともともらった500円より大きな買い物ができますね。
「お出かけするときに使おう」「記念日に何か買う」と、将来のために予測して行動することが学べます。「お金に時間軸を入れる」ことが、金銭感覚を身につけるための重要なキーワードになります。
幸せに生きるためにできること
──図鑑『お金と経済』のなかに、「幸せって何だろう?」というページがありますね。子どもたちが幸せになるようにと願って子育てしているのですから、とても興味の持てるページでした。
泉さん:「世界の幸福度ランキング」など面白いコーナーがありましたね。将来、子どもたちが幸せになるためには、自分がやりたいことを仕事にするとか、お金をどう稼いでいくかなど、いろいろなことが考えられます。
動物が好きな子は動物関係の仕事を探してみたり、飛行機が好きな子はパイロットをはじめ整備をする人などになることもあるでしょう。
好きなことがひとつあったら、それを広げてあげるといいですね。最初は稼ぐことからはじめても、だんだん「社会に役立っているか」が承認欲求を満たすことにつながります。
──なるほど、その子によって興味の入り口がいろいろなので、この本をきっかけに、さまざまなことを親子で話し合えると楽しいですね。今日はよいお話をお聞かせくださり、ありがとうございました。
※写真の書籍ページは制作中のものです。実際の商品とは異なる場合がございます。
取材・文/高木香織
撮影/安田光優