Yahoo! JAPAN

儒教が教える「礼儀作法」の起源とは?【学びのきほん 使える儒教】

NHK出版デジタルマガジン

儒教が教える「礼儀作法」の起源とは?【学びのきほん 使える儒教】

人からひどいことを言われる→傷つく。無視される→悲しくなる。怒鳴られる→ビクつく。当たり前に思えるこれらの反応も、「心のプログラミング(持ちよう)」を書き換えられれば、見え方が変わってくるかもしれません。

『NHK出版 学びのきほん 使える儒教』では、古典漢籍の道を究めた能楽師・安田登さんのガイドで、『論語』を中心とした儒教の考え方を使い、自分を変えていく方法を学びます。

今回は、本書のキーワードのひとつ「礼」とはなにか、古い文字から紐解きます。

「礼」の機能とは

「礼」は旧字では「禮」と書きます。そのもとになった古い文字(青銅器に彫られた金文)はこのようなものです。

いまの「豊」の字です。「禮」の左側の示偏(しめすへん)は、この漢字が神事に関係する文字であることを表しています。右下の「豆」は儀式や祭礼で使われる器、祭器です。その上には神様に捧げる穀物(曲)が置かれています。つまり「禮」とは、神様とコミュニケーションをするための方法のことでした。

「礼」の機能を一言で言えば、「小さなエネルギーで大きなものを動かすことができる」というものです。たとえば、神に祈りを捧げたら作物がたくさんとれた。これは小さなエネルギー(祈り)で大きなもの(豊作)が動いた一例です。そしてあるとき人は、この仕組みは人間にも使えるのではないかと気づいたわけです。これが、いま私たちが考える「礼」です。

 たとえば、仕事がものすごく忙しくてお昼ごはんを買いに行く時間がなかったとします。そのとき同僚に、「すみません、お昼ごはんを買って来てもらえませんか?」と丁寧にお願いする。すると同僚は、席を立って、歩いて、オフィスを出て、近くの店に行き、そこでお弁当を買って、そして帰って来て、私のデスクまで持って来てくれた。

 私は、お願いする言葉を発しただけ。使ったエネルギーはほんの少しです。対して同僚は、かなりのエネルギーを使っています。これがまさに「礼」の機能です。

 これが仮に「おい、昼飯を買ってこい」だったら、同僚は動いてくれなかったでしょう。丁寧に「すみません、○○してもらえませんか」と言ったから、買ってきてくれた。この「丁寧な言葉遣い」というのが「礼」なのです。

本書では、価値観を新たにしていくこと、心の持ちようを変えること、心の変化で大きな物事を動かすことを、儒教から学びます。儒教の本質が分かれば、楽に生きる術が身につく。あるようでなかった儒教の入門書です。

著者紹介

安田 登(やすだ・のぼる)
下掛宝生流ワキ方能楽師。関西大学特任教授。著書に『能 650年続いた仕掛けとは』(新潮新書)、『すごい論語』『あわいの力』(ミシマ社)、『日本人の身体』(ちくま新書)、『見えないものを探す旅 旅と能と古典』『魔法のほね』(亜紀書房)、『別冊NHK100分de名著 読書の学校 史記』『別冊NHK100分de名著 集中講義 平家物語』『役に立つ古典』(NHK出版)など多数。
※刊行時の情報です

◆『NHK出版 学びのきほん 使える儒教』より抜粋
◆ルビなどは割愛しています

【関連記事】

おすすめの記事