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多様な人々が“違いを認め合い”自分らしく活躍できる社会「インクルージョン」とは?P&Gがオンライン・シンポジウム開催

おたくま経済新聞

P&Gのオンラインシンポジウム登壇者

 多様性(ダイバーシティ)という言葉はよく聞かれるようになりましたが、多様な人々が違いを認め合い、活かしあう「インクルージョン(包摂)」という概念は、まだまだ馴染みのない言葉。P&Gが様々な人々が平等な機会を得て、自分らしく活躍できる社会「Equality & Inclusion」を題材にしたオンライン・シンポジウムを2021年6月16日に開催しました。

 このオンライン・シンポジウムは、P&Gジャパンと国内最大規模の経済ニュースプラットフォーム「NewsPicks」の共催によるもの。多様性(ダイバーシティ)のある社会が実現した先にある、全ての人が平等な機会を得て(Equality)、一緒に参加する(Inclusion)社会を目指すにあたり、どのようなことが必要なのかが語られました。

 シンポジウムを取りまとめるファシリテーターは、数々の国際シンポジウムで女性の活躍やダイバーシティについて発信し続けているジャーナリストの治部れんげさん。登壇者にはオールジェンダー向けのブランド「JAMESIE」を立ち上げるなど、LGBTQ+コミュニティのサポートにも積極的なZ世代タレントの長谷川ミラさんや、スポーツ界で平等な機会とインクルーシブな世界の実現に向けた活動をしているシドニー五輪金メダリストでスポーツキャスターの高橋尚子さん、コピーライターで世界ゆるスポーツ協会代表理事の澤田智洋さん、そしてP&Gジャパンの人事統括本部シニアディレクターの市川薫さんが参加しました。

 最初に、P&Gジャパンのスタニスラブ・ベセラ社長より、P&GにおけるEquality&Inclusion(E&I=平等な機会とインクルーシブな世界の実現)の取り組みについてスピーチがありました。P&Gでは1990年代初めからジェンダー平等やダイバーシティ、インクルージョンの推進に取り組んできたといいます。

 印象的だったのは、ジェンダー平等やダイバーシティ、インクルージョンは「経営戦略」であり、最重要資産である人材が、いかに最大限の能力を発揮できるかを考えた結果である、ということ。そして初期の試行錯誤を振り返り、そこに「インクルージョン(包摂)」の必要性を感じたのだといいます。

 初期において「女性にも活躍の場を」として始まった際には、上層部には男性と女性双方から「これではうまくいかない」とのフィードバックがあったといいます。というのも、女性といってもそれぞれ違う個性の持ち主であり一括りにはできないこと、そして女性の活躍を応援することで男性側は「自分たちは応援されていない」と感じたそうで、この学びから「個々の人それぞれ」の特性が発揮できる、インクルーシブな社内風土作りに転換したのだとか。

 2020年10月時点では課長級以上の管理職で、33%が女性になったというP&Gジャパン。また社員の国籍も29か国に及び、ジェンダーやLGBTQ+、PWD(障がい者)など、様々な背景を持つ人材が平等に能力を評価され、登用されるようになったといいます。

 また、P&Gジャパンでは、社外に向けた活動にも注力しており、LGBTQ+へのアライ(Ally=理解者・支援者)の輪を広げることを目的とした社外向け研修プログラム「アライ育成研修」を開発。2021年5月末から企業や団体など、社外への無償提供を始めているそうです。

 シンポジウムでは、インクルージョン(包摂)の考え方や、それをいかに広めていくかについて、掘り下げた話が展開されました。まず基礎的なデータとして、経済、政治、教育、健康の4分野におけるデータから算出した2020年版のジェンダーキャップ指数が示されましたが、日本は121位とかなり下の方。特に経済と政治が足を引っ張っており、経済では117位、政治では147位と、教育の92位、健康の65位に対して大きく遅れていることが分かります。

 高橋尚子さんからは、JOCおよび加盟団体における役員の男女比について、2014年~2020年の推移が示されました。女性は1割か2割ほどしかいないという極端な“男性優位”の状態が続いており、驚くべきことに2015年では1割を切るという状態。この点を見ても女性が意見を言いにくい環境にあることが分かり「女性の比率を4割に」という目標は、スポーツ界が現状を変えようという取り組みを示すものといえそうです。

 企業活動や政治の世界では、様々な意見を取り入れることで「全体の利益」が大きくなります。そういった意味では、多様性を活用することで、社会はより多くの利益を得られるといえるでしょう。

 LGBTQ+へのアライについて、社内で活動を進めているP&Gジャパンの市川さんからは、社会におけるLGBTQ+当事者の割合は8~10%程度であるという話がされました。しかし「目に見える」のはごく一部であり、多くの人は“隠している”という現状もあるようです。

 また、障がい者の社会参画も徐々に進んではいるのですが、まだまだ少ないのが現状。厚生労働省の調査では2020年に57.8万人が雇用されていますが、実雇用率でみると2.15%。澤田さんからは健常者の半分くらいしか働きたいけど働けていない、そして「法定雇用率」にこだわるあまり、ただ雇用するだけで能力をうまく発揮できない現状もあるといいます。

 高橋さんは車いすマラソン選手と交流した経験から、多くの人がふれあい、理解し合う機会をいかに増やすか、という話がありました。お子さんの場合、最初は少し壁を感じているようだったけれども、時間が経つにつれて一緒になって楽しむようになる、という事例も紹介され、機会作りが重要であることが分かります。

 いかにインクルージョンを進めていくか、という点では、市川さんからP&Gにおいて「多様性を尊重する文化」「多様な人材や働き方を支える制度」「多様性をビジネスに生かす社員のスキル育成」という3つの柱で推進していることが紹介されました。

 治部さんや長谷川さんからは、いわゆる「男社会」における様々な「当たり前のこと」に対し、それに合わせた・合わせようとした経験も語られました。たとえば「たばこ休憩」におけるコミュニケーションや、お酒の場における世間話などが、仲間内の結束をもたらす場合があるという点。これらは「リラックスした場」であり、だからこそ親しくなる機会であるのですが、タバコを吸わない、お酒が飲めない人は、その場にいづらいという面があります。できれば、普段からざっくばらんに交流できた方が建設的であるといえるでしょう。

 また、長谷川さんはメディア・エンタメ業界における現状を紹介。まだまだ男性が優位にあるとともに、逆に「男性だから」と女性より仕事がきついなどの状況についても語っていました。

 澤田さんはインクルージョンの理想的な形として「ミックスジュースではなく、フルーツポンチ」のようなものが良い、と語っていました。ミックスジュースは一見様々なジュースが混ざっているけれども、味の面では一番量の多いフルーツが勝ってしまう、そうではなくフルーツポンチのように、それぞれのフルーツや素材が特徴を殺されずに味わえ、互いに引き立て合いながら全体が調和しているのが良いのではないか、というお話です。

 澤田さんは重ねて、E&Iの重要な点は「新たな視点や気づきを得ること」だと語りました。新たな視点を得ることで物事は立体的に捉えることができ、より深く知ることができます。高橋さんも「互いに認め合うことで、より豊かになれる」と同調していました。

 高橋さんはさらに、スポーツを通じた女性の社会参画や活躍を促進するため、スポーツ団体における女性役員の育成支援を行なっていることを紹介。現役を退き、家庭に入った女性アスリートが再び責任ある役割を担えるように、キャリアアップの機会を提供し、女性の進出を促したいと語りました。

 さらに登壇者からは、誰もが「マイノリティ」の一面を持っている、という言葉も聞かれました。1人の中には様々な要素があります。ということは、場面によっては自分がマイノリティであるアウェイ(アンコンシャス・バイアス)の状況になりうるということ。それを想像することが、誰もが平等に参画できるE&Iの社会実現には欠かせないことなのかもしれません。

 最後に「インクルーシブな未来に向けて」というテーマで、それぞれの考えを「提言」として表明。長谷川さんは「情報へ向かっていく!!」とし、知ること、学ぶことの大切さを語り、あえて自分から異なる情報を主体的に得ていくことが重要だと語りました。

 高橋さんからは「(他人との)違いを見つけ、考えてみる」という提言。日頃から様々な違いを見つけ、考えを語り合うことで、相互理解が深まるのではないかと話していました。

 澤田さんは「ポケットにE&Iを」と、ポケットにハンカチを入れるように、日常の中にE&Iを意識していければ良いのではないか、と語りました。澤田さんが着ているジャケットの胸ポケットには障がい者アートがあり、これは原稿用紙を塗り絵にした作品だそうです。

 原稿用紙を塗り絵にする、という発想もある意味「異なる視点」であり、E&Iにつながります。ことさらに構えるのではなく、自分とは違う視点を知ることが自然とE&Iに繋がっていくという考え方は、非常に示唆に富んだシンポジウムだったといえるでしょう。

情報提供:P&Gジャパン合同会社

(咲村珠樹)

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