お茶がアートの媒体となり、伝える日本の美意識ーー。 麻布台ヒルズ「EN TEA HOUSE – 幻花亭」
昨年11月24日に誕生した「麻布台ヒルズ」。
ファッション&ビューティブランドや、レストランやカフェ、ギャラリーなど約150店舗が集結しており、オープンから半年経った今でも、国内外からの客で賑わいをみせている。
数多ある施設の中で、特別な食体験ができると話題なのが、麻布台ヒルズ ガーデンプラザBの地下1階にある、「森ビル デジタルアート ミュージアム: エプソン チームラボボーダレス」内で、アートとお茶が楽しめるティーハウス「EN TEA HOUSE – 幻花亭」だ。
まずチームラボボーダレスとは、森ビルとアート集団「チームラボ」が共同で手がけた、境界のないアート群による「地図のないミュージアム」。
全体で70以上の作品群があるが、アートは部屋から出て移動し、他の作品と混ざりあって互いに影響を与え合うなどして有機的な繋がりを持ち、ボーダレスな世界観を創り出している。
チームラボ《人々のための岩に憑依する滝》《花と人、コントロールできないけれども共に生きる – A Whole Year per Hour》、《追われるカラス、追うカラスも追われるカラス:境界を越えて飛ぶ》©チームラボ
同館は元々、東京・お台場にあり、開館からわずか1年で世界160以上の国・地域から約230万人の動員を達成。そして今年2月、より進化して、麻布台ヒルズに移転オープンを果たした。
ミュージアム内のティーハウス「EN TEA HOUSE – 幻花亭 」も、お台場時代以前から続くプロジェクトで、作品のひとつでもあるという。
水面に咲く花々。お茶は茶葉ブランド<EN TEA>が手がける。
チームラボ《小さきものの中にある無限の宇宙に咲く花々》©チームラボ
アートを堪能し、最後に「EN TEA HOUSE – 幻花亭 」へ行き着くと、照明を落とした空間に色鮮やかな花びらが舞っている。
運ばれてきたお茶の水面にも、生き生きとした花々。器を置かれた場所からずらしても、飲もうとして器を口に近づけても、
水面には花々が咲き続けているから驚きだ。
お茶を飲み終わると、手のひらの中の花々は、どこかへ消えてしまった。
ヴィーガンジェラートからお茶の木が伸びてゆく
チームラボ《茶の木》©チームラボ
ジェラートを頼むと、器が置かれた場所からお茶の木が生えて、花を咲かせた。花の周りには可愛らしい蝶々が飛び交う。そして食べ終わると、木は枯れてしまうのだった。
純粋にお茶の味わいを楽しむだけではない。
お茶やジェラートがアートの媒体となって、四季のある日本で暮らす私たちに根付く「侘び」の美意識が感じられる空間になっている。
海外からチームラボボーダレスを楽しみにやってくるゲストも多く、ヴィーガン抹茶ジェラートは人気のメニューだ。
乳製品不使用で、ココナッツとミルクがベースとなった抹茶ジェラートや、オーツミルクを用いた柚子香る抹茶ジェラートが新登場している。
チームラボ《Bubble Universe: 光の球体結晶、ぷるんぷるんの光、環境が生む光 – ワンストローク》©チームラボ
チームラボボーダレスのアート体験は、視覚だけではなく、作品ごとに変わる音や香り、最後にいただくお茶によって、五感が大いに刺激される。
これはレストランの空間演出を考える上で、ヒントになるかもしれない。
近年のガストロノミー界では、ハイエンドになればなるほど、料理のおいしさに加えて、レストランでの総合的な体験価値を作り出せるかどうかが問われている。
店にたどり着くまで、ドアを開けてダイニングまでの道のり。どれくらいの明かりで、どんな香りを漂わせるか。店内のデザインにどんなテーマとメッセージを込めるか…。
ミュージアムを訪れれば、きっとインスピレーションが得られるはずだ。
森ビル デジタルアート ミュージアム: エプソン チームラボボーダレス
東京都港区虎ノ門5丁目9番1号 麻布台ヒルズガーデンプラザB B1
https://www.azabudai-hills.com/teamlabborderless/index.html
取材・文:Cuisine Kingdom