そろそろお彼岸。お墓参りに出かけたとき、お寺で注目したいポイントを紹介!
まもなくお彼岸。この時期はお墓参りに出かける方も多いのではないでしょうか?“お寺そのもの”にあまり興味のない方の場合、ご先祖様が眠るお墓にだけお参りして帰るなんてこともあるはず。しかし、せっかくお寺に出かけたのなら、見てほしい場所がたくさん!今回は、お彼岸のお墓参りを、さらに意味のあるものにするため、お寺で見かけるあれこれにスポットを当てて紹介します!
なにはともあれまずはご本尊にご挨拶!
まずは何と言っても御本尊から!
お墓参りに行ったら、ご先祖さまのお墓だけでなく、そのお寺の中心である御本尊にも是非お参りを。
仏像が大きく4つのグループに分けられるというお話は、同連載の第一回『お寺や博物館がもっと楽しくなる!超簡単!仏像のミカタ【如来編】』でもご紹介した通り。
その中でも、最高位に当たる「如来」は、悟りを開いた姿なので本尊になっている場合が多いです。
手でOKマークをしていれば阿弥陀如来、薬壷を持っていれば薬師如来など、見分けるポイントもあるので、手を合わせた後はよ~く見てみてください!
また、悟りを目指しているとされる「菩薩」の中でも観音菩薩は、日本で広く信仰されていて、菩薩ながら御本尊になっているお寺も少なくありません。
観音菩薩も、この連載の『「観音菩薩」は変身して救いの手を差し伸べるヒーロー的存在!十一面観音、千手観音、馬頭観音……その変身パターンとは!?』で解説した通り、さまざまな姿に変身するため、どの姿なのかよく見てくださいね!
また、お寺の方にその仏像の由来を聞いてみると、「江戸時代に近くの浜に流れ着いて~」なんていう秘話が聞けたりすることも!
宗派を知れば「教え」が見えてくる!
宗教に頓着(とんちゃく)のない方が多い日本人は、自分の家系の宗派がどこかを知らない方も多いようです。
お墓参りでお寺に出かけるのをきっかけに、そのお寺がなんという宗派なのか、確認してみてください!
以前の記事『お寺のお出かけがもっと深く楽しくなる!日本仏教13宗派の成り立ちと教え』にもある通り、日本仏教には大きく13の宗派があります。
真言宗や天台宗は現生利益(げんせいりやく=今のこの人生が幸せになる)を打ち出していたり、浄土宗や浄土真宗は、往生(おうじょう=亡くなったら必ず極楽に行ける)という考えを持っていたりさまざま。
また、2500年もの歴史のある仏教ですから、ストレスフルな現代社会で、心を軽くしてくれたり、新しい視座をくれたりする考え方や言葉が、各宗派にたくさん伝えられています。
それぞれの宗派には、どんな教えがあるのか調べてみると面白いですよ!
暮石の後ろに立つ細長い木の板ってどんな意味?
お墓に行くと、暮石の後ろに何やら細長い木の板がいくつも立っていますね。これを「卒塔婆(そとば)」といいます。
お釈迦さまの遺骨を納めた「仏塔」を意味するインドのサンスクリット語「ストゥーパ」から来ています。
卒塔婆をよくみると、何かの鍵のような切れ込みが入っていますが、これは卒塔婆の形が五輪塔を基にしたものだからです。
五輪塔とは、この宇宙を構成する5つの要素「地水火風空(ちすいかふうくう)」を表現した形の石を積んだ塔で、転じて宇宙全体を表すもの。
故人が極楽で穏やかに暮らしてほしいという意味が込められています。
それを基にしてできた卒塔婆にも同じ意味が込められているわけです。
ただし、浄土真宗は「どんな人でもすでに極楽に行くことが約束されている」と考えるので、それを願うための卒塔婆は基本的には置かれません(にも関わらず、浄土真宗の宗祖である親鸞のお墓が五輪塔の形をしているのは、ワンダーですね)。
お寺の入り口「山門」にも種類があった
神社の入り口には鳥居が立っていますが、お寺の入り口には山門があります。
日本一有名な山門といえば、浅草寺の雷門でしょう。「ここから先はお寺の聖域ですよ」という、意味があります。
お寺はかつて、そのほとんどが山の中に建てられたため「山門」と呼ばれましたが、時代が下り平地や町にできたお寺の門も同じように呼ばれました。
また「山門」という大きなカテゴリの中に「三門」という中カテゴリがあります。「ファストフード店」というカテゴリの中に『マクドナルド』があるようなイメージですね。
「さんもん」という同じ発音で混同しやすいのですが、「三門」には一般的な山門に加えて別の意味があります。
「三門」は、3つのことから解脱するという意味の、三解脱門の略。
どんな3つから解脱するのかというと「こだわること」「くらべること」「煩悩にとらわれること」。
禅宗の大きなお寺や、京都府「知恩院」、東京都「増上寺」などでこの「三門」が見られます。
お寺のガードマン的存在の仁王像がカッコいい!
そんな「山門」を守る意味合いを持つのが仁王像です。露座(堂内ではなく屋外に作られている像)なので、雨風に影響を受けるため管理が大変で、比較的大きなお寺にしか見られませんが、東大寺などが有名ですね。
仁王像はいわばニックネームで、本名は「金剛力士像」と、いかにも強そうな五感です。
神社でいうと、狛犬にあたりますが「聖域に入ってくる悪いものを打ち破る」という意味があるため、怖い顔をしています。
よくみると、一方が口を開けていて「阿形(あぎょう)」、他方が口を閉じて「吽行(うんぎょう)」といいます。
二人の息があった様を「あうんの呼吸」というのは、この阿吽から来ているのです。
多くの仁王像が、人間ではあり得ないほど異様に隆起した筋肉でいながら、全体としては強い格闘家のような印象を受ける、芸術性の高い表現がなされていて、仏教美術を好きになる入り口にもなりえる像なのです。
お彼岸といえど、まだまだ暑い日が続いています。お墓にサッとお参りしたら退散したくなるかもしれませんが、せっかくお寺に来たのですから、今回ご紹介したポイントを足を止めてチェックして見てください。
きっと、新しい発見があるはずです!
写真・文=Mr.tsubaking
Mr.tsubaking
ドラマー/放送作家/ライター
Boogie the マッハモータースのドラマーで、NHK「大!天才てれびくん」の主題歌など担当。BS朝日「世界の名画」の構成、週刊SPA!、週刊プレイボーイなどに寄稿・執筆。温泉ソムリエ・仏教検定1級。