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東武宇都宮線で「顔認証改札」スタート!26年春にはカメラ内蔵型の改札機も登場…生体認証サービス「SAKULaLa」の壮大なビジョンとは【コラム】

鉄道チャンネル

2026年春に東武宇都宮駅へ設置されるカメラ内蔵型の改札機(デモ機)

東武宇都宮線で今月13日から「顔認証改札」が導入されました。東武と日立が提供する生体認証サービス「SAKULaLa」の顔認証サービス第一弾という位置付けで、当面は改札に設置されたタブレット端末に顔を見せて改札を通過する方式ですが、2026年春にはカメラ内蔵型の改札機も登場、PASMO定期所持者を対象に「手ぶらで改札通過」を可能にします。ゆくゆくは東武東上線・アーバンパークラインの一部エリアへの導入も視野に入れ、SAKULaLaが利用できる路線を順次拡大していく方針です。

13日に都内で発表会が行われ、SAKULaLaの今後の展望も明かされました。これまでは東武ストアのセルフレジやホテルのセルフチェックイン機など東武グループを中心に導入されてきた本システムですが、今後はJCBとも協力し、国内の決済端末「JET-S シリーズ」や入退管理システムとの連携、コンビニや行政への展開、オフィスや公共施設の顔認証入退館サービスの提供などを目指します。

【参考】
手ぶらで電車に乗れる! 東武が来年3月までに東上線「TJライナー」に生体認証改札導入【コラム】
https://tetsudo-ch.com/13008716.html

まず、SAKULaLaとは何か

SAKULaLaは東武鉄道・日立製作所が提供する生体認証サービスです。複数の生体認証(「指静脈」と「顔」)を同一プラットフォーム上で提供し、会員情報やカード番号のような複数のデジタルアイデンティティを生体認証と紐付けて管理することで、様々な社会インフラを「手ぶら」で利用できるようにします。

公的証明書や会員証などを生体情報と紐づけ、手ぶらで社会インフラを利用できるようにします

少し具体的に踏み込んでみましょう。電車に乗るときはSuicaやPASMOなどの交通系ICカードを改札にタッチ、お買い物をするときはスマートフォンをかざしてQRコードでお支払い……という具合に、現代日本に生きる我々は様々なカードやスマートフォンを利用して生活しています。医者にかかるときはマイナンバーカードや保険証、図書館で本を借りるなら利用者証が必要です。現金でのお買い物であっても、お酒やたばこなどを購入する際は年齢を「証明」しなければなりません。

SAKULaLaは、大雑把に言ってしまえば、そのような証明を「顔を見せる」「指をかざす」に一本化するサービスです。もし全国的に普及すれば? 公共交通機関への乗車は顔パス、支払いは決済端末に指をかざすだけといった具合に、物理的なカードやスマホを持ち歩かなくてもよくなるでしょう。

生体認証なら紛失リスクはありませんし、店頭での年齢確認や入退館証の発行といった作業も不要、省力化が進みます。カードの偽造やなりすましといったセキュリティリスクにも強く、「顔パス」「指をかざすだけ」ならスマートフォンの操作が苦手な人でも手軽に使えるため、デジタル格差の解消にも寄与すると見られます。災害時も身一つで本人確認できるのは、地震大国日本でこそ輝く強みと言えます。

東武・日立は2022年8月頃から構想の検討を開始、2023年8月に構想を発表し、2024年4月に東武ストアへ導入しました。同年9月に名称やキャラクター・導入計画を発表した後は、越谷・川越エリアの飲食店、家電量販店Joshin、ホテルのセルフチェックイン機との連携など、その歩みを徐々に拡大しています。現在は東武グループの店舗・施設が中心ですが、JCBがSAKULaLa協力パートナーに加わったことで、同加盟店への導入が加速する見込みです。

ホテルのセルフチェックイン機と連携、指をかざしてチェックイン

2026年度以降はファミリーマートへの導入、国内の決済端末設置数の約50%を占める「JET-Sシリーズ」との連携を順次開始予定。JET-S端末を設置している商業施設などの加盟店は、SAKULaLaのアプリをインストールするだけで顔認証決済を簡単に導入できるといいます。オフィスの顔認証入退館も2026年度から提供するなど、様々な業態・サービスに拡大していきます。

鉄道での「顔認証」改札を皮切りに決済や入退館などでも顔認証を使えるようにする
ジェーシービー 執行役員 ソリューション営業推進部長 榊原英人氏、東武鉄道 執行役員 経営企画本部長 竜江義玄氏、日立製作所 AI&ソフトウェアサービスビジネスユニット 事業執行役員 マネージド&プラットフォームサービス事業部長 石田貴一氏(写真左から)

東武宇都宮線の「顔認証」どんな感じ?

改札にタブレットを設置し、そこで自分の顔を読ませて改札を通過する。新たな改札機の導入は2026年春

東武宇都宮線で13日から始まった顔認証、現状では利用者が限られます。

2025年11月時点では、

・事前に「SAKULaLa」で顔情報、IC定期券のカード番号と定期区間を登録した方が対象
※通学定期券は対象外
・入場駅と出場駅の両方が顔認証改札対象駅であること
※タブレット設置駅は東武宇都宮~栃木駅までの12駅

という状況。宇都宮は東武鉄道のホテルや百貨店があるお膝元であり、宇都宮線なら乗り入れ先も限られますから、新しい技術を試すには最適です。

将来的にはPASMO定期券以外にも対応することで利便性を向上。また他の鉄道事業者でも導入できるよう、既存の自動改札機へ簡単に組み込めるような汎用性の高いシステムを構築し、導入コスト・設置スペースなどの課題解消を図ります。

カメラ内蔵型の改札機についてはパナソニックコネクト、オムロンソーシアルソリューションズ、日本信号、東芝と連携して開発を行い、2026年春に東武宇都宮駅へ設置します。各社の役割は、パナソニックコネクトが「顔認証技術の提供とSAKULaLaとの接続」、オムロンソーシアルソリューションズ、日本信号、東芝が「顔認証対応改札機の開発」。

顔認証の精度やスピードが首都圏の混雑を捌き得る水準かどうかは未知数ですが、改札通過のスピードは交通系ICカード利用時とさほど変わりなく感じられました。タッチ動作が不要な分、利用者の動きはスムーズです

「顔認証改札」自体はOsaka Metroや京成スカイライナーなどで部分的に導入されており、今後も様々な鉄道事業者が導入していくものと思われます。SAKULaLaは鉄道に限らず様々な用途でも使える汎用性が強み。競合に打ち勝って社会インフラとして定着するかどうかが焦点となるでしょう。

記事:一橋正浩

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